起業で大切なのは「とりあえず、やってみる」で作り出した沢山の「点」を繋げていくこと。【『CONNECT.』ゲスト起業家 長谷部千春さん】
山形県起業家
OURS BLANC Roaster&cafe
長谷部千春さん
2022年11月19日(土)に、株式会社SEAFOLKS、新しい働き方コンソーシアム、スタジオ八百萬の共催により、これから起業を志す方、既に起業されている方へ向けて地域横断型の起業交流イベント『CONNECT.(コネクトドット)』(後援:山形県、総務省 東北総合通信局)が開催されました。
「もっと起業を自由に。」をスローガンに掲げた本イベントには、起業に興味がある学生や若い起業志望者が全国から多数参加し、『起業をする側』と『起業を支える側』の登壇ゲストから「実際に事業を立ち上げ成長させていく過程でのリアルな話」を直接聞くことができました。
今回、山形県から『起業をする側』の立場で登壇されたOURS BLANC Roaster & cafeの長谷部千春さん。長谷部さんが起業をする上で大切にしていることや、ご自身のヒストリーをお聞きしました。
まずは、起業への道のりやヒストリー、長谷部さんが大切にしていることなどを教えてください。
昨年の2021年10月に個人事業として開業し、今年で1周年を迎えました。創業を決めてから、店舗のオープンに向けた準備、開業してからの1年間は本当にあっという間でした。
起業に限らず、私は生きている中で決めている事が2つあります。
この2つは共通してチャレンジすることが大前提にあるということに気づきました。
そして、私の考える「チャレンジする」ことには2つのタイプがあります。
何かやりたいことがあるという起業志望の方とお話をしていると、起業で大切なことは2番目の「難しいことでも諦めないでチャレンジできる」であるというイメージを持っている方が多いように感じました。もちろんこれも大切なことだと思います。ですが、私は起業を目指すなら1番がより大切だと考えています。
やりたいことはあるけど、自分の考えるサービスや商品が人に売れるレベルであるか悩んでしまったり、失敗したら嫌だと思ったり、不安なことって沢山ありますよね。私も考え始めると止まらず、すごくモヤモヤしてしまったこともありました。
そこで大事なことは「とりあえず、やってみる」ということです。やりながらでも考えることはできるし、やっていても不安はつきません。沢山準備しておくことに越したことはないですが、100%完璧にスタートすることは難しいです。「とりあえず、やってみる」ということには沢山のメリットがあります。
私が物事に挑戦したときの心の持ち方や、考え方についてのエピソードと、「とりあえず、やってみる」を大切に行動していた起業当時のヒストリーをお話します。高校生の時にダンス部に入部してから踊ることが好きになりました。卒業後もダンススクールに通ったり、チームを組んだりしました。20代のある時、ふと夢の国のダンサーになりたいなと思い、某テーマパークのオーディションを受けることを決めました。私はそれまでヒップホップや、ジャズといったジャンルのダンスしかしてこなかったのですが、テーマパークダンスというジャンルがあることをはじめて知ったので、練習してオーディションに臨みました。オーディションは書類審査から始まり、ダンスの実技、体力テスト、面接の4次試験までありました。私は最終面接までいったのですが、残念ながら落ちてしまいました。当時はそれが悔しくて、来年こそは受かるぞと思っていましたが、テーマパークはあまり楽しいと思えないし、私自身夢の国に関する勉強にもなかなか身が入らないということに次第に気づき始めました。
それでも2回目のオーディションに行き、また最終面接に行きました。ふと面接待ちの他の受験者さんたちが眼に入った時に、スーツなのに全員何かしらそのグッズを持っていて、夢の国に対する熱量や愛を間近に感じたときに、私は実はあんまり好きじゃなかったのかもしれないということに気が付きました。そもそも年に1、2回行くレベルだったので、私はその挑戦には失敗しましたが、全く後悔はありませんでした。何をもって失敗とするかということは、そのとらえ方だとは思いますが、失敗も経験値の一つです。上手くいかなかったとしても、上手くいかなかったという経験が手に入りました。
私は山形でも「とりあえず、やってみる」ということを実践していました。私は結婚を機に山形県へ移住して、最初のうちは車の運転もままならない状態でしたが、仕事を始める為に、自宅から近いという理由で、お菓子屋さんで働き始めました。とりあえず始めたけど、どうせやるなら楽しい方がいいという精神で一生懸命務め、そこでは8年間お世話になりました。
カフェを始めるきっかけとなったのも、その職場の社長からの紹介で、「米沢のスタジオ八百萬でチャレンジカフェというものをやっているらしいから」というお話を聞いて、ここスタジオ八百萬で実際に話を聞いたところ、なんだか楽しそうだったので気軽に「やってみます」という感じで始めました。
とはいえ、お試しとはいっても疑似開業みたいなものなので、きちんと食品衛生責任者の資格を取得したり、オーナーの山田さんや、先にチャレンジカフェをされていた方に色々アドバイスを頂きながら、ここに間借りカフェ、週に一回の「OURS BLANC」がスタートしました。
もちろん最初は殆どお客さんは来ませんでした。なので、認知してもらうためにチラシを配ったり、SNSに力を入れました。少しずつお客さんが来てくれるようになったので、「お試しだから」という理由で私は毎週焙煎したコーヒーや、スウィーツのメニューを変えて、お客様に感想を貰っていました。
実は私はもともとコーヒーがあまり好きではなくて、カフェといえばコーヒーは必須だろう、という理由で独学で勉強をし始めました。スウィーツも、始めは勤め先のお菓子を卸させてもらったり、徐々に自家製のスウィーツを作ってレパートリーを増やしていきました。今話した通り、長年培ってきたスキルがあったわけでもなく、コーヒー屋で務めた経験も、資格もありませんでした。
だいたいの人がやりたいことを諦める理由として、以下のような内容を言います。
みなさんは何か心当たりはありますか?私はお金がないことが不安でした。一応、なんとか100万円だけ貯めることはできたのですが、開業費には全然足りず、銀行の融資を使ったり、県の創業補助金を活用したことがとても大きな助けになりました。資金として助けになったのはもちろんなのですが、そのためのプレゼンテーションを用意したり、融資の審査のためになんとなく事業計画書や資料作りをしていたのですが、そういった準備を通して自分のビジョンを明確にとらえることができて、事業を始めるという事を実感して行動できました。
起業する、ビジネスをはじめると聞くと難しく感じますが、「とりあえず、やってみる」が1つできたら「点」がつきます。ひとつひとつの出来事や、体験を繰り返して「点」を増やしていきましょう。始めから点と点が繋がるという事はありません。できるのは、後からこの点と点を繋げる事です。起業して活躍している人の話を聞くと、「たまたま運が良かっただけだ」と話す人が多いです。ですが、その運は偶然ではなくて、沢山の「点」を打ったことで、ヒットする確立が上がっているだけでした。初めてやることは想像以上にエネルギーを使いますが、好きな事、やりたい事を仕事にできるなら楽しさの方が勝ると思います。どうか沢山のチャレンジをして、自分の価値を上げながら、スタートをきってください。
「起業したいな」から「起業する!」覚悟を決めたタイミングは?
