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生命の再生プログラム特別企画【Deep Dive into Regeneration】プラネタリーヘルスを体感する鳥取・大山フィールドワーク レポート 2024年5月編 No.2
※No.1はこちらからご覧いただけます。
■土中環境再生プログラムに参加する
山や森が荒れる原因には様々なものがあります。気候変動などの地球規模のもの、人為的なもの、複数の原因がからみ合って現状があります。だからこそ私たちは今、リジェネレーションの考えを学び、自然とのつながりと調和を取り戻そうとしています。
今回のワークショップでは、大山山麓の木谷沢渓流の土中環境改善のプログラムに参加させていただく機会を得ました。このプログラムは鳥取県や江府町ならびに桐村里沙さんのtenraiと、有機土木を提唱する高田宏臣さんの高田造園設計事務所が協力して取り組まれたものです。
木谷沢渓流はブナの森が広がり、緑と清流がとても美しい場所です。駐車場から歩いて散策できる便利さもあり、多くの人が自然に親しむ人気の空間です。しかし、人気が高まる中で様々な課題がもちあがり、周辺環境の整備の必要性が高まったそうです。
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シンポジウムで江府町の取り組みの現状やプラネタリーヘルスの考え方、有機土木について学んだのち、再生に向けて整備された遊歩道を見学しました。整備は、自然と人の力によって、遊歩道の利便性と長期的な保全をかなえるもので、とても感動的なものでした。
山を歩くと見る光景ですが、多くの人が踏み固めた地面は植物が生育出来なくなり、露出した地面を雨水が川のように流れます。土が削られ石が露出して歩きにくいので、脇を人が歩き、また道が崩れる。
残念な人の負の作用です。工期や費用の面から多く使われてきたコンクリートやビニール製の土嚢、人工木材などの資材には菌糸や植物の根は定着しないため、自然に還ることは難しく、周辺環境の劣化を進める原因にもなるそうです。
今回の整備では土中環境のバランスに配慮し、墨や藁や落ち葉を丁寧に土壌に混ぜ込み、天然の木材や麻袋に詰められた土嚢による補強が行われた上に、石畳が組まれていました。ゆるやかに渓流近くまで下る坂道は、敷かれた石と石がしっかり噛み合い、私たちが参加した数日前に組んだとは思えないくらいの安定した道でした。
前日に歩いた大神山神社の古い参道にも似ています。どちらの石畳も、雨が降っていなくてもしっとりと水分を含んでいました。
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「この石は仕事しているね!」そんな声が聞こえて来ました。しっとりと水分を蓄えた石は菌糸を成長させ、植物や虫たちを育みます。石も自然の営みの中での役割を果たしているのです。人が変えてしまった森のバランスを人の手で整え直し、調和をとり戻す。リジェネレーションでは、人の力の重要性も語られています。
微力ながら私たちも、活動のお手伝いをしました。メンバーのみなさんに教えて頂きながら、カチカチになっている地面に、貫通ドライバー(通称「ぐりぐり棒」)で竪穴を開けていきます。穴は表面を削って流れる雨水を土中に染み込ませたり、空気を通して土中環境を整える作用があるそうです。森や木や石や土を五感で感じながらした作業は、まさに「リジェネレーション(再生)の身体知」を高めるものとなりました。
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■tenraiが居を構える「せせらぎ公園」で、人と土のつながりを学ぶ
江府町の「せせらぎ公園」は、平成7年にビオトーブとして多様な生き物が集まる場として作られました。しかし時間が経つ中で整備が滞り、せっかくの水源も劣化し、荒れてしまったそうです。現在、桐村里紗さんのtenraiは、江府町の「せせらぎ公園」の一角に事務所を構え、江府町と協力し、公園の健康を取り戻す再生を進めています。
当初は、せっかくの公園もうっそうとした藪になり、せせらぎの水も濁ってしまっていたそうです。自然はバランスが崩れると、強い生命力をもったものだけがはびこる場となってしまいます。
公園の通路の石組みを整え、風と水が通るようにしていくと、徐々に多様な植物が生えそろい、せせらぎに清水が流れるようになり、虫や小動物が還ってきたそうです。ここも人の手が入ることでこそ自然の営みが回復しつつある現場でした。
また、ここには象徴的な農園がありました。多種多様な野菜や果樹の種・苗を1つのエリアに一気に寄せ植え、植物の共生の力で「食べられる公園」を作っているそうです。まるでパリの街のように放射状に広がる畑で、なすにカボチャにバジル、紫蘇、キャベツ?・・・さまざまな野菜が、名もなき草花と共に育っています。一見、雑草だらけで放置されている場にも見えますが、耕さず、肥料や農薬も与えず、多種多様な生き物の力で、豊かな実りをはぐくむ農法だそうです。
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自然を整えるということ、自然の力を借りるということ。生態系の循環の中で、私たち人間は、「分解者」である微生物や虫たちや「生産者」である植物たちからの恵みをいただく「消費者」に過ぎません。私たちは、その大きな生命のシステムの一員であることの自覚を持ち、循環の場を能動的に作り出すことのできる存在として、自然とのつながりを忘れてはいけないことを改めて実感するとともに、人はその中でこそ生きる力を高めることができると感じました。
2024年5月編 第3回に続く
※10月開催の
生命の再生プログラム特別企画【Deep Dive into Regeneration】
プラネタリーヘルスを体感する鳥取・大山フィールドワーク
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