法学未修者がロースクール入学までにすべきこと
こんにちは。ひとまと申します。
最近、ロースクール未修コースについて上記のようなことをつぶやいたのですが、ちょっと長文を書きたくなったので、noteに記事を書いておこうと思います。
結論は上記のポストの通りです。
入門書について
私の場合は、以下の通り、たまたま既習・未修併願でロースクール入試を受験した結果、既習入試にボコボコにされて自分のヤバさを認識する→学部4年生後期の時間的余裕を最大限活用したパワープレイ(アガルートの総合講義100+重問)で入門を終えています。
いやそこまではできないよ、という方も多いと思いますが、いわゆる純粋未修の場合は、入学前に絶対に何かしらの入門書を読んでおいたほうが良いです。なぜならば入学後最初の1か月目はずっと法学入門のようなカリキュラムは不可能であり、法学入門と一緒に憲法、民法、刑法などが同時に襲ってくるからです。
つまり、入門できてない状態で、入門しながら憲法、刑法、刑法などを同時並行的に学ぶ必要が出てきます。
なお、法学部生であっても他のローの既習に合格しているなど、ある程度法律に理解があり、かつある程度答案の書き方もわかっている方以外は純粋未修の方と同様、入門書を読んだ方が良いです。
単に法学部を卒業しただけの学生と純粋未修のレベル差は正直そこまでありません。
いつの間にか「法学部卒」というアドバンテージを失ってしまった方を何人も見ました。
したがって、入学前に入門書を読んで、入学時にはそれぞれの法律に入門しておけば、近い将来の自分を救ってくれる可能性があります。
ではどの入門書を選べばよいのかといえば、Xでもポストしましたが、よくわからなければ、白石忠志先生の『法律文章読本』(弘文堂)+『伊藤真の〇〇法入門』シリーズ(日本評論社)でよいと思います。
法律の読み方については、白石先生の『法律文章読本』がとても参考になります。1章は特に、これから法律を学ぶ人のために書かれており、ここだけでもまずは読みましょう。
各法律の入門書の選択については、「入門」と書いてある本屋で数ページ読んでみて、①これなら読みきれそうだな思える、②条文番号が掲載されている、という2つの条件を満たす本なら正直なんでも良いです。
民法については薄めの入門書だけでなく、分厚めではありますが、道垣内弘人先生の『リーガルベイシス民法入門』(日本経済新聞出版)まで読めるとなお良いです。
民法は勉強する量が多く、基本的には、①総則、②物権、③担保物権、④債権総論、⑤債権各論(契約法)、⑥債権各論(事務管理・不当利得・不法行為)、⑦親族・相続の7分野の本を別々に購入して勉強することになります。薄めの入門書だけだと不安なので、余裕があれば読んでみてください。損はしないと思います。
なお、入門書を読む際は、出てきた条文番号を必ず六法で引いてください。論文式試験で困ったときに参照できるのは六法だけです。六法を引く癖をつけておけば、試験の際に六法があなたを助けてくれます。
伊藤真先生の入門シリーズは条文も掲載されていますが、必ず六法を引いてください(六法を開けない電車等で読んだ場合には、後で家や自習室、図書館等で必ず六法を引くようにしてください。)。
ただし、行政法は、六法に載っていない法律が掲載されていることが多いため、いったん行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、行政代執行法、国家賠償法ぐらいでよいと思います。
もちろん、入門書だけでは足りないですが、入門書を読むことで余裕が出てくれば、少し厚めのテキストも読めるようになると思います。
もっとも、司法試験合格に必要な知識の習得には、薄めのテキスト(有斐閣ストゥディアシリーズやNBS(日評ベーシックシリーズ)など。)や定評のあるテキスト(『基本〇〇法』シリーズなど。)+判例集を使用するぐらいで充分だと思いますが。
分厚い本は①ロースクールの予習や②論点について深堀りしたいときくらい(②については、深みにはまりすぎると危険なので、あまり推奨しませんが。)にしましょう。私自身は本を読むこと自体が好きだったので、色々な本を適当に流し見したりしていましたが。