スタジオ八百萬で間借りをしていた時はまだ「起業したいな」の段階でした。1年半したとき、新型コロナウイルスが流行り始めて、辞めざるを得なくなってしまってから色々な人に「また再開してほしい」と言ってもらえて、自分自身も急に辞めてしまいモヤモヤしているところがあったので、これは「もう開業するしかない」と思って起業をしました。
思い立ってからどのように準備を進めたか、具体的な手順や期間を教えてください。
開業は昨年の10月ですが、その年の1月から店舗探しを始めました。借り入れをしているので、10年計画でできるという場所を探していました。今36歳なんですが、35歳が自分の中での区切りという気持ちがあったので、35歳の内に開業するということを決めて始めました。
参考にされた方などはいらっしゃいましたか?
カフェ巡りがもともと好きだったので、それを色々みていてビジョンを固めていきました。
お店の名前の「OURS BLANC」はどのような意味なのでしょう?
OURS BLANCはフランス語で「ホッキョクグマ」という意味です。それはただ単に、私がシロクマが好きで、お店の名前にしたいなと思ってつけました。シロクマは皮膚が黒いんですけど、店舗も表面の白、内側の黒、そして間のグレーの3色をテーマカラーにして、とりあえずシロクマっぽい雰囲気でやろうと思って、お店に自分の好きなもの、自分らしさを取り入れました。コーヒーを一番のツールとして使っているのですが、私自身もともとコーヒーがあまり好きではなかったので、私のようにコーヒーが少し苦手な人でも飲みやすく、「コーヒーって美味しい」と思ってもらえるように工夫を凝らしています。
一番大変だったことや困難なことは何でしたか?継続するために大事にしていることを教えてください。
私はそこまで人付き合いが得意ではないので、コミュニティに参加することが苦手でした。また、起業される方でクラウドファンディングなどを活用される方もいると思うんですが、そういったことも含め「人との付き合い」が得意ではなかったので、資金の調達に関してかなり狭まっていたことが大変でした。
起業してからの集客手段、特に地方での考え方や大事なことを教えてください。
集客は基本的にSNSがメインでした。地方での考え方でいうと、以前務めていたお菓子屋さんが、8年前は本当に古い感じの老舗のお店で、ケーキも300円前後という値段でした。そのお店の方は東京でもお菓子の修行をされている方だったので「もっとこうしてみたら?」などのお話をしていたところ、「地方は遅れているから」ということでした。その方は、「こうしたい」というビジョンは持っているのですが、すぐにではなく、まわりの環境に合わせて徐々にケーキの質を上げていったり、少しずつビジョンに近づけていくといったことを教えて頂いたので、私も地方での考え方としてそれを参考にしています。私は日常に寄り添ったようなコーヒーを作りたいと思っているので、スペシャルティコーヒーではあるのですが、毎日飲めるような価格であることや、突飛しすぎない味づくりをしようといった形で考えています。
カフェ以外の事業や、発展させて何かすることは考えていますか?
開業の1年目はがむしゃらに基盤づくりをしようと思い、まずはカフェの認知に力を入れています。一応コーヒーをメインに取り扱っているのですが、第2段階としては、今実はひっそりやっているオンラインショップを公表してやりたいと思っています。また、今の店舗の横に倉庫がついていて、まだ手つかずなスペースがあるのですが、夫が写真を撮ったりパンを作ったりするので、それを活かせるような空間を作りたいと考えているので、それが第2段階が落ち着いた後の次の目標です。私がカフェをやるにあたって、夫がパンの修行をしていてくれたので、それを活かして一緒にやっていきたいです。写真に関しても、まだ構想段階ですが、倉庫をスタジオだったり、ギャラリーにできればと考えています。山形は東北芸術工科大学があったり、アーティストが多い場所なので、その関連でフリースペースとして開放したり、なんでもできるような空間を作りたいと思っています。
OURS BLANC Roaster & cafe
長谷部千春(山形県)
結婚を機に東京から山形へ転居。南陽市の菓子店で勤務するなか、知人の紹介によりスタジオ八百萬でチャレンジカフェを開始。すぐに人気店になるも2年程でコロナを経験。休業中に、やはり自分のお店を持ちたいと思い、一緒にベーカリーカフェをやりたいとパン職人の修行をしていたご主人と2021年10月に開業。今や満席で座れないほどの人気店に。
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