#16 - マネージャ職の醍醐味
IT業界では、マネージャに対する人気は高くありません。一般的な企業であればマネージャになること自体が昇進であり給与を上げる手段なので競争が起こるようですが、IT業界では、ビジネスに寄与できるスキルを持っていれば、昇給はできるし、私がいた会社では管理職でなくても同等の地位につくことができます。
かくゆう私も、マネージャになりたいとは思っていませんでした。それよりも、ITスキルを追及する方が楽しいし最新のテクノロジーを楽しめると思っていました。半ば強制的に昇進とともにラインを担当することになり、気がついた時には既に20年以上ラインを続けていました。
1999年、最初にライン就任した際は、当時の部下から「これまでで最も頼りない所属長」と言われていました。それまで一緒にSE活動をしていた社員だったので同僚が所属長になってしまったので不安だったのでしょうね。私の方も不安でしたけど。
会社の中でも何とかラインの若返りを図りたいという時期であったようです。当時のラインはほぼ50歳台の方が多かったように記憶しています。当時は新人ラインに対するケアも厚く、研修や上位マネージメントとの会話も頻繁に実施されていたように思います。当時の会社の中で求められるライン(マネージャ)は、プレイング・マネージャであり、机にどんと構えているのではなく、自らSEをリードする仕事を要求されます。極論するとSEとして実施していた仕事はある程度継続(内容的には変わりますが、ITスキルやPMスキルを必要とする仕事という意味で)しながら、お客様と調整したり、社員の育成や評価、採用の仕事に関わるということになります。さらに責任も増えますね。そうするとやはりSEでいた方がいいかなと思ってしまうのですが、マネージャにならないとできない仕事もありました。
最初にラインになった瞬間、自分自身に言い聞かせたのは、「絶対にITスキルを維持させ続けるぞ」ということでした。いつ、ラインをやめてもいいように日々の努力は必要と思っていたからでした。
しかし、ラインになるとお客様の開発の仕事で直接担当することがSE時代と比較して極端に少なくなるので、社内にも目を向け自分を含むラインの働き方を楽にするための工夫を考え、社内の仕組みを変革したりすることでITスキルの維持を図り、実施した内容を論文や経験事例としてまとめて書くことによる情報発信を心がけました。そうしてラインの仕事を経験していくうちに、維持しておいた方がいいスキルとマネージャだからこそ担当できる役割があることを悟り始めたように思います。
一つの部門の中の社員はそれぞれが異なるお客様や異なるプロジェクトなどに参加していますが、それぞれの成果を把握しアドバイスなどを実施しようとすると定期的な会話や報告が重要になります。しかし、社員ごとに異なる方法を取り過ぎてしまうと業務に対する貢献を把握して評価することが難しくなります。しかしながら全てを統一してしまうと固有の情報が報告されなくなる可能性も出てきます。
したがって、報告自体はDB化(ExcelでもOK)により、共通化して分析しやすくし、個別の情報に関しては、定期的な会話で収集するということに落ち着きました。この仕組み自体も部門としての特徴を考慮した報告形式などの考慮が必要なので、部門として効率よく運営するための設計を常に考える必要があると思います。合わせて、部門に求められている成果やお客様の期待なども合わせて部門設計しなければなりません。よって、PMと同様で自分のチームづくりをするためのスキルを常に向上させる必要があります。そして変更するためのトリガーの大半は、世の中の動向だったり担当している業界動向だったりするので日々の情報収集も必要な仕事になります。それらを総合して、チームの方向性を考え、社員のローテーションや役割の変更などを検討し、実行していくということを求められます。自部門の方向性を決定し、次に実施すべき内容や育成を企画することは、ラインにならないとできない仕事です。また、お客様の動向をみて必要なら新しい組織も検討し創設させることも必要になります。会社全体やお客様、そして業界動向を考慮した組織への変革を常に考える必要があるのです。壁が高い分、その醍醐味も半端ではありません。