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ONE JAPAN5周年記念対談~これまでとこれから~ #1 福井崇博&吉富亮介

大企業の若手・中堅社員を中心とした企業内有志団体が集う実践コミュニティ「ONE JAPAN」は2021年9月で5周年を迎えました。現在では55社3000人が集うまでに拡大したONE JAPANですが、世の中に「挑戦の文化をつくる」ための活動は今後も日々続いていきます。そこでこの節目に、ONE JAPANに深く関わるメンバーにそれぞれの想い、ONE JAPANのこれまでとこれからについて聞きました。初回はONE JAPAN幹事の2人、広報担当の福井崇博とクリエイティブ担当の吉富亮介の対談です。

挑戦している人々にスポットライトをあてる―ONE JAPANでの役割


まずは本業で何をしているか教えてください。

福井:僕は東急のフューチャー・デザイン・ラボというところで、東急グループとスタートアップなどとの事業共創を推進する取り組みを行なっています。昨年、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)を立ち上げたり、東急アライアンスプラットフォームの運営を始めとして、オープンイノベーションの仕組化や組織化を進めています。東急には3年前に入社しているのですが、前職の日本郵便時代からずっとオープンイノベーションを軸に働いています。

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【福井崇博】東急株式会社 フューチャー・デザイン・ラボ 課長補佐/ONE JAPAN広報担当幹事
2010年に新卒で日本郵便へ入社。ローソンへの出向や地方創生プロジェクトのリーダー等を務め、オープンイノベーションプログラムの立ち上げ、スタートアップ連携を推進。2018年より東急㈱に入社し、東急アライアンスプラットフォーム(TAP)やShibuya Open Innovation Lab(SOIL)の運営やCVC立ち上げなどを始めとして、東急グループのオープンイノベーションを推進。

吉富:マッキャンエリクソンでテレビCMや広告の企画開発をやってきました。ここ1-2年ほどは新規事業開発のクリエイティブ面のサポート、開発業務をメインにやっています。

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【吉富 亮介】 株式会社マッキャンエリクソン クリエイティブパートナー/ ONE JAPAN クリエイティブ担当幹事
2007年にデジタル広告会社セプテーニへ入社、その後2013年にマッキャンエリクソンへ。現在は企業の新規事業部と共に事業開発をサポートするパートナー組織を立ち上げ、責任者を務める。その他、ALS患者への支援活動を行う一般社団法人END ALS メンバー、深圳市越境EC協会日本支部 理事等も務める。

ーONE JAPANではどういった役割を担っているのでしょうか。

福井:FacebookなどSNSや各種メディアで、「ONE JAPANのやりたいこと、やっていること」の発信を通して、「挑戦者」と「挑戦者の応援団」を増やしていくことが私の大きな役割だと思っています。ONE JAPANで挑戦している多くのメンバーにスポットライトをあて、紹介していくことで、 いろんな挑戦者や挑戦の方法があるんだということを伝えています。そうすることで、ONE JAPAN以外の人にも挑戦のきっかけやヒントを得てもらったり、ONE JAPANメンバーそれぞれの挑戦の後押しにもつなげていく、というのも私のミッションだと思っています。

吉富:広報の福井さんと二人三脚でONE JAPANというブランドをどう見せるかを考えるのが、クリエイティブ担当の僕の役割です。ブランドのクオリティ管理やデザイン出しのディレクションなどを行い、ONE JAPANのブランドの軸がブレないようにしています。

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スピード感が足りない!若手が辞めていく大企業病に立ち向かう―有志団体・ONE JAPANとの出会い

ーONE JAPANに参加するようになったきっかけは?

福井:私がONE JAPANに参加したのは、前職の日本郵便時代。有志団体「P∞(ピース)」の代表として活動している中で、ONE JAPAN立上げ時に山本(将裕:ONE JAPAN共同発起人/共同代表)さんから声をかけてもらって参加しました。その後も、ONE JAPANに携わることを通してP∞(ピース)の活動を活性化させたいという狙いもあり、カンファレンス開催時などは、P∞(ピース)のメンバー達と一緒に運営の手伝いをよくしていましたね。東急に転職するタイミングでより深く関わりたいと考え、3年前から事務局のメンバーとして活動するようになりました。

吉富:2016年にONE JAPANが立ち上がってすぐの頃から弊社の有志団体 McCANN MILLENNIALS(マッキャンミレニアルズ)が参加していて、僕自身はその年の終わりぐらい、ONE JAPANのホームページを作成するところから参加しています。

福井:ホームページも含めクリエイティブ担当の方々の仕事は、ONE JAPANのイメージを左右する重要な部分だなと感じています。55社3000人規模にまでONE JAPANが拡大し、ここまでまとまった形になれたのはクリエイティブの力が大きい。人を巻き込んでいく、人の心を動かしていくときのクリエイティブの力の凄さは、広報をやるようになって気づけたことの1つです。

