三塁コーチャーの価値がFA選手級?ロッテ・大塚明コーチのデータを活用した走塁改革に迫る
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4月5日、勝負を分けた三塁コーチャーの指示
4月5日のロッテ対日本ハムは走塁が勝負を分けた。1点ビハインドの7回裏、ロッテは四球と単打で2死満塁のチャンスを迎える。一打逆転という場面だがここで日本ハムの玉井大翔が暴投。これで三塁走者の友杉篤輝がホームイン。これは当然ながら、二塁から藤原恭大も一気に生還し逆転に成功したのだ。結果的にこれが決勝点となりこの試合はロッテが勝利。ディテールが勝負を分けたかたちとなった。
試合後は当然、見事な走塁を見せた藤原にスポットライトが当たった。ヒーローインタビューも勝利投手の中森俊介とともに藤原が受けている。しかしここでは別の人物にスポットライトを当ててみたい。藤原の躊躇なく本塁を狙う判断は単独で行われたわけではない。三塁コーチャーの判断も大きく影響していたはずだ。やはり該当の場面を見ると、三塁コーチャーは躊躇なく腕を回している。
このロッテの三塁コーチャーを任されているのが、大塚明外野守備兼走塁コーチだ。この大塚コーチ、実はセイバーメトリクスの指標を活用し、自チームの走塁にフィードバックしていることで知られている。今回は大塚コーチの指導がどれだけの価値を生んでいるかに着目したい。
ロッテ大塚コーチがKPIに設定した走塁指標BsR
具体的に大塚コーチがどのような施策を行っているのだろうか。大塚コーチは自身のブログで“毎年の目標として、セイバーメトリクスの走塁指標である「BsR」で、12球団No.1になることを掲げてシーズンに取り組んでいます。”と述べている。
BsRとは走塁の総合指標のことだ。「平均的な走者に比べ、走塁でどれだけ得点を増やしたか」を表す。BsRは「1.盗塁の貢献指標wSB」と、「2.盗塁以外の走塁指標UBR」の合算値だ。データでの表現が難しかった「2.盗塁以外の場面」について評価できる点も優れたポイントの一つである。
wSBとは
http://1point02.jp/op/gnav/glossary/gls_explanation.aspx?eid=20049
UBRとは
https://1point02.jp/op/gnav/glossary/gls_explanation.aspx?ecd=204&eid=20048
実際にロッテの走塁がどのような結果だったか、昨季のデータを見てみよう(表1)。
この表を見ると、大塚コーチが重視する総合走塁指標BsRにおいて、ロッテは20.5で12球団トップ。2位阪神とは僅差だったが、パ・リーグ他球団とは大きな差がついている。特にオリックスとは40得点以上の差があった。両球団間に走塁だけでこれだけの差が生まれているのだ
ただこれはそもそもロッテに俊足の選手が多いことも関係している。昨季ロッテは盗塁数が132で12球団ダントツ。盗塁王を獲得した高部瑛斗をはじめ盗塁ができる走力をもった選手が揃っていた。
しかし盗塁以外の走塁貢献UBR単独でみても、ロッテの10.6はリーグトップクラス。単純に盗塁が多かったことだけが走塁指標で突き抜けた要因ではない。そこには大塚コーチが司る判断力があった。
走塁死を抑えながら生還率をいかに高められるか
以下に示した表2は昨季走者が二塁にいる場面で単打が発生したとき、二塁走者の生還状況を表したものだ。こうした状況別のデータをもとに、盗塁以外の走塁貢献指標UBRは算出される。
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