たんぽぽ団地のひみつ
重松清 2018年
・感想
重松さんの作品は2年ぶりです。
こちらも図書館で借りました。表紙がジオラマっぽくて、そこから興味を持ちました。
半世紀以上前にできた団地。そこには、さまざまな人と人が関わり合うドラマがありました。しかし、老朽化が進行。来年から解体されてしまうことに…。そこで起こる、過去と今の狭間物語でした。
普段の何気ない家族の日常を描いている面もあれば、不思議な感覚になる場面も多かったです。「時空の嵐」で過去の世界に行ったり、タイムトラベル的要素がありました。
主人公である、小学生の女の子「杏奈」がおばあちゃんに想いを馳せる場面は特に印象的でした。おばあちゃんは教師でしたが、杏奈が生まれる2年前に他界。杏奈はおばあちゃんに一度も会ったことがありませんでした。杏奈のお父さんやお母さんも「もう少し長生きしてくれてたら、初孫に出会えたのに…。残念だ…。」と言っていたため、無念な気持ちが読み取れました。
昔からあって、数々のドラマのある場所がなくなることは寂しいことです。
私もこれまでに何度も経験してきました。去年小さい頃に通っていたスイミングスクールのあるスポーツジムが閉鎖になってしまいました。しかも分かったのが、だいぶ後になってからで、結構ショックでした。この作品では、「建物は老朽化したら取り壊されるし、人の命も有限だけど、思い出の中でいつまでも生き続ける」という言葉がありました。建物の老朽化や時代の流れは逆らえないものですが、思い出の中でいつまでも想い続けていきたいものです。
普段から使っている駅やコンビニ、関わったり、お世話になっている家族や同僚、先生など、当たり前にあり続けると思ってきたものでも、それには限りがあります。一人一人との出会いや境遇を大切にしつつ、時間をしっかりと使っていきたいものです。