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楽屋にて。切なくも愛おしい。

先日某ライブハウスの楽屋にて
インスタなどのSNSで繋がっていない
女性シンガーソングライターのお話がきけた。

彼女の音楽は繊細で美しい絵本を読み進めていくかのような、あたたかな高揚感を感じる。

同じ楽屋でご一緒したアーティストの方に
私は必ずこの質問する。

『音楽でごはんは食べていけますか?』

この不躾な質問に、みなさまは決まって面食らったような表情をする。
一呼吸置いて訥々と語ってくださる方もいれば、即答で『なります!』とおっしゃる方もいる。
彼女は前者だった。

『もちろん、そうなればいいと思ってやってる。』

20年以上シンガーソングライターとしてライブ活動をしてらっしゃって、腐らずにやれるように楽しんでると柔らかい笑顔で話してくださった。

ライブハウスのまるで秘密の屋根裏部屋のような小さな空間に、アーティスト達の燻る夢が一気に広がり温度が上昇する瞬間が、とても切なく愛おしい。

なぜ切ないかって?

自分の歌を聴いてもらう為に、
ライブハウスの提示するノルマのための集客に追われて、そのうちそれに疲れてお金を払ってステージに立つようになり、この現実に頭の隅では見切りをつけていながらも、

ステージでスポットライトを浴びて歌う瞬間は
素晴らしいから、ひとときでも夢が叶ったような感覚が得られることに満足しそうになるから。

『音楽でごはんは食べていけますか?』

この質問は私自身に
一瞬のスポットライトの眩い光に
夢を見失わないように、投げかけているのだ。

ライブハウスでの経験は、次への道を模索するきっかけになった。私にとってなくてはならない経験だった。

このご縁に感謝して、閃いた道をまた歩いていこうと思う。

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