臨時記号に対応する(調号7個の場合)

まず、調号がシャープ7個の場合の臨時記号の読み方である。

ダブルシャープに出会ったら半音上げてください
ナチュラルに出会ったら半音下げてください
シャープに出会ったら元に戻してください

何かどこかで見たことのある文章だが、基本的にはシャープがダブルシャープに、ナチュラルがシャープに、フラットがナチュラルに格上げされただけで、ハ長調とそう読み方は変わらない。

一方、調号フラット7個の場合は、だいたい予測がつくと思うが、

ナチュラルに出会ったら半音上げてください
ダブルフラットに出会ったら半音下げてください
フラットに出会ったら元に戻してください

である。やはり、シャープがナチュラルに、ナチュラルがフラットに、フラットがダブルフラットに格下げになるだけで、ハ長調とあまり変わらない。

調号7個の場合、変化記号が半音だけでは足りず、さらに半音上げ下げする記号が登場する。ダブルシャープとダブルフラットである。

ダブルシャープは「𝄪」という記号である。手書きするときは普通にバツ「×」を書くことが多い。何も変化記号が付いていない音にダブルシャープが付くと、半音2回分、つまり全音上がる。日本語では重嬰となり、ドイツ語ではisisとisが2回付く。Cにダブルシャープが付くと、日本語では重嬰ハ、ドイツ語ではCisisとなる。そしてこれは平均律ならばD(ニ)と異名同音である。

ダブルフラットはまんまフラットふたつ「𝄫」である。こちらは半音2回分、つまり全音下がる。日本語では重変、ドイツ語ではesesが付く。Dにダブルフラットが付くと日本語では重変ニ、ドイツ語ではDesesとなり、これは平均律ではC(ハ)と異名同音である。

ドイツ語は変化音を大変スマートに表せるのだが、例外も多い。ハ長調のTiは日本語ではロ、英語ではBだが、なぜかドイツ語ではHである。じゃあドイツ語のBは何かというと、日本語の変ロ、英語のB♭に相当する。

じゃあ重変ロはドイツ語でどうなるかというと、Hesesらしい。ドイツ語版のWikipediaにそう書いてあった。日本語の文献だとBesやBBというのも見かける。EはEsesに、AはAsasになる。これはAsesと書いてもいいらしい。というか、ずっとAsesだと思ってました。

ちょっと本題からズレてしまったが、ルールの確認の時間である。臨時記号が効く範囲は調号がない場合ともちろん一緒である。今回は全部の音に調号が付いているから、必ず調号と臨時記号がぶつかって指定される。

この時のルールは、

今まで付いてた変化記号は綺麗さっぱり忘れて、今見てる音符に付いてる臨時記号だけ使う

である。変化記号は調号だけでなく、もし同じ小節・同じ音符に臨時記号が付いていたら、それも忘れていい。むしろ忘れなければならない。

Cに調号が付いてCisになっている場合、ナチュラルが付いたらCになるのはなんとなく分かるだろう。シャープが付いた場合、Cisから半音上げるのではなく、調号を忘れたCから半音上げ、つまりCisになる。調号を忘れてもう一度シャープをつけるので、実は音は変化してない。同様にダブルシャープは必ずCisisになる。

こんな役に立たないシャープなんてどこに使うのかというと、半音上げ下げした音を元に戻すのに使う。ダブルシャープで半音上げてから元に戻したいときに、ナチュラルでは半音余計に下がってしまうから、元に戻すためにナチュラルは使えないわけだ。

例えば、嬰ハ長調のDoはCisだが、半音上げてDiにしたい場合、ダブルシャープを付けてCisisになる。同じ小節で元のDoに戻したい場合、ナチュラルではなくシャープを付けることで、元のCis=Doに戻る。だから「シャープに出会ったら元に戻してください」なのである。ナチュラルを付けるとそれはCのことだから、Deになってしまう。

フラットも上げ下げが逆になるだけで同じである。

なお、元に戻ったことをはっきりさせるため、単にシャープやフラットを書くのではなく、ナチュラルシャープ「♮#」やナチュラルフラット「♮♭」の形で書かれることもある。意味はナチュラルがない場合と全く同じだが、この方がなんとなく分かりやすい気はする。

最後に。調号シャープ7個の時にフラットに出会ったり、調号フラット7個の時にシャープに出会ったりした時はどうすればいいか。






答えはそんなことまずないから気にしなくていい、である。嬰ハ長調の楽譜にフラットが出てきた場合、ハ長調に変換して考えるとダブルフラットが出てきたということである。そんなハ長調の楽譜は見たことないだろう。基本、移動ドに変換した後にダブルシャープやダブルフラットが残ることはない。


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