大丈夫だから、続けることを諦めないで
朝6時47分、22歳の私は地元の駅で電車を待っていた。
「会社に行きたくない」
そんな憂鬱な気持ちを抱えながら電車に乗り、新潟駅で乗り継ぎ、もう一駅。約1時間15分の道のりを平日の5日間(売上が低いと怒られたときは週6日)、毎日毎日通っていた。
*
2013年2月17日
「本日からお世話になります、○○○です」
声を震わせながら発した言葉。これからどんな未来が待っているか想像すらつかず、挨拶では緊張で頭が真っ白になった。
私が入社したのは、とある求人広告会社。営業職としての採用だった。
同期は3人で、一人は元銀行マン、もう一人は全国チェーン店の元店長と社会人経験豊富な2人。新卒で入社した私とはスタートラインから違う同期と売上を競って戦わなければいけなかった。
まずは先輩との同行研修。先輩のアポについて行って、どんな風に営業をしているかを間近で勉強する。そして、1週間の同行研修が終わると、電話でアポ取りを始めた。同じ日に入社した同期とアポの数はほぼ同等、でも初めて契約を取ってきたのは同期のほうが先だった。悔しく思いながらも電話をかけ、アポへと出向く。それでも一向に契約には結びつかない日々が続いた。
上司には比喩ではなく、本当に毎日呼び出され、ひとりだけ説教。何がダメなのか、どう改善すれば良いのか、何で契約が取れないのか、どうしたら良いのか分からず、ただただ苦しい日々を過ごした。
そのあとなんとか新規を取れるようになっても、なかなか思うように数字は伸びなかった。担当冊子の全体の売り上げが悪いことも相俟って、何度も何度も上司から呼び出された。
毎朝、どうしたら会社を休めるかを考えて、
毎朝、「風邪ごときじゃ会社を休むなんてできないよな」
と諦めて、とぼとぼと会社へ向かった。
上司のように実績があるわけでもない。先輩のように頭がキレるわけでもない。秀でた何かがない私は、足しげくお客さんのもとへ通うしかなかった。
毎日毎日、顔を出し、応募状況や他社で出してみて何を課題に感じたか、どんな層に訴えたいか。うちの会社だったらこんな方法ができて、中身をこう変えることで反応が変わるんじゃないか、こうしたらもっと読者の導線に触れられるんじゃないか。媒体の選択から広告の中身まで徹底的に話し合った。
そんなことを続けていたら、少しずつ、本当に少しずつ成果として現れるようになった。
そして3年目。とある部門でブロック2位となり、社長から表彰された。名だたる営業所を抑え、新潟から私を指名で選んでもらったのだ。想像すらしていなかったので、呼ばれたときは本当に驚いた。
結局4年半が経ち、私は退職した。辞めるときには「よく辞めなかったよね」「本当に良く頑張ったと思うよ」と一人ではなく、何人もの先輩から言われた。それだけの日々を過ごしてきた。この事実が私を形作っているのだと今だからこそ言える。
苦しくても悩んで考えながらもがいていれば、土台が固まって未来が見えてくる。
そのことを経験を持って知っているからこそ、今も生きているし、これからも生きていけるのだ。
*
毎日、お疲れ様。
大変だよね。今は何をしたら良いのか分からないよね。
本当にこの道で合っているのか、辞めたほうが良いのか。
数字が安定する日は来るのか。
不安で不安で先に進む道が真っ暗に思えてしまうよね。
でもね、大丈夫だよ。
3年後、今あなたがやっていることは間違いじゃなかったと証明される日が来るから。
だから今は、上司の言うことをしっかりと受け止めて、先輩からのアドバイスは全部実行して、目の前のお客さんのために何が出来るかを一番に考えてね。
まっすぐに、しっかりと、悩みながらでも向き合い続けていれば、お客さんはちゃんと応えてくれるから。
「○○○さんだから出すんだよ」
そう言われる日だって本当に来るから。今は信じられないと思うけど、ちゃんと歩んだ先にそんな未来が待っているよ。
でもそれは今のあなたが精一杯頑張った先のお話。だから今は目の前のことにしっかりと向き合って諦めずに続けてね。
きっとその先に花開くときが来るから。大丈夫。一緒に頑張ろう。