家族の中の見えない支配:親が使う巧妙な子供の操り方

家族の中の見えない支配:親が使う巧妙な子供の操り方

こんにちは、国際コーチング振興協会の髙田悦子です。今回は、家族関係の中で起こる見えない支配について、お話ししたいと思います。近年、社会問題が複雑化し、人間関係について語ることが難しくなってきています。しかし、私たち一般の人々にできることは、身近な人間関係を理解し、風通しをよくすることではないでしょうか。そこで今回は、家庭内の問題解決に焦点を当てて、お話を進めていきます。驚くべきことに、歴史的に国家間で用いられてきた支配の手法が、家族関係の中でも使われているのです。これは決して特殊な事例ではなく、多くの家庭で無意識のうちに行われている可能性が高いのです。


間接統治と分断統治の概念

まず、「間接統治」と「分断統治」という2つの概念について説明しましょう。これらは、歴史的に植民地支配を行う国々が用いてきた統治手段です。

間接統治とは:
植民地支配者が直接的に統治するのではなく、現地の指導者や既存の権力構造を利用して間接的に支配する方法です。例えば、イギリスがインドを支配した際、元々のインドの地方の貴族や長を利用して統治を行いました。これによって、表面上は現地の伝統的な統治形態を維持しつつ、実質的な権力をイギリスが掌握することができました。

分断統治とは:
「分断して統治せよ」という古代ローマの格言に基づいています。これは、被支配者集団を小さなグループに分け、それぞれを対立させることで、全体としての団結を防ぐ手法です。例えば、アフリカの植民地化の際、ヨーロッパ諸国は人為的に国境線を引き、大きなアフリカを小さく分断していきました。異なる民族集団を同じ国に押し込めたり、逆に同じ民族を複数の国に分断したりすることで、現地の人々の間に対立と混乱を生じさせました。

これらの手法には、次のような利点があります:

  • 抵抗の抑制: 被支配者間の対立を利用することで、本当の支配者に対する抵抗を防ぐ。

  • 責任の転嫁: 問題が起きた時、現地の指導者に責任を負わせることができる。

これらの方法は一見、穏やかで合理的な統治方法に見えますが、実際には被支配者の自立や団結を阻害し、長期的な発展を妨げる結果となりました。


家族関係における間接統治と分断統治

驚くべきことに、これらの国家レベルの支配手法と類似した方法が、家庭内や家族関係の中にも見られるのです。親が子供たちを直接的に支配するのではなく、兄弟姉妹間の関係を巧みに操作することで、家族全体をコントロールしているケースが多く存在します。では、このような方法がどのように家族関係で現れるのか、具体的に見ていきましょう。

a) 間接統治の例:

  • お気に入りの子供を作る: 親が特定の子供を特別扱いすることで、兄弟姉妹間に溝を作ります。例えば、「お兄ちゃんはかっこいいから期待しているのよ」と言いながら、他の子供たちを軽視するような態度を取ります。

b) 分断統治の例:

  • 情報操作: 親が子供たちに与える情報を意図的に変えることで、子供同士の理解や協力を妨げます。例えば、長男には家の経済状態の厳しさを話し、次男にはそれを隠しておくといった具合です。

c) 間接統治の例:

  • 責任の押し付け: 特定の子供に「お前が家族を支えなければいけない」と言って、過度の責任を負わせます。これによって、その子供と他の兄弟姉妹との間に壁ができます。

d) 分断統治の例:

  • 比較による操作: 親は「どうしてお姉ちゃんみたいにできないの?」といった比較をすることで、兄弟姉妹間に競争心や嫉妬心を生み出します。

e) 間接統治と分断統治の両方:

  • 親が仲裁者を演じる: 子供たち同士の争い事の際に、親が公平な立場からの仲裁者のような演技をすることで、実は子供たちの対立を深めていることがあります。

これらの方法を使うことで、親は直接手を下さずに子供たちをコントロールすることができます。表面上は良い親を演出しながら、実際には子供たち、家族全体を思い通りに操っているのです。


具体的な例

Aさんの家族では、母親が長女を「お手伝いさん」扱いし、次女を「お姫様」扱いしていました。表向きには長女は「頼りになるから」と言いながら、実は長女に家の負担を押し付けていました。母親は長女に「あなたはお姉ちゃんなんだから我慢してね。妹や弟のためにちょっと我慢してね」と言う一方で、次女には「お姉ちゃんは美人じゃないし、顔があんなんだからお手伝いでもしなきゃね。働く必要があるけど、あなたは美しいから働かなくてもいいのよ」と言って育てました。結果として、姉妹の関係は悪化し、お互いを理解できなくなりました。長女は辛抱と我慢を強いられ、妹を「お姫様」として扱わねばならず、その結果、自分の価値を見出せず、長い間自己否定に苦しみました。次女は社会の中で地道に働くという能力が育たず、社会的に居場所を見つけることができませんでした。


間接統治・分断統治をする親の影響

このような親の行動は、家族に深刻な影響を与えます:

  • 兄弟姉妹間の絆が壊れる: せっかく仲良く協力して人生を歩める可能性があったのに、その絆が壊れてしまいます。

  • 兄弟姉妹間の競争と対立: 比較されることで、お互いをライバル視し、時には足の引っ張り合いや争いが起こります。

  • 親への依存: それぞれが直接親と深く関わり、親の情報を鵜呑みにすることで、親との依存関係が強くなり、精神的・経済的な独立が難しくなります。

  • 家族・親戚間の対立: 家庭内の問題が、親戚や縁者まで巻き込んだ大きな対立に発展することがあります。

  • 世代を超えた争いの継続: 親が作り出した争いが、子供や孫の代まで引き継がれ、長期化することがあります。


対処方法

このような親の間接統治による被害に気づいたら、どうすればよいでしょうか?

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