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葉巻保管ケース「ヒュミドール」を野球で応用。ボールの飛び方を管理するMLBの最新動向

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先日、DELTAは近年NPBが極端な打低環境となっていることを指摘する記事を発表した。詳しい要因は不明だが、現在のNPBは2011-12年の違反球時代にも匹敵するほど異常な得点環境になっているようだ。このように、要因が外部からわからないままプレー環境が変わってしまう状況は望ましいものとは言えない。そこで、参考にしたいのがMLBの事例だ。記事ではMLBが反発係数や抗力係数といった打球に影響する数値を記録・管理し、一般にも公開していることに触れた。今回の記事ではその補足として、MLBが得点環境をコントロールするために行っているボールの保管方法について紹介する。

MLBが導入したボールの「保湿機」。穏やかになっていくクアーズ・フィールド

前述の記事では、MLBが物理学者と協力してボールの飛距離に関係する数値の管理を行っていることを紹介した。MLBでは以前の違反球問題の際NPBでも大きく取り上げられた反発係数はもちろん、空気抵抗の大きさをあらわす抗力係数の管理も行っている。だが、MLBで管理している要素はそれだけではない。2022年以降、現在のMLBではボールの湿度についてもすべての球場で一定になるよう“保湿機”を用いて調整を行っているのだ。

なぜこのような動きが起きているのだろうか。記事でも登場した物理学者Alan Nathanによる解説記事を参照しよう。ことの始まりは2002年、コロラド・ロッキーズの本拠地クアーズ・フィールドである。クアーズ・フィールドは別名「マイルハイ」とも呼ばれ、標高1600mにある。この高度では大気圧が海面の80%と非常に低い。これがボールの変化量を減少させ、打球の飛距離を伸ばし、ホームランを増加させていると考えられてきた。実際、ロッキーズがクアーズ・フィールドを本拠地としてからの7シーズン、ロッキーズのビジターゲームでは1試合あたり1.93本塁打だったのに対し、ホームゲームでは1試合あたり3.20本。極端な打者有利の状態が続いており、ロッキーズにとって大きな課題となっていた。

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