コロナ以降の新しい選挙戦略とは - 広島再選挙が示すパラダイムシフト -
2021年4月25日(日)投開票の参議院広島県選出議員再選挙(広島再選挙)は、日本の選挙がパラダイムシフトしたことを明らかにしました。
パラダイムシフトとは、パラダイム(常識の枠組み)+ シフト(移行)=「常識の枠組みの移行」の意味です。
矢継ぎ早に検査やウイルス接種等で動く諸外国と対照的ですが、私たちの国日本では、感染収束の見通しが立たない状況が、向こう数ヶ月はおろか、数年は続くかもしれません。
つまり、コロナによりステイホームが求められる中で、選挙をせねばならない事態を今後も想定に織り込まねばなりません。
去年(2020年)、「コロナで選挙活動が十分にできなかった」とコロナを敗戦の弁で述べる野党議員のコメントを拝見しましたが、コロナを言い訳にできないのは、広島再選挙でも同様です。
もともと投票率の低落傾向が続いているところに、コロナが上乗せされてしまいました。まして補選や再選挙は投票率が下がります。
コロナ以降の新しい選挙戦略とは
ですが、広島再選挙(2021年)や、やはり低投票率で苦しんだ埼玉県知事選(2019年)を踏まえ、コロナ以降の新しい選挙戦略とは何でしょうか?
以下、図に整理してみます。
4つの象限を、右上から時計回りにA.からD.とします。
A.(右上)高投票率で無党派層の多くが野党に投票
B.(右下)低投票率だが無党派層の多くが野党に投票(自公造反も存在)
C.(左下)自民・公明の組織票で決着
D.(左上)(論理的にほぼありえず)
与党が勝つためには、各地で組織票に恵まれるので C.(左下)を目指せばよく、野党は組織票が薄くて無党派層に期待するしかないため、A.(右上)を目指すしかありませんでした。
ですが、上記の図から何が読み解けるでしょうか?
コロナで投票率が下がることを前提とせざるを得ず、今や野党は B.(右下)を勝ちパターンとして学び、粘り強く勝ち上がれるようにせねばならなくなっています。
つまり、少なくともコロナ収束までは、野党の勝ちパターンは A.(右上)から B.(右下)にパラダイムシフトしたのです。
いえ、コロナ収束後も、下記でご説明を申しますように、B.(右下)で良質の選挙活動と政治活動を重ねなければ、投票率は上がらず、決してA.(右上)には移れません。
そして、コロナ感染拡大は人災ながら、私たちの政府が今の鳴かず飛ばずの小出しの対策を続けるならば、大規模自然災害が続くような危機感で臨まざるを得ません。
しかも、C.(左下)の自公の組織票で、創価学会員の方々の宗教的な熱意と運動量は壮絶なものがあります。
いえ、熱意と申すより、もはや怨念や執念と表現されてもおかしくありません。
「この選挙は野党に先行されて、負けている」と思っても地域に地道に声がけで回り続ける宗教的な迫力。
野党と私たち市民がもし一瞬でも選挙で気を緩めたら、すかさず C.(左下)の組織票勝負に持ち込まれて、A.(右上)はおろか、B.(右下)での土俵での勝負もできなくなるのです。
過去のような風頼みの粗雑な選挙をしたら、宗教的な怨念に勝てっこないのです。
宗教以上のものとは何か?
下記に申す主権です。
そして、フォロワーシップ(賛同性)です。
さて、B.(右下)の事例として、2019年埼玉県知事選そして2021年広島再選挙があります。
いずれも、投票の意思が強い主権者が、当落を決定しています。
たとえコロナで感染リスクがあっても、投票所に向かうような、主権者として強い意思のある方々です。
投票の意思が強い主権者の納得を得るためには?
では、投票の意思が強い主権者の方々に、野党はどう向き合えばいいのでしょうか?
前回のnoteでも申しましたが、B.(右下)の投票の意思が強い主権者を前に、従来のように風に頼り、見せ方やキャッチコピーで飾る選挙ができる時代は終わったとの認識が不可欠です。
例えばイメージカラーやキャッチコピーは、引き続き重要ですが、イメージカラーは、入念かつ詳細にRGBやCMYKのレベルで様々の選挙グッズにて色彩やデザインの一貫性を確保せねば、投票の意思の強い主権者の厳しい眼力にはかないません。
キャッチコピーも、わかりやすく、訴求力高いものを、練りに練らねばなりません。
ごちゃごちゃわかりにくいのは論外としても、上から主権者を抑えつけたり、子ども扱いするものも、投票の意思の強い主権者には通用しません。
「〇〇県民はあの候補を当選させていいのか。信じられん」等と、SNSやブログで上から目線でお説教したり、罵声を浴びせるのももちろんアウトです。当然ながら、自公造反をいただける機会も雲散霧消します。誰しもお説教や罵声を浴びせられては、投票できないのです。
候補者の擁立では、著名人や有識者でなくても、投票の意思の強い主権者はあまり気にしません。
むしろ、多難な時代に人々の声を聞ける器や胆力があるのか。地域でほぼ無名でも雑草のように苦労を重ねて、タフな人間力を培われ、必殺の演説力がある宮口はるこさんは、投票の意思の強い主権者に大歓迎されるのです。
投票の意思の強い主権者は、壮絶にハングリーに、候補者のお人柄や政策が納得できるかを追求します。360度でチェックが入り続けます。
その他に、野党陣営では何が必要でしょうか?
