臨時記号に対応する(調号なしの場合)

楽譜の左端ではなく、音符の直前に書いてあるシャープ♯とフラット♭(と、ナチュラル♮を合わせて臨時記号という)の話である。

シャープに出会ったら半音上げてください
フラットに出会ったら半音下げてください
ナチュラルに出会ったら元に戻してください

以上。

…ではあまりにもひどいので、もう少しうんちくを語っておく。

まず、念のため、ルールを説明しておくと、臨時記号はその小節の最後まで有効で、上下の位置が違う音符には影響しない。

だから、ひとつの小節にソが4つ並んでいて、ふたつ目のソにシャープがついていたら、三つ目も四つ目もシャープである。次の小節にソがある場合、それはシャープは付かない。

1オクターブ下にもソがあった場合、その音符には影響しない。このソもシャープにしたければ、この音符の前にもシャープを書かなければならない。

臨時記号がついた音符がタイで次の小節につながっている場合は、タイが切れるまで有効である。基本的にタイの途中で臨時記号が付くことはない。付いていたらそれはタイではなくスラーである。

途中でシャープを戻したければナチュラルを付ける。ナチュラルのルールもシャープ・フラットと同じである。

次に、ドレミの読み方である。自分が分かればソのシャープをそのまま「ソ」と歌ってもいいのだが、世の中には臨時記号のついた音符(派生音という、ついてない音は幹音)を区別して読む方法もあり、経験的にその方が実際に歌ったときに音に変換しやすい。

バークリーとかコダーイメソッドとかが有名であるが、私は全部の派生音に名前の付いている佐藤先生提唱の方式を使わせていただいている。

どの方式も共通で、まずシをTiと読む。これはソと子音を変えたいためである。母音をaeiouの5種類と決めた場合、ひとつの音につき、元の音・シャープ・フラットで三つ母音が必要になるから、ふたつの音で子音を共通に使うと、母音が六つ必要になって足りない。

ちなみに、みなさんご存知のドレミの歌、日本ではペギー葉山さんの詩が有名だが、元はミュージカルSound of MusicのDo-Re-Miという曲で、やはり「ドは◯◯のド」のような歌詞になっている。原詩のシはどうなっているかというと、

Ti - a drink with jam and bread

だから、紅茶のTeaのことで、やはりTiである。

日本人にはレとラのどっちがLでどっちがRか分からなくなるが、これは原詩では、レは光線のRayである。ラはというと、え?「ソの次の音」?…おい!

ここはペギー葉山さんの2番の歌詞、「ラーララララララー」で思い出すのがいいだろう。普通、ラララはla la laと書くのでLである。

あと、ドレミは元々はイタリア語で、ソはsolと書くが、どうせ母音を変えてしまうのでこれもSoと書いてしまおう(シは元々はSiだ。当たり前だがShiではない)。

これで Do Re Mi Fa So La Ti がそろった。

半音上げは母音をiに変える。MiとTiは元から母音がiだが、このふたつは都合がいいことに平均律の異名同音FaとDoになるので、ここから母音を借りてMaとToにする。TiのシャープがToでDoと異名同音である。

半音下げは母音をeに変える。Reは元から母音がeだが、これは異名同音がないので、佐藤先生はRaを割り当ててらっしゃる。結局、シャープは

Di Ri Ma Fi Si Li To

フラットは

De Ra Me Fe Se Le Te

である。これで分かるように、シャープ・フラットが付いた音に全て違う発音が割り当ててある。ダブルシャープ・ダブルフラットが出てこない限り、固定ドでも使えるようになっているので、固定ド派の人も覚えておいて損はない。

さて、次にどんな音にシャープとフラットが付くかだが、実は付きやすい音というのは決まっている。シャープは圧倒的にFa・Do・Soが多く、フラットはTi・Mi・Laが多い。和音の性質からこうなるのであるが、ほとんどこれで済むはずである。

限定的な状況でたまーにReのフラットやMiのシャープが出てくる程度である(困ったちゃんのII♭7の時である)。あとは装飾音(Mi Ri Miのような動き)や半音階の時に記譜の都合で見慣れない臨時記号が出てくることがあるが、半音階だと理解してしまえばどうということはないだろう。

ちなみに、Fa・Do・Soの順番で書いたのは、これが三つ飛ばして四つ目の音(5度というのであった)だからである。フラットは下がる方向に数えると5度になり(上がる方向だと4度)、実はこれは調号が付く順序と一緒である。5度の音列は覚えていると何かと使えるので、余力があったら覚えておくとよい。

Fa Do So Re La Mi Ti

シャープは左から、フラットは右から付くので、左からも右からもスラスラと言えるとよい。

ソのシャープとラのフラットが平均律で異名同音になるが、ここでシャープとフラットがせめぎ合って、それより先の臨時記号はお互いにあまり出てこない感じである。

だから、練習としては半音階で

Do Di Re Me(Ri) Mi Fa Fi So Si La Te Ti Do
Do Ti Te La Le So Fi(Se) Fa Mi Me Re Di(Ra) Do

と唱えて練習するのがいいだろう。移動ドではこれ以外の音はあまり出てこないことになっている。

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