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なかやまかずはの『ささめごと』

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"えっくす"のタイムラインのように、時系列で"なかやまかずは"の映画感想・自由律俳句・140字のショートエッセイ等もろもろを「こしょこしょ……」とささめています。
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#現代詩

【#詩】 純恋果てる頃

【#詩】 純恋果てる頃

終わりを知って覚えたのは始まりだった

そして始まりを知って
僕は臆病になった

終わりはいつだって
そこに存在していて

胸に咲き誇る純恋も
永遠を求めた途端枯れ

記憶を留める栞を作ろうにも
押し花にすることすらできず

「それでいいの」と言っていた
君の面影もいつか消えてしまう

終わりを知って覚えたのは
本当は寂しさのほうだった

それでも それでもと天高く手を伸ばす
人間とはなんて愚かで

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【#詩】 南から

【#詩】 南から

ひとりの女が 南から
柄にもなく 島風に祈りを乗せました

傲慢でしょうか
  過去を振り返ることばかり
今更でしょうか
  綺麗な想い出飾るのは

晩秋の日々は 雪解けへと変わり
いつの間にやら 芽ぐむ火棘よ

まだ枯れずに 実をつけろ
もう一度 根を張り伸ばせ

北へ北へと舞った慕情が
小さく痩せた老体へ届く頃

ひとりの女は 柄にもなく
孫娘に戻り とめどない涙を流しました

南の海に 流し

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【#詩】 リフレイン

【#詩】 リフレイン

名前を付けれぬこともある
見知らぬ誰かが言っていた

言葉に出来ぬ夜もあると
知らん顔してくちばしる

ねえアタシ「素敵でしょ?」
聞く耳持たず 日が昇る

ねぇアタシ「ごめんなさい」と
言葉も無しに 目を伏せる

時空を超えた 愛してる
これは決して恋ではない

きっと、恋ではない
知ってるよ、でもすきなんだ

来世に持ち越し「また逢おう」

またね、またね。
逢えるならまた

いつの日か また

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【#3行日記】 古傷を指でたどる

【#3行日記】 古傷を指でたどる

野良猫に浮気して引っ掻かれたふたつの傷は

目を凝らしても皮膚の青白さしか映さない

思い出だけがじくじくと疼きだす午前二時

【詩】  桜流し

【詩】 桜流し

つんざくような桜流しに

いっそ打たれてしまえばよかった

花弁に絡みつくきみの香りが

いっときの喧騒を足早に

ぼくのからだをすり抜け

指先をかすめることもなく

知らない誰かの元へと

散り散りに舞い落ちてゆく

寒空の下で開いた心だけを置き去りにして

細い枝葉は苛烈な雨風に揺らぎ

青灰の春を迎えました

【#3行日記】 2023(+1)0328

【#3行日記】 2023(+1)0328

満ちゆく月に痩せた背中を重ねて手を伸ばす

この世界から消えてしまったあなたの名前を

僕らは今でも地球のどこかで呼びあっている

【#3行日記】 6弦に馳せて

【#3行日記】 6弦に馳せて

愛を返せずに離れたのは他でもない自分だが

時折思い返しては同じメロディーを指で辿る

こじれたロマンスをいつまで続けるのだろう