だいたいハ長調な調
前回は「ほとんどハ長調でおk」という調の読み方だったが、今回は「ちょっとズレてるような気がするけどだいたいハ長調でおk」な調である。
もうちょっときちんと書くと、ドの音符の位置がCのすぐ上や下になる調で、そういう調は調号で4種類、調としては8種類ある。高い方の調から、
シャープ2個 ニ長調(D dur、ロ短調・h moll)
フラット5個 変ニ長調(Des dur、変ロ短調・b moll)
シャープ5個 ロ長調(H dur、嬰ト短調・gis moll)
フラット2個 変ロ長調(B dur、ト短調・g moll)
である。ハ長調で滑走路の端に着き、調号7個が滑走なら、いよいよ離陸である。
変ニ長調は前回やった嬰ハ長調と、ロ長調は変ハ長調と、平均律では異名同音になり、しかもこちらの方が調号が少ない。せっかく読めるようになったものの、嬰ハ長調と変ハ長調は実はあまり出てこない。調号の数を書く時にわざわざ「普通は」とか書いていたのはそのせいもある。
でも「騙された!」と思うのはちょっと早く、状況によっては普通に使われる。例えば、ヘ長調から短3度(1音半)上に2回転調すると、1回目はフラットが3個付いて変イ長調に、2回目はさらにフラットが3個付いて変ハ長調になる。これをシャープ5個のロ長調で書くことも可能だが、そうすると転調幅が3度(ラ→ド)ではなく、2度(ラ→シ)に見えてしまう。というか、実際記譜は2度である。
こういう状況は1音半の転調であると納得するまでに若干時間がかかり、理解した時に「2度は2度でも増2度かyo!」と叫びたくなる。この後で元のAs durに戻るような場合は「またかyo!」と叫んでいるとかいないとか…
しかし、最初から主音がHの場合はわざわざ調号を増やす意味はないので、普通はCes durではなく調号の少ないH dur の方が使われる。
最初に書いたように、今回やる調号では長調の主音はD・Des、H・Bになるが、調号の数と主音の対応を覚える必要はない。前にも書いた通り調号は書く順番が決まっているので、きちんとした楽譜なら主音を簡単に知る方法がある。
調号がシャープの調は一番右のシャープが付いてる音がTiに相当する
調号がフラットの調は一番右のフラットが付いている音がFaに相当する
である。シャープの場合はTiが分かるので、そのすぐ上がDoである。
フラットの場合、Faから数えてもいいが、実はもう少し楽な方法があって、右から2番目のフラットが付いている音がまんまDoである。この方法はフラットがふたつ以上ないと使えないが、フラットひとつはよく見る調で、見た瞬間に「あー、ヘ長調」と脊髄反射するようになる(そして実はニ短調だったりする)ので、2個以上だけ分かれば十分である。
シャープは F C G D A E H の順に付くのであつた。シャープが2個ならばCまで付くので、CisがTiに相当し、DoはDで、確かにD durだ。5個ならばAまで付くので、AisがTiであり、DoはHで、H durと分かる。
フラットは H E A D G C F の順に着くのであった。フラット2個ならば右から2番目のフラットは最初に付いたフラットということになるので、Hにフラットが付いてBがDoである。5個ならば右から2番目は4個目に付いたフラットだからDにフラットが付いてDesがDoである。
このように、フラット2個以上の場合は右から2番目がドになるのだから、ドの音に必ずフラットが付いていて、長調ならば「変なんとか長調」になる。「嬰なんとか長調」よりも「変なんとか長調」をよく見るのはそういう理由である。
ドの位置が分かればあとは意外に簡単である。まず、判明したドの位置に適当に音符を書こう。次に、Cの位置に小さな点を打つ。これは付点やスタッカートと紛らわしくならないように、色を付けるとか、小さな丸にするとかがよい。
そうすると、C durと今読もうと思っている調で、Doがどれくらい離れてるがが視覚的に分かる。今は線1本分の半分だけ離れてるはずだ。Re Mi Fa…も当然同じだけ離れているので、全部の音符について、同じだけ上下に離れた位置に点を打つ。音符が線の上にあれば点は線の間に、音符が線の間にあれば点は線の上に打つことになるだろう。
あとは、今打った点を音符だと思って、調号を一切無視してハ長調と同じDo Re Miで読めばよい。これは移動ド読み前夜で書いたことそのままである。また、これができるようになるには、そもそもハ長調が迷いなく読めなければならない。固定ドでも移動ドでも、ハ長調は全ての礎である。やっと伏線回収である。
あとは適当な楽器で主音を弾いて、そこからドレミファソラシドを一度歌って感覚を確かめ、さらっとドレミで歌い出せばよい。