音大卒業生の特徴(令和元年度学校基本調査から読み解く!!)
今日は、今年6月にメルマガ音楽家の仕事術で配信した記事をご紹介します。 以下、年収が10倍になる!音楽家の仕事術 vol.93━2020.6.16より
「音大卒業生の特徴(令和元年度学校基本調査から読み解く!!)」
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今日は、
令和元年度学校基本調査(文部科学省)をもとに、
音大卒業生の特徴をみていきます。
進学率は?
就職率は?
その他の学部卒業生と比べ、
音大卒業生には、どのような特徴があるのでしょうか。※
トレンドの把握に!
教室の生徒さんの進路指導の参考に!
ぜひお役立てください。
それではさっそくみていきましょう。
※今回は大学卒業生全員(音楽学部を含む)と、音楽学部の卒業生を比較します。以下、大学卒業生(全学部)と、音大卒業生と記載。割合については、小数点第一位を四捨五入しています。
■音大卒業生の特徴
学校基本調査の数字を読み解くと、
音大卒業生には、
以下のような特徴があることがわかります。
・高い進学率
・低い就職率、高い非正規雇用割合
・進学も就職もしない人が多い
それぞれについてみていきますね。
■高い進学率
平成31年3月卒業の大学卒業生(全学部)の進学率は、
約11%。(※1)
この率は30年前の約2倍!
「大学院出て当たり前」
なんて言葉をきくこともありますね。
音大卒業生の進学率は、
更に高く、
約22%。
実に10人に2人が、
大学院進学や海外留学をしていることになります。
■低い就職率、高い非正規雇用割合
次は就職率についてです。(※2)
平成31年3月卒業の大学卒業生(全学部)の就職率は、
約79%。
一方の音大卒業生は、
約60%。
大きく開きがありますね。
就職者のうち非正規雇用(正規の職員等でない者、一時的な仕事に就いた者)の割合は、
音大卒業生で高くなっています。
就職者のうち非正規雇用の割合(平成31年3月卒業)
大学卒業生(全学部) 約5%
音大卒業生 約29%
■進学も就職もしない人が多い
ここまで、
進学率、就職率をみてきましたが、
進学も就職もしない人が、実は多くいます。
例えば、予備校等に所属せず受験準備している方
就職活動している方
家事手伝い
死亡・不詳
などです。
音大卒業生は、
この進学も就職もしない人が、
約18%。
(大学卒業生(全学部)は約7%)
実は、全学部の進学率より高い割合で、
進学も就職もしていないという現状が見て取れます。(※3)
■人数が減っている
統計からトレンドとして読み取れるのは、
音大卒業生の多くが、(もちろん個々の事情は異なるでしょうが)
経済的に不安定であるという印象です。
そのことが影響してか、
音大卒業生の人数は年々減っています。
平成31年3月卒業の音大生は、
3,526人。
1990年代は5千人を超えていたのですから、
激減しているのがわかります。
令和2年度入試の東京芸大の音楽学部受験者数は911人と、
10年前に比べ1割以上も減っています。(※4)
また、
日本私立学校振興・共済事業団の入学志願動向によると、(※5)
音楽学部の入学定員充足率(定員に対する入学者の比率)は、
平成24年度以降、9割を下回っています。
平成31年度は全学部で102.67% だったのに対し、
音楽学部は88.8%にとどまりました。
東京芸大の澤和樹学長はこう指摘しています。
「芸術系学部を卒業しても、すぐに食べていけないことから、
バイオリンやピアノで期待された子供が小学校高学年の段階で有名中学受験のために楽器をやめてしまう傾向がある」(2017/9/13日本経済新聞 電子版)
裾野が広がれば、
トップレベルの水準が上がり、
音楽文化の更なる発展につながります。
音大を志す人の背中を押すためにも、
私たち音楽家一人一人が、
社会で輝いている姿をみせていくことが大切ではないかと思いました。
芸術的鍛錬に加え、
個人のセルフプロデュースも必要な厳しい世界ですが、
頑張っていこうではありませんか。
音楽家のしごと塾も、
ビジネス支援という側面で、
音楽家の皆様の一助となれれば幸いです。
それでは今日はこの辺で。
今号も最後までお読みいただきありがとうございました。
次回配信をお楽しみに!
※1 進学率=(進学者+専修学校・外国の学校等入学者)÷卒業者合計
※2 就職率=(就職者+一時的な仕事に就いた者)÷卒業者合計
※3 進学も就職もしない割合=(左記以外の者+死亡・不詳の者)÷卒業者合計
※4 東京芸術大学ホームページ
※5 日本私立学校振興・共済事業団「平成31年度私立大学・短期大学等入学志願動向」(令和元年8月)