二人で本を作ってイベントに出てみた。
まさか友人と本を作り、イベントに四回も出店することになろうとは、去年の今頃には考えてもいなかった。
これから書くことが少しでも、「誰かと本を作ってみようかな…」と思っている人の参考になれば嬉しい。
■一緒に本を作った二人について
一緒に本を作ることになったゆとれひとゆとりさんとは高校からの仲。私がこれまで詩を書いていたことは、本を作り始めるまで一切伝えていなかった。
■爆速!企画立案から取り掛かりまで
きっかけは、ゆとりさんがSNSでKindle出版について言及していたことだった。自分の本をいつかは出したいと思っていたものの、なかなか機会がないと動けない私はすぐに「やろうよ!」と声をかけた。
二日後には早速打ち合わせをしていた。腰を上げるまでには時間がかかるけれど、動き始めたら爆速の二人だ。住まいが離れているので、連絡手段は基本通話かチャットになる。本を作り始める前に決めたことは、以下の四点だ。
①ジャンル…それぞれ自分にできることを提示し合った。結果的に「写真&イラスト詩集」になるのだが、後々窮屈に感じることのないよう、詩も短歌も散文もなんでもOKということに。
②本のテーマ…当初の仮タイトルは「鬱本」だった。共通の好きなものと言ったら歌手の倉橋ヨエコさんだったので、そんな雰囲気で…とざっくり決めた。(後にこのざっくりに苦しめられることになる)
③一人何ページ書くか…ここは臨機応変に。
④形式…書き出してから双方の認識が違ってやり直し…とならないよう、あらかじめ決めておく。wordを使って書くことと、全ページに写真やイラストを入れること、フォントの種類と大きさを決めた。
取り急ぎ最初の一ページを作ったら共有することとしたら、その日のうちにお互いが仕上げてきた。
■コツコツ執筆!
最初に作ってきたページを見せ合い、齟齬があれば擦り合わせていく。その後は時々作業通話をしながら、こまめに書いたものを共有していった。今回の本では、掲載されている写真は私が全て担当し、ゆとりさんがAIでイラストを生成してくれた。作った詩に合う写真がない時にイラストを作ってもらったり、できたイラストに詩をつけて欲しいと依頼を受けたり。できないことを補い合えるのが共同制作の良いところだ。
AIイラストを著書に使うか否かはまた好みの分かれるところだと思うが、私は今回の共同制作では、自分一人だったらしないようなことを積極的にやっていこうと考えていた。
■テーマのずれと軌道修正
倉橋ヨエコさんと言ったらどこかレトロな雰囲気で、人の感情に焦点を当てた歌を歌っていると私は感じていた。ところが出来上がった二人の作品を並べてみると、私は昔懐かしい作風のものが多く、ゆとりさんの方は近未来的なワードが沢山散りばめられていた。ふわっとしたテーマで進めると、このように食い違いが生じてしまうこともある。
しかし、ページを捲るたびに過去から未来へと物語が進んでいく構成とし、本全体にストーリー性を後付けする事を思いついた。結果的にこの流れがこの本にシニカルな側面と奥行きとを持たせてくれた気がするので結果オーライだ。とても気に入りました。
■イベントにも出る!?キーワードは「せっかくなら」
当初はkindleで販売するのみの予定だったが、せっかくなら紙の本も出したい、せっかくなら広くお届けできるようイベントに出したい。と、せっかくならの連鎖でなんと企画立案から一ヶ月もたたないうちに文学フリマに申し込むことになった。
初めてのイベント出店で自分の作品が誰かの心に届く喜びを知り、その後三度もイベントに出ることとなる。
■最も大切なのはリスペクトと感謝
私たちは好みが違う方だと思う。二人で作る以上、装丁から構成からすべてを自分の好きなもので固めるというのは難しい。自分ひとりではしないであろう新鮮な選択を楽しむマインドで臨むのが良いのかもしれない。そのうえで、双方が気に入って愛着を持てるものを突き詰めていくことに共同制作の面白みはあると思う。
また、作業量がどちらかに偏らないよう、「PDF結合担当」「本の発注担当」などと分担をした。押し付け合わないのが肝だ。
当たり前のことかもしれないが、お互いの作品にリスペクトの気持ちを持つこと。やってくれたことには感謝の気持ちを持つことが一番大切だと思う。そしてそれを口に出すこと!いいと思ったら必ずいいと伝える。すると相手は嬉しくなってモチベーションが上がり、つられて自分ももっと良いものを作るぞという気持ちになるのだ。
■出来上がった本
ありがたいことに最初に二人で作った本『喫茶ニューロマンティック』は完売した。
本作りの魅力にすっかりハマって作った二作目は、生活の詩集だ。
また新たな壁に何度もぶち当たり、軽率に本を作り出したことを一時は悔やんだが、出来上がってみると自分達で生み出したものは可愛くて仕方がないのである。
本作りやイベント経験を通して世界が広がったのはもちろん、友人との向き合い方を改めて考えるきっかけとなった。
また、自ら一歩踏み出してひそかに持ち続けていた夢を実現できたことは、自信にも繋がった。
本棚に加えられた思い出いっぱいの本は、私たちにとって一生ものの宝物になった。