【SS】下意上達
「下意上達」この言葉、ご存じですか?
どちらかといえば、「上意下達」の方がよく知られていると思います。「じょういげだつ」と呼んでしまいそうですが、「じょういかたつ」が正しいようですよ。
それぞれの四字熟語の意味は、以下のように定義されています。漢字の意味そのままの四字熟語と言えますね。しかし、これが結構深いのです。
どちらも誤った使い方をしてはいけませんが、往々にして、上意下達の場合は、有無を言わさない上からの指示と受け取られることも多くあるようです。人間社会において理不尽な上層部が多いことの証明かもしれませんね。
しかし、下意上達の方は、漢字変換でもすぐに出てこないくらいマイナーな四字熟語になっているように感じます。本来は、両方バランスよく用いられる社会こそ誤った選択を避け、組織や会社として健全な道を進んでいけるのではないでしょうか?
昔とあるところに3つの王国があったお話をしましょう。
一つ目の王国はエッヘン王国です。
この国の王様は、何でも自分一人で決めて国民に指示を出していました。ある時、国の予算が少なくなり贅沢ができなくなってきたので、税金を一律3倍にすると国民におふれを出しました。
国民は、そんなことをしたらみんな死んでしまうと訴えましたが、王様は聞く耳を持ちません。そして、半年が過ぎようとした時、国民のことを全く保護してくれない王様に愛想を尽かし、王国から国民は一人もいなくなってしまいました。一年後、王様は一人ぼっちになってしまい食べるものもなくなり死んでしまったのでした。国民の意見を全く聞かなかった天罰が下りたのです。
二つ目の王国はイイナリ王国です。
この国の王様は何でも国民に判断を委ねていました。ことあるごとに国民の意見を聞き責任は全て国民に押し付けてていたのです。ある時、ある一人の正直な国民が「今年は干ばつが酷く作物が育ちません。何とか税を免除してください」と訴えました。王様はすぐに税を免除するというおふれを出しました。すると、ある貴族が「国民の税を免除してしまうと我々の生活が成り立ちません。元に戻してください」と訴えました。王様はすぐに税を元に戻すというおふれを出しました。そして、半年後この王国の国民は「こんな優柔不断な王様のもとでは生活ができない」と全員の意見が一致し、隣の王国へ逃げ出して行きました。
三つ目の王国はサイテキ王国です。
この王国には最初、ほんの少ししか国民がいませんでした。その中には、優れた貴族も少ないながら存在し、王様を補佐していました。税金は必要最小限で主として交易で国の財政を賄っていたのです。この王国には開かれた議会が存在し、16歳以上なら誰でも匿名でも意見が言える仕組みが確立されていました。しかも、徳のある王様だったので他人を貶めるような意見が言われることはありませんでした。王様が物事を決めるときには、まず自分の意見を国民に開示し、国民からの意見を広く求め集約し、それぞれの意見に対し採用と見送りの理由を開示していました。困窮している国民のところへは貴族を遣わして可能な救済も実施していたのです。
次第に、この王様の素晴らしさが隣国に伝わり、エッヘン王国やイイナリ王国の国民がこぞって移動してきたのです。王様も国民も快く受け入れました。そして、一年後、三つの王国を統一したサイテキ王国へと成長を遂げたのです。国民も貴族も平和に幸せに暮らしたそうです。
さぁ、ミニミニ昔話いかがでしたか? 三匹の子豚を思い浮かべるようなお話ですが、サイテキ王国は、上位下達も下意上達も上手に使いこなして、的確な判断で最適に国を導く王様だったのですね。
良い人の周りには、良い人が集まり、人財となります。そんな組織や会社になれば、働いている人たちも幸せに働けそうです。
皆さんの働いている場所を少し思い起こしてください。言ってもしょうがないから黙っていたり、社長が言ってることには逆らえないから意味はわからないけど従っていたりしていませんか?
全ての判断には、そこに至るための「何か」があるのです。同じケースでも世の中の動向によって判断の内容は変化します。だから、「以前はこうだったのに」などと思っても仕方ないのです。だから、どうしてそう判断したのかということを上層部はしっかり説明することが重要ですね。また社員の方からすれば判断に至った経緯を説明してもらうことも必要なのです。お互いに気持ちよく理解して仕事を進めていくためにも。
まずは、現実のギャップを認識するところから意識しなければならないかもしれません。人間の社会は昔から複雑ですから。そして、きっとこれからもそれは変わることなく複雑でしょう。
あなたにとって素敵なサイテキ王国が見つかることを祈っています。
おわり
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