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クスノキの女神
東野圭吾 2024年
・あらすじ
少女と少年には秘密があった——。
不思議な力を持つクスノキと、その番人の元を訪れる人々が織りなす物語。
累計100万部突破! 待望のシリーズ第2弾!
神社に詩集を置かせてくれと頼んできた女子高生の佑紀奈には、玲斗だけが知る重大な秘密があった。
一方、認知症カフェで玲斗が出会った記憶障害のある少年・元哉は、佑紀奈の詩集を見てインスピレーションを感じる。
玲斗が二人を出会わせたところ瞬く間に意気投合し、思いがけないプランが立ち上がる。
不思議な力を持つクスノキと、その番人の元を訪れる人々が織りなす物語。
待望のシリーズ第二弾!
・感想
8月の後半ごろに紹介した『クスノキの番人』の続編です。番人の方をすべて読み終わった後に、SNSを見ていた時に、続編があることを知りました。存在を知ってからすぐに買ったのですが、ちょうど別の作品を読んでいて、タイミングが合わなかったので、9月までかかってしまいました。
この作品、そして前作の題名にもある「クスノキ」は玲斗が普段からいる月郷神社にあるクスノキのことです。それは自分の思っていることを他者にそっくりそのまま伝えることができるという不思議な力を持っています。この辺の話は前作の『クスノキの番人』をお読みください!今作はそのクスノキの不思議な力を使って人助けをするというお話でした。
この作品では先行きに不安を感じている人が何人も登場します。佑紀奈は詩集を置いたはいいものの、全然見てもらえずしまいには持ち逃げされてしまったり、元哉は中学生なのにも関わらず記憶障害を患っており、これからの長い人生において、どうなるかすらも分からない不安に日々悩まされていたりします。前作から登場した玲斗の伯母「千舟」は、ある程度高齢になり長年の職を引退。年々認知症が悪化する一方で、周りを困らせているような状況です。
こうした、先行きの見えない不安に本人も周りも振り回され、「この先どうなるのだろう」と、くよくよ考え続けている姿が描かれ続けました。
先行きが見えない人生に対する不安は、生きていえば誰もが経験することだと思います。私自身もまさに今そういう年代です。先に起きたことを悔やむことも、後に起こす失敗や危機の心配をすることも無駄なことで、今の生活が豊かで、健全な心をもっているということこそが幸せではないだろうかというメッセージが込められた作品であると感じました。
過去の失敗を思い出して落ち込んだり、将来の自分のことを考えて不安になることは、人としては当然の感情であり、むしろそれがないことはかなり危険な状態なのではないかと思います。しかし、それにとらわれすぎた結果、肝心のところで力を発揮できないのでは、やはり意味がないですよね。今を一生懸命に生きろと言われているようで、ひとつひとつの小さなことを行うことが、人生において大切なのではないかと考えました。
今、この瞬間を一生懸命生きたいと思います。
・書籍情報
初版刊行:2024年6月5日
刊行元:実業之日本社
定価:1980円(税込)
ページ数:320p
ISBN978-4-408-53856-3
備考
本書は、以下の作品をもとに加筆し、長編としてまとめられたものです。
「おーい、クスノキ」前編 THE FORWARD Vol.1 2021年11月号
「おーい、クスノキ」後編 THE FORWARD Vol.2 2022年2月号
「今日の僕から明日の僕へ」 THE FORWARD Vol.3 2022年5月号
「今日の僕から明日の僕へ」第二回 THE FORWARD Vol.4 2022年8月号
「今日の僕から明日の僕へ」第三回 THE FORWARD Vol.5 2022年11月号
「今日の僕から明日の僕へ」第四回 THE FORWARD Vol.6 2023年2月号