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第3回意識調査 なぜ「仕事と不妊治療の両立」なのか

■日本人が知らない、“世界一の日本”

“世界で一番”体外受精によって生まれてくる子供の割合が多い国は、どこか、ご存じでしょうか。それは、「日本」です。

現在、子供を望む夫婦の5.5組に1組が何らかの不妊治療を行っていると言われ、実際に、16人に1人の子供が体外受精により誕生しています。

厚生労働省の調査によると、不妊治療経験者のうち16%が、仕事との両立ができず、退職しているという実態も明らかにされています。

「不妊」は特別な人に訪れるのではなく、誰しも直面しうるものです。ONE JAPANメンバー間でも話題に上ることも多々あり、身近なテーマでもありました。

そこで、第3回意識調査では、「仕事と不妊治療の両立」をテーマにし、20代、30代を中心とするONE JAPANメンバーの意識調査と、メンバーが所属する大手企業約50社の、不妊治療に関する制度の実態調査を行いました。

仕事と不妊治療の両立は、なぜ難しいのでしょうか。大企業の制度は、どうなっているのでしょうか。

■調査概要

第3回 ONE JAPAN意識調査
調査対象:ONE JAPANに参画する企業に勤めている会社員
調査期間:2019年8月18日~9月1日
調査方法:ウェブアンケート
有効回答数:1,557

■調査結果ダイジェスト

・ONE JAPAN加盟団体の所属企業約50社1,557人が回答
・従業員1万人以上の大企業の社員による回答 79%
・回答者の84%が20~39歳 大企業若手&中堅社員
・回答者の65%が男性 35%が女性  既婚者の割合は62%

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■仕事と不妊治療の両立のリアル

調査結果の4つの数字から、仕事と不妊治療の両立の実態と課題が見えてきました。

1. 「5人に1人」  不妊治療経験者・予定者
ONE JAPANメンバーの5人に1人が不妊治療の経験者、またはその予定があると回答しました。
山王病院院長で不妊治療の第一人者の堤治医師によると、「平成になってから増え続け、現在は5.5組に1組、そして将来的には3組に1組になるという推計もある」といいます。

一方で、意識調査では8割の人が、不妊治療の実態を知らないと回答。当事者になるまで、実態を知らずにいることが明らかになりました。

■不妊治療のリアル

そもそも不妊とは、「妊娠を望む健康な男女が、避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、一般的に、1年間妊娠しないもの」をいいます。そうした男女に対し、大きく3段階の治療があり、順を追って行うケースもあれば、どれか一つだけ行うケースもあります。また、病院によって差があるものの、一般的には高額な費用が発生します。

治療には、平均約140万円かかるというデータも。

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ONE JAPANメンバーの経験者の男性からは、「終わりが見えないため、計画する出費にならない。医療費のような表面的なお金よりももっと、サプリ購入などいろいろと出費があったように感じている」と話し、ゴールが見えない中で、どんどん積み重なる費用が、大きな経済的負担としてのしかかるという現実がありました。

保険適用はなく、自費によって行う不妊治療。国の助成金には、所得条件ごとに回数、年齢などに制限があり、経済的な理由で諦めざるをえない人も。子供を望むカップルへの支援は、フランスなどと比較すると、日本はまだ限定的です。

■カラダのリアル

卵子は、胎児の時に作られ、その数は年齢とともに減り、“老化”する…。
それゆえに、不妊治療の件数は、40歳くらいまでは年齢とともに増加傾向。これは想像の範囲内でしょう。

その一方で、1回の不妊治療における出産率をみると、30歳で21.5%、35歳で18.4%、40歳で9.1%、45歳0.9%と、40歳以降は急速に低下します。この現実を、当事者になる前に知りたかったと痛感する人は少なくありません。

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また、不妊の原因は女性だけでなく、男性に関わるものが約半数あります。
健康であるがゆえに、気づきにくいからこそ、不妊の原因を決めつけずに、夫婦で検査をするなど、一緒に向き合うことが大切です。

堤医師は、「女性が輝く社会はとても素晴らしい。しかし、結婚出産は後回しになる社会でもあり、晩婚化、晩産化により不妊治療をするカップルが増えているのも事実。そうした中で、カラダの知識を身につける教育が遅れていて、日本は世界の文明国の中でも最低レベルだ」と指摘。「正しい知識を早くから身につけることが、大切」と話します。