なお、答案の書き方はロースクールでは教えてくれないので、自力で学習する必要があります。
自力で答案の書き方を学習する場合のおすすめ教材は次項に記載しております。
予備校本について
予備校本に親を殺されたのかと思うほど予備校本が嫌いな教員もいますが、便利なので使っても良いです。
そういう教員がいる場合には隠れて使いましょう。
変な癖が付く、とかいう教員もいますが、別に間違っていても後から矯正できるので、気にしなくて良いです。
予備校本だけで合格できるっぽい(私はできてないので、「ぽい」と書いています。)ので、本試験で学術的に完璧な答案が求められているわけでもないですし。
基本書派か予備校派か両方使う派かは正直どうでもよく、インプットした知識をどう使うかが一番大事です。
いらない情報ですが、私は両方使う派でした。
なお、予備校の講座を受講しない場合の論文対策については、短文事例の答案例および予備試験合格者が実際に作成した答案(ただし、字が汚くて読みにくいものもあります。)が掲載されている『アガルートの司法試験・予備試験 実況論文講義』シリーズ(サンクチュアリ出版)で書き方を覚えてから、ぶんせき本(辰已法律研究所)などで長文問題(本番)で答案をどう書くのかを研究するのが良いと思います。
実況論文講義シリーズは2019~2020年に出版されているので最新の答案作成のトレンドが反映されていない可能性がありますが、まだまだ利用価値はあるんじゃないかと思います。
予備校について
大学入試でも予備校を利用していたので、特に抵抗なく利用しました。しっかり受講すれば、一定のレベルまで引き上げてくれるので、使って損はないと思いますが、必須というわけでもないと思います。
私の場合は、アガルートの講座と沢田隆先生の『論文処理手順』を購入して利用していたので、以下ではそれらについて少しコメントをしています(あくまで「当時の」感想であって、今は状況が異なっている可能性があります。)。
アガルート
なお、アガルートの講義については以下の通りです(忖度なし)。
総合講義100、重要問題習得講座、司法試験型答練の3つを受講しました。以下、かなり適当に感想を述べていきます。
総合講義100および総合講義テキストの内容は合格に必要なレベルは網羅していたと思います。ロースクールの授業についていけたのも、総合講義ありきだったかなあ、とは思っています。
よく言われているように講義中の工藤先生の鼻水をすする音は私も気になってました。
論証集にはよくわからない論証があったりします。例えば、承継的共同正犯は無理やり2つの学説を接合したようなキメラが載せられていましたし、訴因変更の可否の論証は何を言ってるんだこれは?と思っていたので、一回も答案に書いたことはないものがたくさんあります(現在は変わっているかもしれませんが。【2024.12.27追記】2024年12月に出版された『アガルートの司法試験・予備試験 合格論証集 刑法・刑事訴訟法 【第2版】』でもそのままでした。)。
かなり論理的整合性を気にする性格だったので、7割ぐらいの論証は自分で作り直した覚えがあります。なお、各科目一冊にまとめたかったので、論証は総合講義テキストに書き込んでいました。
行政法の論証集は訴訟要件が最後に整理されている個所があるなど、良い部分ももちろんあります。それ以外の部分は可も不可もなく(そもそも行政法は覚える論証が少ないです。)。
憲法の論証集と重問は判例をペタペタ貼ってるだけの個所が多すぎてあんまり使えないなこれ、と思っていました。
解説ありきなので、公法系の論証集は出さない、とどこかでおっしゃっていた記憶がありますが、個人的にはそれ以前の問題じゃないかな、と思っています(あくまで個人の感想です。)。
答練については、添削の質を喧伝しているにもかかわらず、返却された答案に誤ったコメントがあり、怒り狂ったりしていましたが・・・。あと、問題もこんなん出るか?みたいな内容で、十分に過去問を分析できているのか疑問を覚えた記憶があります。