メールフォーム
まず、公式ウェブサイトにはお問い合わせを受けるメールフォームの設置が不可欠です。
お電話、FAXに加えて、メール、可能ならばLINEも何卒追加をお願いいたします。
以前の野党候補のウェブサイトに多くみられた、電話とFAXだけでは、「うちにはFAXがなくスマホだけだ。県民の声を聞く気がないのか」と誤解したり、失望する県民も現れてしまいます。
候補者にコンタクトしたいと、Twitter、Facebookページ、公式ウェブサイトとくまなく回って、どこからも投稿する入り口がないとわかった時、B.(右下)の投票の意思の強い主権者の落胆は計り知れません。
2019年参院選で旧立憲の著名人候補の方々は、ウェブサイトでメールフォームの設置を見送り、残念ながら相次ぎ討死されました。落選法則かもしれません。
宮口はるこ公式ウェブサイトでは、選挙戦当初ではメールフォームを設置されていませんでしたが、その後爆速でご用意されました。
「『膨大にスパムメールが来る』『嫌がらせ画像が添付される』からメールでは受けたくない」との場合は、gmailを使えば、人工知能がスパムメールをスパムフォルダに仕分けてくれて、見たくないメールの削除作業の手間をほぼゼロに削減できます。独自ドメインでもgmail上で使用できます。
gmailでなくとも、Googleフォームを使えば、メール受信でない形でお声を一覧表にして受けられます。Googleフォームは大変容易に作れますので、ぜひ、支部長、国会議員、政策委員、地方議員、秘書、職員、ボランティアを問わず、Googleフォームの作成や運用に慣れ親しむ姿が浸透すればと願っております。
YouTube動画配信
タフで大きな人間力を広範の県民に伝えるために、ぜひ動画を可能の限り毎回、せめて連日配信をと宮口はるこ陣営に私は選挙戦開始時にご提案しました。
宮口はるこさんの必殺技はオバマ大統領のような演説にあるのに、画像では残念ながら伝わりません。
もちろん美しい画像は好印象のため不可欠ですが、動画で宮口はるこさんの演説を聞いて、賛同が広がる体験を県民の方々にあまねく提供できねば、とても相手陣営に追いつけません。
逆に申しますと、映像で感動体験が広がれば、勝機が飛躍的に高まります。
インスタグラム
B.(右下)の投票の意思の強い主権者には多くの無党派が含まれますが、彼ら彼女らは通常はツイッターをあまりせず、インスタグラムにおられることも多いです。
近年の選挙で、無党派への主戦場はツイッターからインスタグラムに移行し始めていることを最大限に活かしたのは熊谷裕人千葉県知事です。
インスタの投稿は基本的にツイッターと同内容で全く問題ありません。徐々に慣れてきたらインスタライブ配信をします。
インスタライブで双方向性の体験を共有できれば、やればやるほど票が上積みできます。
インスタグラムは美意識や人柄を伝えやすい媒体です。逆に申しますと、営業目的の情報ばかり投稿しても、賛同は限定的になります。
例えば、宮口はるこさんのインスタグラムは、地域の草花や動物なども登場し、はちきれんばかりの広島愛やお人柄、そして政策が伝わってきます。
一方、相手候補のインスタグラムは、毎回よく練れている投稿ながら、営業情報一本やりになっていました。
どちらが正しかったのかは、選挙結果が示しています。
スピーカーとスピーカースタンド
私たち支持者は、音が小さくなっても積極的に、候補者のお声を聞きに行こうとしますが、巨大に存在される無党派層の方々は音が小さくなったら、「聴く意欲を削がれた」と受け止めてしまう方が発生するリスクがあります。
お声を届けられる機会があったのに、届けられなかったという、経営学で申します機会損失になってしまいます。ご案内の通り、手腕ある経営者は機会損失の撲滅に日々必死になります。
そこで、以下のメガホンを一例ですが、ご提案をします。比較的良心的価格です。
ユニペックス 防滴スーパーワイヤレスメガホン フリーオーダータイプ(ワイヤレスチューナー無し)
同機を例えば熊谷参議院議員も使用されているようです。
同機の専用スタンドもあったほうが、楽かもしれません。蓮舫議員が応援街宣された銀川現足立区議の選挙戦にて。
川上戦略
選挙前の政治活動中ももとより、選挙の第一声も、山間部や離島を重視する必要を感じます。
いわゆる川上戦略ですが、第一声を都市部でやると、高投票率になるきっかけを最初からくじいてしまいます。