吉富:福井さんが出した企画に対して、「これ、どうして出したいんですか?」とよく聞いてしまいます(笑)。何でも発信すればいいというものではなくて、発信したことで巻き起こることまで想定して出す。だから、出さない方がいい、という結論に至ることもあります。このあたりは慎重に、福井さん以外の幹事7人とも常に打ち合わせをしながら進めています。

ーお二人とも、そもそもONE JAPANに関わる前に企業内で有志団体を立ち上げています。

福井:有志団体を立ち上げたのは日本郵便時代ですが、日本郵便では提携先のローソンに出向させてもらっていた時期がありました。出向から日本郵便に戻って感じていたのが、”スピード感”や”横串感”、”共創感”をどうすればもっと日本郵便も出せるのだろう、という問題意識でした。変えなければいけない、そう思っていたところで仲の良い先輩と「まずは小さくてもいいから勉強会でも開催して、若手だけでも横の繋がりを持とう!」と意気投合して、一緒に活動を始めたのがきっかけです。

吉富:僕は同僚と3人で有志団体を立ち上げたのですが、立ち上げのきっかけとなったのが続々と辞めていく、仕事ができる若い後輩たちのその退職理由でした。「もっとおもしろいことができると思っていたのに、”やらされ仕事”ばかり。だったらベンチャーへの転職や起業して実力を試したい」と言って辞めていくんです。これはもったいないなと。

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打席に立つことができれば会社を辞めることなく実力を試せます。上役に声をかけられるまで打席に立つ順番を待たずに、自分で”打席をつくる”ことができたらいいなと考えました。僕たちが幸運だったのは、それを応援して、サポートしてくれる上司や経営幹部が身近にいたことです。失敗してもいい、売り上げを気にしなくていいなど、活動に制限がでないような決まりごとも、難なく通してくれた懐の広い会社と上司に感謝してます。

福井:ONE JAPANは、会社に残るなとも転職するなとも言っていません。だってそれぞれの人生だから。自分も含めてですが、今までキャリアチェンジをしたメンバーが皆、それぞれもがいて悩んで考え抜いた末に出した結論だと思うので、その意思決定は尊重して応援したい。でも、悪い意味での退職は減らしていきたい。そして、すべてを切り離していくのではなく、絆をつくって関係性を維持していくのはどの道を選んでも大切なんだと思います。

吉富:発注する側と受注する側と言ったビジネス上の関係は、言いたいことを言えない、対等ではないなと感じることも多いんですよね。ただ、忌憚なく対等に思ったことを伝えられる関係を築くことができたら、お互いにとっての”いい仕事”にもつながるし、それは自然と長い付き合いになっていく。反対に、長い付き合いの関係性がないといい仕事はできない気がしています。
企業内有志団体で活動し、ONE JAPANに参加することができたおかげで僕は今、自分で自分のポジションをつくることができています。あの頃、サポートしてくれた上司や経営幹部がいなければ、自分の想いは脇に置き、寝る間も惜しんで企業の要望に応えるプロモーション、CMをつくっていたかもしれません。ちなみにその仕事も好きな前提ですよ(笑)。会社の中にいても、そのタイミングで自分がやりたいことをできる場所をつくり、外の人との繋がりを増やしていける可能性はいくらでもあるんだなと実感しています。

福井:吉富さんも上司に恵まれましたね。有志団体の活動は、「時間があるなら、もっと本業に力を入れろ」などの周囲の声も出てきがちです。そういった声で有志活動の火が消えそうになったら、”社内でも影響力のある人”の参加を積極的に促し、着実に有志団体の力をつけていくという方法もあると思います。

本業と有志活動、コラボで進むイノベーションーONE JAPANに携わる原動力

ーお二人が本業で取り組むオープンイノベーションや新規事業開発の部分は、ONE JAPANで去年スタートした「事業共創プロジェクト」にも繋がっていますね。

福井:ONE JAPAN参画企業各社のオープンイノベーション、CVC、事業開発担当、ベンチャー出向経験者などを中心としたプロジェクトチームを組み、取組みを進めるなかで、すでに形となったものもいくつかあります。プロジェクトでは、「知る」と「共創する」というステップを行い、前者ではデロイトトーマツベンチャーサポートさんにご協力いただいて「出張版モーニングピッチ in ONE JAPAN」という形でスタートアップのピッチを定期的にやっています。そのピッチでONE JAPAN参画企業メンバーとスタートアップ企業を繋ぎ、共創検討をプロジェクトメンバーでサポートしています。

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具体的な事例では、たとえば深部体温を検知するウェアラブルデバイスを開発しているベンチャー「MEDITA(メディータ)」に興味を持った東急のメンバーが東急建設に話を持っていき一緒に活用検討、今、実際に建設現場で熱中症対策として使われるようになっています。また、理系学生に特化したスカウト型就活サービスを提供している「POL(ポル)」は、電通メンバーとインターンシッププログラムのサービスをつくったり、ピッチで話を聞き興味を持った富士フィルムホールディングスグループのメンバーが自社の人事部とPOLとを繋ぎました。結果、現在はPOLが同社のインターンシップの設計を行うようになっています。メンバー自身が事業共創に取り組むこともできるし、社内の適切な部門に繋ぐゲートキーパーとしても動く。そんな動きをもっと当たり前にしていきたいと思っています。

