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聴覚障害犬のトレーニング

このnoteではOne for Dogのオンラインサロン「愛犬文化村」に毎日投稿している記事の中から、比較的刺激が弱いと思われるトピックを選び、辛味成分を調整した上でご紹介しています。サロンメンバーさんにおかれましてはマンゴラッシー感覚でお楽しみください。

いつもご利用ありがとうございます。
One for Dog の齋藤です。
この内容はラジオ放送「One for Dog Radio」で音声コンテンツとしても配信しています。"音声派"の方はそちらからもお楽しみいただけます。

早速本題です。

毎日欠かさず更新されるというありがた迷惑なオンラインサロン記事。
以前は2,000文字程度の記事を書いていたため更新に追いつかない!というサロンメンバーさんが多発していました。
#大迷惑

そんなこともあって今年に入ってからは1,000文字以内を心掛けていたのですが、今回もかなりの長文を紹介することになりそうです。
どうぞ心してお読み下さい。

先日、しつけ教室の生徒さんとこんな会話になったんです。

「愛犬が私に興味を持ってくれなくて…」

ドッグトレーニングには意思疎通がかかせません。
愛犬がそっぽを向いた状態では、指示はもとより褒めることさえ出来ないので、まずは愛犬に興味関心をもってもらう必要があるんですね。

そもそも、興味関心が起きない状態とはどのような関わり合いの中で生じるのか。
そんな説明をしていたのですが、話の流れで思い出した”とある愛犬”のことをお話したいと思います。

それは僕が以前の職場でしつけ教室を担当していた頃のこと。
2才くらいのトイプードルを連れてきた飼い主さんから思いも寄らない相談がありました。

「この子とトレーニングを学びたいのですが…出来ますか?」

見たところマイペースでおとなしい男の子。
特に問題はなさそうだったんですが、どこか飼い主さんは不安そう。
そこで、

「なにか心配なことがあるんですか?」

すると...

「耳がほとんど聞こえないみたいなんです」

ドッグトレーナーとして現場に立ちかれこれ10年ほど。
噛み癖のある子、興奮が収まらない子、臆病な子…
それまで色々な愛犬たちを担当してきましたが、聴覚障害(難聴)の子の”しつけ”は初めてでした。

「どのくらい聞こえないんでしょう?」

「病院の先生に聞くところによると、ほとんど聞こえていないみたいです」
「ただ、こればかりは自覚症状を本人が話せないので反応を見る限りだそうですが…」

日常の物音…特に大きな音や衝撃音にすら反応しないという愛犬。
大学病院などで精密検査を受ければ確かな事は分かるかもしれないと言われたそうですが、治療の術がないとのことで”付き合っていく”ことに決めたそうです。

先天的だったのか、後天的だったのか、いつしか音が聞こえなくなった愛犬。
問題行動のような困ったことはないそうですが、とはいえ今後の長い犬生を過ごしていく中で、もっとコミュニケーションを深めたいというのが理由でした。

正直僕も戸惑いましたが、飼い主さん了承のうえ出来るところまでやってみようと”聴覚障害犬とのドッグトレーニング”がはじまったんです。
しかし、意気込む暇もないくらいに最も難しいとされる問題にぶち当たりました。

“モチベーターへの興味が薄い”

僕が使っていたトレーニング法は「ルアー(報酬)トレーニング」。
指示に従うことで報酬がもらえるといういわゆるご褒美トレーニングです。

どんなに美味しいオヤツだとしても、その子がご褒美(嬉しいまたは欲しいもの)と感じなければ報酬に値しません。
オモチャなどでも代用出来るのですが、これまたオモチャにも興味を示さない…