都市部のみの選挙区でも、駅前や繁華街が人が集まるからと好まれますが、実は候補者のストーリーに合わせて、例えば閑散とした集合団地等を選んだ方が、地元の感情に応えられます。
他方、2018年新潟県知事選と沖縄県知事選はいずれも第一声を離島で行い、高投票率を実現しています。
選挙中も、頭をフル回転させながら、極力、離島や山間部を含めて、全選挙区をくまなく回ります。
「人口が少ないから」と捨てると、「うちにはいつ来るのか」と苦情電話が陣営事務所に相次ぎ、電話対応する陣営スタッフは疲弊し、支持層はどんどん縮小します。
川上戦略に限らず、多くのものを総括されたdg.ltdさんの連続ツイートと、チューリップさんの「どの候補も広島市内の郊外には全く来なかった」との貴重なお声もご紹介いたします。
もし川上戦略で第一声を山間部や離島で始めていたら、「あんなに奥地にまで行ったのか。心を寄せたい姿勢があるのだな」となり、同様のフラストレーションの一定の抑止になったかもしれません。
なお、チューリップさんは補足して、"自分がすんでいる郊外(広島4区)に来なかっただけで、河井の地盤だった広島3区には来ているかもしれません。参考程度にしてもらえたらと思います。" ともコメントをくださっています。
ドライからウェットへ
旧民主系の組織文化はドライさだと、衆目の一致するところでした。つまり、そっけなくて、放置が日常化し、もし応援者が熱く話しかけても、返信をしないか、ドライに応対してしまう。
旧民主系という都市型政党ではドライさは致し方ない面もあったかもしれません。ですが、地方に行くと、きわめてウェットな文化です。いえ、都市部でも地域回りをすると、やはりウェットなのです。
そこにドライな姿勢で臨むと、「あの陣営はドライで冷たい」との悪い評判が広がります。
「◯◯支部長は前職ではすごい人かもしれないが、人情の機微がわかっていない。人を邪険に扱い、政治向きではない」等の苦情が吹き上がってしまいます。「一緒にやりたくない」とフォロワーシップが消滅してしまったら、痛恨です。
政治が接客業のきめこまやかさに学ぶことも多いと感じます。接客業でメールやチャットの問い合わせを受けたら、放置や返信をしないのはありえません。対面でも、相手の心情のどこに、求められているものがあるのかを、相手に心を寄せながら、力を尽くします。
もちろん、政治家としての意思決定ではドライにならざるを得ません。好き嫌いの情実で判断しては、人々の生命や財産を守れません。
しかし、B.(右下)の投票の意思の強い主権者にはドライな姿勢で向かうことは決して歓迎されないのです。ツイッターやインスタグラムのフォローを外されたり、悪い評判が地域で回り始めたりしてしまいます。
「候補者も陣営も、人情の機微の理解がある」と伝わらねば、「誰一人取り残さない」と訴えても、地域から納得感を得られず、掛け声倒れになってしまいます。
金本位制ならぬ「納得感本位制」
コロナ感染リスクをいとわず、B.(右下)の投票の意思の強い主権者が候補者の応援や、投票に動いていただけるためのキーワードが、「投票率アップの戦略とは」で以前ご紹介しましたフォロワーシップ(賛同性=「一緒にやりたい」という状態)です。
投票の意思の強い主権者が候補者と「一緒にやりたい」という状態が実現するためには、納得感が至上命題となります。
金本位制ならぬ、いわば「納得感本位制」です。
納得感をいただける説明能力や、人柄や、政策があると、「この人だ」と投票の意思の強い主権者に選ばれます。
納得感があれば、誰しも中に備わる主権が各自で作動します。
コロナがあろうと、口コミだと地域に電話がけをくださったり、投票所に向かってくださる、尊い、奇跡的な光景が生まれます。
B.(右下)の投票の意思の強い主権者で、自公造反も存在します。何年も宗教的に自公候補を応援してきた方々も、野党候補に納得できれば、良識的なご判断をされることが、広島再選挙で示されています。宮口はるこさんが自公支持者に配慮して日和(ひよ)ることは終始なく、ブレずにご主張を一貫し続けたのです。
広島再選挙で「投票率を下げれば勝てる」と相手陣営は読んでいたのに、その目論見がひっくり返され、自民支持とはならなかったという生々しい様子を毎日新聞(2021.4.26)が報じています。投票の意思の強い主権者はごまかされなかったのです。
保守王国広島なのに自民支持が広がらないというパラダイムシフトが起こったのです。