吉富:ONE JAPANを通じて、マッキャンエリクソンと富士ゼロックスとで脳波を計測しマインドフルネスを誘導するAIをつくったり、日本郵便と一緒に孫世代と祖父母世代をつなぐコミュニケーションサービスをつくらせてもらったりしています。企業対企業ではなく、有志団体同士のコラボレーションも進めていて、NRIの有志団体 Arumonとのコラボでは、「女性のコーチングデバイス」のプロトタイプをつくりました。化粧コンパクトにカメラを付けて、化粧直しをする際に映る自分の顔の表情から、前後との差やこれまでのデータを元に「自分の気持ちを整えていく」ためのアドバイスをするといったものです。

福井:この5年の間に、有志団体同士のコラボもあれば、ONE JAPAN参画企業とスタートアップとの事業共創もあるといった形で、まだまだインパクトは小さいですが、少しずつ取組みは広がっていますよね。ONE JAPANでは「企業内有志団体が集う実践コミュニティ」という看板を掲げていますが、大企業の中だけでやろうと考えているわけではなく、スタートアップ、中小企業、NPO、アカデミアなどさまざまなセクターの人々との共創によっても、ONE JAPANの掲げる「挑戦の文化をつくる」というミッションに向けて取組んでいきたいと考えています。

今後の大企業のあり方も見据えて―有志活動・ONE JAPANの「これまで」と「これから」

ーこの5年を振り返って、大変だったことを教えてください。

吉富:現在の幹事は9人体制なのですが、考え方や思想の違いは少なからず当然出ます。それを丸めて落とし所を見つけるのではなく、「ここはこうしたい!」という誰かの強い想い、意志で決めていくのが大事であり、難しいところだなと思います。

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福井:そうそう。そこが大変なところでおもしろいところでもあるんですよね。設立当初は共同発起人や共同代表らの強い意志で牽引してきたという側面も強かったのだと思いますけど、今は幹事それぞれの意志が強いということもあり、議論し、誰かが強い想いをもって主張すると、共同代表の濱松さんや山本さん、副代表の神原さんも納得するという場面も増えています(笑)まぁ、みんな想いが強いので、ぶつかることも多いですけど。(笑)

ーこれからの5年間をどのように想像しますか?

福井:幹事9人を中心に、事務局や各社代表者の意見も取り込みながらつくった2025年に向けたBlue Printがあるのですが、5年前に、ここまでの規模になった今のONE JAPANの姿が想像できなかったように、5年後の姿も想像できないというのが個人的には本音ではあります。ただ、1つ言えるのはONE JAPANが掲げるミッション「挑戦の文化をつくる」ためには、現在参加している55の大企業だけでなく、あらゆるセクターと協力しながら日本中に広げていく必要があるし、広げられるポテンシャルを秘めているということです。

個人的には、5年後にどんなに拡大していたとしても大切にしていたいなと思っているのは、メンバー一人一人が「挑戦する文化をつくりたい」と考えた原体験、ONE JAPANに参加するきっかけとなった出来事や大企業を変えたいという強い想いです。その初心をみんなそれぞれ忘れずに、且つ、 それぞれのその想いを大事にしていくONE JAPANであり続けたいなと思っています。

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吉富:まったく同感です。大企業のなかで「打席をつくる」と考えたときの心持ちは、僕自身も変わらず持ち続けていたいです。大企業病から脱したいと思って有志団体を立ち上げONE JAPANに参加したけれど、そのONE JAPAN自体が「幹事が言う通りに進んでいく…」というようになっては本末転倒。もっともっと幹事以外の人々からの突き上げがあっていいと思うんです。みんながやっているからやる、という同調圧力はよくないので、やりたいこと、やりたくないことはしっかり伝えていくことが大事。規模が大きくなればなるほど、そうした当たり前のことをより意識していきたいと思っています。

当初、若手の実践コミュニティだったものが5年経った今では中堅の比率も高まり、管理職も多くなってるだけではなく、子会社社長も生まれています。さらに5年後は、ONE JAPANメンバーのなかにもっと経営者がいてもおかしくありません。そういう構成メンバーになったときでも、「これをこうしておけばOK」とマニュアル化されていない、「変化を好み、でも変わらないONE JAPAN」であり続けられたらいいなと思います。

福井:そうですね。僕も本業では駆け出しマネージャーでもありますが、ミドルマネジメント自身も「実践者」であり続けることが大事ですよね。「若手がんばれよ」ではなくて管理職にも実践の輪を広げて、ONE JAPANの横の軸だけでなく縦の軸の幅も広げていきたいです。

吉富:そうなった5年後はカンファレンスも、ONE JAPANのメンバーだけが登壇して人を集客できるほどに力を付けているかもしれませんね。

ーありがとうございました。

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構成:中原美絵子
インタビュアー・編集:岩田健太(東急/水曜講座)
撮影:濱本隆太(パナソニック/BOOST)
デザイン協力:金子佳市

取材場所協力:Shibuya Open Innovation Lab

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