アガルートフェイント(https://ameblo.jp/1594bb/entry-12187618430.html 参照。)が経験できて逆に感動した記憶もあります。
なお、最新の総合講義では、1科目ずつ別々の講師が担当するようになっており、工藤先生は引退されたようです。経営に専念していくということなのでしょう。
論文処理手順(BEXA)
中級者以上向けの教材としては、BEXAで販売されている沢田隆先生の『論文処理手順』(最新版は、https://bexa.jp/courses/view/471)は個人的には好きな教材でした。
購入したのは、地方ローゆえに外部の情報が入ってこないので「こんな方におすすめ」の以下の2項目が私に刺さったことが理由です。
「上位ロー生や予備試験合格者が受験当時にどのような勉強をしていたのか気になる方」
「自分の学習方針が正しいのか不安な方」
未修3年生の後期の冬に購入し、「あーここ、そう!そう処理するよね!良かった、一緒!」とか言いながら勝手に感動していた覚えがあります。自分は多くのケースで間違った処理をしていなかったんだ!と勇気づけられました。
おそらくもっと早い時期に買って、沢田先生の思考を辿る、という使い方をするための教材だったと思うので、使う時期が遅すぎたと感じるときはありましたが・・・。
来年以降の未修コース受験予定者へ
お金と時間に余裕があれば、未修専願であっても、少し法律を勉強してみて、既習入試を受けてみることをおすすめします。もしかしたら、自分を奮い立たせるきっかけになるかもしれません。
未修・既習入試を併願で受けることが絶対に良いということはないです。あなたがどう戦略を立てて実行するのかが一番大事です。
まとめ
まとめてしまうと、たまたま未修・既習併願で受けたおかげで、自分の実力を運よく知ることができうまく行っただけの人間が思ったことを羅列しただけなのですが、皆さんも、入学までの残りの3か月を無駄にしないようにしてください。
「未修~!既習生は多分もう司法試験の過去問とか解き始めてるで~焦りや~!」(紅しょうが・熊元プロレス風に)
最後にふざけてしまいましたが、在学中受験制度が始まっているので、既習入学予定者はマジで今頃過去問を解いていると思った方が良いです。マジで。現在の既習入学予定者が1年後のあなたの姿だと思って追いつくように死ぬ気で頑張ってください(気持ちだけで充分です。体調は崩さない程度で・・・。)。
以下は、自分の体験記みたいなものを記載しているだけなので、全く読まなくて良いです。
筆者の属性等ついて(読まなくてOK)
筆者の属性は以下の通りです。なんか説得力は必要かな、と思ったので記載しておきます。
地方国立大学法学部→同大学ロースクール(未修コース)
いずれも留年せず卒業できています。
ただ、学部の頃は劣等生だったため、民法(総則・物権・契約法)、会社法、刑法各論、刑事訴訟法の授業で一回ずつ単位を落とした経験があります。
なんなら出席点+レポートだけで単位が出る一般教養科目でフル出席したにもかかわらず、レポートを出さずに落単したこともあります。
司法試験は1回目受験で合格
順位を公表するのは好きではないので、順位ランク等だけで勘弁してください。
短答式試験:1000番代
論文式試験
公法系:A / B
民事系:A / A / A
刑事系:A / A
選択科目(経済法):上位20%程度
ロースクール入試 - 併願(よまなくてOK)
西日本出身なので、西日本のロースクールを中心に受験しました。
正直、未修入試の対策はよくわからなかったので、『これから正義の話をしよう』(マイケル・サンデル)だけ読んで過去問も解かずに突撃しました。
『これから正義の話をしよう』は、なんかこんな感じのやつが出題されるだろ、みたいな理由で読みました。
あまりお金はなかったので、何とか費用を捻出して2、3校だけ未修・既習併願で受験しました。正直言いますと、法学部で法律学んでるしワンチャン受かったりして・・・とか心の隅で思っていました。