重要なのは、投票の意思の強い主権者からの納得感を求める問いかけに、ドライに邪険に応じては決していけません。IT等の整備で陣営のオペレーションを万全にして、良いコミュニケーションを日々することが至上命題になります。
投票の意思の強い主権者に、窮屈な制約感を与えたり、放置したり、疎遠にするのは、痛恨になります。
ここまで読まれて、「今まで支持者の放置したり、邪険にしてきた。やばい」と、もし候補者や陣営で思われたら、「過ちては改むるに憚ること勿れ」です。
デマや侮辱行為への毅然たる対処
攻めと守りという攻防一体が大切ですが、守りの一つとして、デマや侮辱行為への毅然たる対処も不可欠です。
2018年沖縄県知事選で玉城デニー候補(現沖縄県知事)は、ネット上のデマに対して電光石火で対応し、危機管理力を県民に印象付けることもできました。
デマが流布すると、投票の意思の強い主権者は「まさか。嘘であってほしい。真実を知りたい」と大変気にします。「今まで深く信頼していたのに」と、一気に揺り戻して不支持になったり、消極的支持でSNS発信等がパタッと止まってしまいます。
よって、デマ対処を陣営が「人手がない」「相手陣営の土俵に乗りたくない」等と、従来型の選挙の意識で面倒臭がってしまうと、今やパラダイムシフトした B.(右下)の土俵での戦いなのに、現実に合わず、虎の子の支持者が離れてしまい、痛恨になってしまいます。
よって、「真実はこうです」とのご説明を、例えば動画か、書簡(PDF)か、ウェブサイトのQ&Aページで掲載するほどの誠意を見せねば、投票の意思の強い主権者は納得くださいません。「一緒にやりたい」というフォロワーシップが粉砕されて、「私は騙されたのか。一緒にやりたくない」に転化してしまうリスクがあるのです。
警察への毅然たる通報も不可欠です。広島再選挙では以下のnoteと広島県警への通報のひな形を共有し、幸いに新潟県知事選や沖縄県知事選ほどのカオスな泥仕合にはなりませんでした。
地元愛
C.(左下)で棄権して投票率を下げたい人々にしますと、「野党共闘は共産党が一緒だから」等と、とにかく棄権する理由は何でもいいのです。
ですが、地元愛を共通項にし、ご当地の風景や文物や言葉等を前面に打ち出すことで、地元のために、一票入れようという判断を後押ししやすくなると拝察します。
もちろん政策の議論も不可欠です。
ですが、批判や怒りが社会を動かす力は弱まっており、ことに若い世代は批判や怒りに対して敏感に察知して、逃げ出してしまう人も多いです。
ご当地意識や地元愛を、引き続き楽しく、奇跡を広げていく今のアプローチは今後の野党選挙の新たなスタンダードになるように拝察します。
最後の三日間の支持拡大
ぜひこちらをご覧ください。まず、犬丸さんがお声がけをされました。
これだと私は思い、下記noteで増幅しました。
そして、#宮口はるこさんを応援しよう が気づいたら自発的に自然発生しているのを拝見しました。
最後の三日間のヒートアップが可視化されました。
ツイッター検索結果を、こちらの #宮口はるこさんを応援しよう をクリックいただけますと、ご覧いただけます。大変な盛り上がりになっています。
ひとえに、君に届け!滑稽新聞@空気を変えるさんのご手腕に感嘆しています。
ムーブメントはみんなのものにしよう
下記noteでも申しましたが、宮口はるこさんの当選は、県内・県外、さらには、海外からも多数の応援者が必死に最後の最後まで声がけを続けた奇跡の結果です。
「私が主役だ」「私が立役者だ」「私がこの場の主人(あるじ)だ」という支配欲を、誰しもが手放して、楽しく、各人が思い思いに、宮口はるこさんの応援をする。
ムーブメントはみんなのものにしましょう。
今回の宮口はるこさんの当選は、フォロワーシップ(賛同性)の戦略的な拡大が成功したのです。
下記の動画のまんまの展開になりました。この動画を軸とした解説となる「投票率アップのための戦略とは」(2021.4.8)もご覧ください。
結びに、まだご覧になったことがない方は、ぜひご覧いただけましたら、幸いです。
まとめ
広島再選挙は、コロナ以降の新しい選挙戦略とは何かを明らかにしました。低投票率であっても投票の意思が強い主権者が当落を決定する時代(図のB.)に日本の選挙は突入しました。投票の意思が強い主権者のフォロワーシップ(賛同性)を候補者も政党も応援者同士でも尊び、詳細に至るまで配慮に力を尽くし、楽しく、思い思いに民主主義空間が回復できるよう、ムーブメントはみんなのものにしましょう。