となれば、「褒める(褒め言葉)」一択となるわけですが、それこそ耳には届きません。
かくなる上は…

「飼い主さんの表情で喜ばしましょう(汗)」

最終手段でした。
彼の心に届く手段は”視覚”か”触覚”。

しかし、耳が聞こえない彼は”(急に)体を触られること”が苦手でもあったんです。
そこで残されたのが飼い主さんの笑顔というわけ。

難題は続きました。
冒頭で話したことがダメ押しに。
そうなんです、満面の笑みを作っている飼い主さんの顔を見てくれないんです。

彼の視線は常にキョロキョロ。
視覚に頼っていた分、たくさんの情報を得ようとして”集中”することが出来なかったんですね。

それでも懸命に取り組む飼い主さんに、僕も毎回課題を作り試行錯誤の日々を送っていました。

そんな中、たしかあれは夏の日。
いつものレッスンに訪れた飼い主さんから不思議な話を聞いたんです。

「実は先日、よく噂になっている”犬(動物)と話せるカウンセラー”さんのところに行ってみたんです」

愛犬家の皆さんなら何度か耳にしたことがあるスピリチュアル系カウンセラー。

「友達が行ってきたという話を聞いて話半分ながらも予約してたんです」
「この子がこういう状態なのでいつも何を考えているかを知りたくて…」
「半信半疑だったんで、耳が聞こえないことは伏せて相談したんです」
「コミュニケーションがうまく取れないって」

すると、そのカウンセラーが…

「理由は言ってくれませんが、ただ”いつも淋しい”って言ってます」

飼い主さんは自営業。
職場にさえも愛犬を連れて行くほどで、家でもほとんど一緒の生活。
これはやっぱり期待しすぎたかなと思ったそうです。

ただ、次に言われた言葉が妙に引っ掛かったそうで…

「大好きだった遊びを最近全然してくれないって言ってますね」
「カーテンに隠れたり、ソファに隠れたり…かくれんぼみたいな遊びですかね」

その遊びはまさに仔犬時代にやってた遊びだったそうです。
ただ、最近はほとんどやってなかった遊び…

「とにかくママはあまり僕に関心を持ってくれてないって言ってますよ」

ちなみに、そこのカウンセラーがミラクルでね!?みたいな話しではく本題はこの後です。

いまさら難聴なんですとは言えず、そのまま帰ってきたという飼い主さん。
それからふと思い出したんだそうです。

難聴が分かってからというもの「この子は難聴なんだから話しかけても聞こえないよね」と思い込み、愛犬に声をかけることをやめてしまっていたそうなんです。

“声が聞こえていなくても、何かしらの想いは届いていたのかもしれない”

そう考えた飼い主さんは翌日から、彼に向かってひたすら語りかけるようにしたそうです。
後ろ姿でも、後頭部でも、振り向いていなくても話しかけるようにしたそうです。
すると…

「最近、トレーニングの反応が良くなってきたんですよ」

確かに、しつけ教室での反応は以前と違って飼い主さんへの興味が沸いているようでした。

「耳が聞こえないからとか、人間の言葉は通じないだろうとか、そういった思い込みはいけませんね」

このことに気付けただけでも良かったと言われ、僕も同じ気持ちになったのを覚えています。

飼い主さんに興味を持たない子の場合、飼い主さんが愛犬ときちんとお話をしていないことが多いです。
犬たちはたまに首を傾けながら、僕たちの話に、問いかけに耳を貸してくれます。

理解は出来ていなくても、そこにはちゃんとコミュニケーションがあるんですね。

ほらね、もうすぐ3,000文字。
#長いわ

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【今週のサロン記事】
・2022年6月19日(日)note/stand.fm 更新
・2022年6月20日(月)ナイショ
・2022年6月21日(火)ナイショ
・2022年6月22日(水)ナイショ
・2022年6月23日(木)ナイショ
・2022年6月24日(金)ナイショ
・2022年6月25日(土)犬種区分:アラスカン・マラミュート
※サロン記事の内容をOne for Dog Radioでちょっとだけ触れています

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ということで、今回はこの辺で。
それでは皆さま素敵なドッグライフをお過ごしください。

One for Dog 齋藤でした!

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