そして、既習入試を受けて自分の考えが浅はかだっだと思い知りました。公法系・民訴・刑訴はほぼ答案が書けませんでしたし、残りの科目も答案の形をした何かしか書けなかったのです。
Xでも書いてますが、神戸大学ロースクールの入試問題の憲法については、問題文を読んだあと諦めて寝ました。受験生のために試験を作成していただいた先生、その節は大変申し訳ございませんでした。
あと、未修入試も普通に難しいですよね。すべての試験中に「あっ、やらかした・・・」と、思いましたし、1校を除いて落ちました。
ロースクール入試後(読まなくてOK)
とりあえず、未修コースでさえ合格した自信がなかったため、合格発表が出るまでは何もしていませんでした。
なんとか出身大学の未修コースのみ合格できたので、入学手続が完了した後から、司法試験合格のために何をすべきか考えることにしました。
上記の通りのレベルだったので、多分入学後から勉強を始めても間に合わない、という認識がありました。また、未修の合格率は全体で10%台でしたし、きっとみんなこの事実を知って「これはヤバい、このままだと私は残りの80数%だ」という認識をもって勉強してくるぞ、とか思っていました。
大学受験の際の経験から、試験対策なら予備校の出している本だ!と思い、早稲田経営出版の通販サイトで、最新の①逐条テキスト(7科目セット)、②体系別過去問題集(7科目セット)、③論文スタンダード100(7科目セット)を買いました(これらの教材を購入した理由は、セットで買うと20%オフになるため、一番安かったからです。)。さらに当時の最新のぶんせき本(辰已法律研究所)を買いました。
とりあえず、過去問と答案を知ろうと思い、ぶんせき本の答案とスタンダード100の答案例を読み比べたりしました。すると、当然、スタンダード100の答案例のレベルが低い、というのがわかるわけです。その結果、この本、収録問題数が多いだけの本なんだな、と気付いてしまったので、旧司の問題を解く際に使用するだけにしました。
「実際の合格者が書いた答案をもとにした、司法試験・予備試験の論文式試験を突破するための実践的な答案集」という触れ込みですが、各試験の合格答案をベースにはしているものの、アップデートされていないんだろうな、と思います。刑法なんていまだに折衷的相当因果関係説の答案例が記載されていますし・・・(【2024.12.27追記】書店で確認しましたが、最新版である2025年版もそのままでした。)。
逐条テキストもなんかダラダラ書いてて読むのダルいし、読んでて面白くないし・・・となり、やっぱり予備校の授業をとるか・・・と考えなおしました。その後は、片っ端からサンプル講義を聴き、工藤北斗先生と相性がよさそうだと感じたので、アガルートの総合講義100を受講することにしました。総合講義300ではなく100にしたのは、さっさと一周したかったからです。
逐条テキストでさえ読み切れないので、もちろん択一六法も使いませんでした。
総合講義100については、クレジットカードの上限枠を10万→30万にして、6回分割払いで買った覚えがあります。学部4年生の1~3月は卒業旅行を除いて、バイトとアガルートの講義の受講をし続ける日々でした。
総合講義100だけ聴いても答案が書けないことに途中で気が付いたので、重問も利用し始めました(こちらも6回分割くらいで買いました。)。とりあえず、答案構成して答案例を見て書き方を覚えてみる、数問に一回程度答案を書いてみる、といった方法で利用して、ロー入学前に一周しました。
なお、逐条テキストはロー入学後に誰かにあげました。体系別過去問題集は、解説が簡潔で好きだったので最後まで愛用していました。
自分の予想と違って、意外と同期は入学まで特に何もしていない人が多かったです。なので、私自身はロケットスタートを切ることができました。そして、そのまま最後まで余裕をもって走り抜けられた感じです。
まあ、勉強は入学してからやればいいだろう、と考えても仕方ないと思います。
よくよく考えれば、普通の学部生なら4年生の後期が最後の楽しい時間ですし、社会人は単純に時間がないでしょうし・・・仕方ない。制度自体が罠です。
以上です。
誰かの参考になりますと幸いです。