セイバーメトリクスの最前線。2024年野球界のイノベーションを振り返る
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2024年もあとわずか。過去10年ほどの間にフライボール革命や高めへの投球の重要性、捕手のフレーミング、新球種「スイーパー」など新たな戦術や技術が野球界に大きな変化をもたらしてきた。では2024年はどんな変化があったのだろうか。DELTAアナリストの宮下博志に今季の野球界におけるイノベーションについて聞いた。
発見から約4年。完全に市民権を得たシームシフトウェイク
ー2024年もあとわずかになりました。今年の野球界において、データ面で大きなイノベーションがあったとすると何でしょうか?
宮下:そうですね、観点はいくつかあると思いますが、まずは現場レベルの出来事に着目してみましょう。近年一般化したイノベーションといえばシームシフトウェイク(SSW)、つまり縫い目の影響によるボールの変化の活用ではないでしょうか。SSWの概念は数年前に発見され、現場レベルで活用される中で徐々に浸透し、今季時点では完全に市民権を得ています。
ーどのような経緯でSSWという概念が研究され始めたのでしょうか。
宮下:そもそも投球の変化は、回転軸と回転数で概ね説明がつくと考えられてきました。回転軸が変化する方向を、回転数が変化量を決定するという考え方です。しかし、2シームと4シームの変化を比較すると、同じ回転軸でも変化方向が異なります。この違いの要因として注目されているのが、ボールの縫い目、いわゆるSSW(シーム・シフト・ウェイク)です。
ーただ、縫い目がボールの変化に影響を与えていそうだ、というのは素人目線にもなんとなく想像がつく話です。なぜこのタイミングで研究が進展したのですか?
宮下:そうですね。縫い目が何らかの影響を与えているのではないかという説は2010年代前半からすでにありました。ただ、それを試合中に数値化して証明する手段がありませんでした。そんな中、2020年にMLBで新たな追跡システムであるホークアイが導入されたことで、ボールにおける回転以外の要素も詳細に計測されるようになりました。そのタイミングで、ユタ州立大学のバートン・スミス教授が縫い目の影響を示唆する論文を発表し、このテーマが大きな注目を集めるようになったという流れです。
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