2. 26%  働き方に制約や変更
いざ、当事者になった時に突き付けられる現実。それは、仕事との両立が簡単ではない、ということです。

「両立させるために、働き方に何らかの制約や変更があった」と答えた方が26%。

このうち、女性の9割が「通院回数が多い」と答え、「通院にかかる時間が読めない」「精神的な負担が大きい」という声が、男女ともに多く聞かれました。

ONE JAPANメンバーで、経験者の男性達からは、「いきなり、『来週の〇曜日に来てください』と言われ、予定が立てられなかった」と言います。そして、「上司に打ち明けるのに時間がかかった。 どこまで理解してもらえるかわからず、勇気がいる」と、上司とのコミュニケーションが、最初の壁としてあったことも打ち明けました。
また、経験者の東尾理子さんは、「がんばっても、結果がついてこないことが、精神的な負担」と語り、ジャーナリストの高井紀子さんは、「今回の調査に答えている人は、仕事を続けられている人達なので、両立の困難を感じているのは、実質的にはもっと多くいるのでは」と指摘。中小企業など職場を広げた厚生労働省の調査では、16%が両立できずに退職している実態を挙げました。

3. 50% 不妊治療に関わる制度がある企業
ONE JAPAN加盟団体が所属する約50社の社員を対象に調査したところ、50%、つまり半数に不妊治療に関わる制度があると回答。
また、仕事との両立で、会社、医療機関、行政に望むことは、以下の声が多く上がりました。

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男女共通して、「時間の柔軟性」を求めている声が、多く挙げられました。
今、進められている働き方改革によって、時間的にも、空間的にも、より柔軟に仕事ができるようになることは、仕事と不妊治療の両立を後押しすることにつながることが見えてきました。

堤医師は、「前向きに考えられると、着床率が高まるというデータもあり、精神面のサポートはとても重要。そして、ぜひ、仕事を続けてください。不妊治療だけに専念してしまうと、さらにストレスを抱える傾向がある。仕事との両立をしていくためには、会社と社会のサポートが重要」と語りました。

意識調査の回答者の7割が、「不妊治療中の仲間を応援したい!」という、声を上げています。会社の制度を整えることで、現場で協力体制を築くことは、難しくないのかもしれません。

一方で、ONE JAPANメンバーの経験者からは、「制度ができたらいい、というものでもない。周囲の多くの人には『知られたくない』という当事者の想いを汲んだ、利用しやすい制度でないと、意味がない。」「誰に相談したらいいのか、分からなかった」など、当事者が安心して相談できる、社内風土の醸成や制度も重要となることがわかりました。

4. 7割超 「卵子凍結」を福利厚生に
今回の調査で、不妊治療前の「卵子凍結」について、7割を超える男女が会社の福利厚生への導入を希望。

専門医の堤医師によると、アメリカの優良企業では卵子凍結の費用をサポートしている事例もあり、20代の若いころに卵子凍結をすることは、一つの選択肢になりつつあるそうです。

一方で、日本産婦人科学会は、結婚・妊娠が遅れる傾向を助長するのではないか、という考えがあるため「基本、推奨しない」というスタンスです。

「子宮は臓器の中でも老化しにくいので、効率を考えれば、20代で卵子を確保して、40代で出産することは可能性としてはある…。しかし、卵子をとっておいたら安心というわけではないので、よく理解した上で選択することが大切」と、解説しました。

子供をつくることへの不安を尋ねたアンケートでは、男性の53%、女性は84%が不安と答えました。
男性の1位は、「経済的な不安」。女性の1位は、「保育園の問題など育児との両立の不安」、2位に、「キャリアが中断される不安」が挙がりました。

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こうした不安と、卵子凍結を希望する声が直結するものでもありませんが、無関係でもありません。
目の前に向き合う仕事との両立、そしてキャリア形成をしていく上での不安を抱える中、「卵子凍結」がキャリア形成、ライフプランの中で、一つの選択肢として望む声が大きくなっている実態といえるのではないでしょうか。

結婚・出産は個人の選択の自由であることは、言うまでもないことです。しかし、子供を望んだ時に初めて知ることが多く、不妊治療と仕事との両立で、とても苦労を要することが、経験者のインタビューからも明らかになりました。
「そんなこと知らなかった」「知っていたら違った」「誰も教えてくれなかった」

一方で、とてもセンシティブなテーマなだけに、多くの人と会話をし、共有することが難しいのが現実。当事者が職場で伝えている人は、調査結果で約3割だったという結果からも明らかです。

今回の調査を通じて、「不妊治療と仕事の両立」の実態をオープンにしたことで、少しでも、働きやすい会社、生きやすい社会に繋がる一助になっていたら幸いです。

当事者を支える福利厚生の充実や、柔軟な働き方ができる職場に改革していくこと、そして、研修などを充実させ、早い段階で正しい知識に触れる機会をつくることは、企業という集合体だからこそできる取り組みです。

大企業の若手・中堅社員を中心とした企業内有志団体の実践コミュニティであるONE JAPANとして、当事者の声と会社の制度を調査した結果、働くことも、人生も諦める事のないよう、こうした取り組みが進むことを願います。


文章:鈴江 奈々(日本テレビ放送網/「Beyonders」) & ONE JAPAN第3回意識調査チーム一同
撮影:伊藤 淳

■ONE JAPAN 公式HP
http://onejapan.jp/

■ONE JAPAN 公式Facebookページ
https://www.facebook.com/one.japan.org/

#ONEJAPAN


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