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私のカスタマーサクセス通信簿 ver2024
皆さん、こんにちは!
元メーカー法務で、現在は契約書管理クラウドサービス(いわゆる「リーガルテック」)「Hubble」でカスタマーサクセスの担当執行役員(CCO)を務める山下俊と申します。
さて、昨日の私のnoteでは、直近のシリーズBラウンドの資金調達に絡めて、これからの当社のCS組織の向かう姿について書きました。まだ読んでない方は是非一度ご覧ください!
とはいえ、あまり具体的な話を書くことはできていなかったので、このアドベントカレンダー企画を通じて、シリーズBを迎えた企業のカスタマーサクセスの実像を是非感じて頂けたらと思います。
(本記事は、CS HACK Advent Calendar 2024の14日目の記事として、中西真生子さんの記事からバトンを受けて書いています。)
今年できたこと
①組織規模の拡大
この1年で最も大きな変化は、チームの規模が4名から8名へと倍増したことです。特に当社のような契約書管理のサービスを展開するに当たっては、ドメイン知識を持つ方(SpCSM、当社なら元法務の方)の必要性も一定程度高いのですが、今年はカスタマーサクセスの経験を持つメンバーを多く迎えることで、CS組織としての厚みを増すことができました。
その一方で、なかなか教育機会を提供できるわけではないこともあり、採用では特に、自律性の高いメンバーの採用を重視しました。自ら課題を見つけて動ける方、社内に発信できる方が揃い、後述する各種施策の推進力となりました。
②ナレッジ共有プロセスの再構築
組織の拡大に伴い、チーム内でのナレッジ共有の重要性が更に増してきました。以前からNotionを活用して情報の蓄積は行っていましたが、各顧客に対して一人以上の担当制を敷いているがゆえの課題も見えてきました。具体的には、担当するお客様とのコミュニケーションの中で得られた知見や経験を共有する機会に偏りが出てきました。
この課題に対する解決策として、直近で得たナレッジを共有するための時間(「ナレッジ共有MTG」と呼んでいます)を従来よりも高頻度に、週一で設けることにしました。ここでは、直近1週間でお客様とのやり取りから得られたインサイトを共有します。
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単なる情報共有の場ではなく、具体的な事例を抽象化し、再利用可能なナレッジとして昇華させる訓練の場としても機能しています。半ば強制的にナレッジ共有の機会を作ることで、チーム全体の知見の環流と、抽象化スキルの向上という二つの効果を実感しています。
③イネーブルメントプロセスの確立
組織の拡大に伴い、新メンバーの早期戦力化が重要課題となりました。これに対し、体系的なイネーブルメントプロセスの構築に取り組みました。
具体的には、CSMにとって重要な3つの知識(プロダクト・顧客・サクセス業務)を早期に掴んでもらうために、以下のような施策を実施しています。上記の通り、直近ではカスタマーサクセス経験者の採用が多い想定であったため、サクセス業務に関する知識の強化よりもプロダクト理解や顧客理解を補強するイネーブルメントプロセスの強化が中心になりました。
約3ヶ月にわたるオンボーディング全体のタスクとその進捗をAsanaにて可視化
最初の1ヶ月で重要な体系的なプロダクト理解を、顧客向けのArchのプロジェクトを流用して可視化
プロダクト理解の集大成としてのチャットサポート業務の経験と「模擬説明会」の実施
顧客を知るためのコンテンツを再整備
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④カスタマーセールス機能の土台作り
既存顧客からのアップセル強化という観点から、カスタマーセールス機能の確立にも着手しました。ここで「機能」と表現しているのは、まだ当社においてはカスタマーセールス「組織」がワークする手触り感が私にはなく、あくまで担当のCSMがアップセルを提案し、管理できる体制を作ることに注力しました。具体的には、案件創出から成約までのプロセスを整備し、週次での進捗管理を開始しました。
カスタマーマーケティングを担うメンバー(兼任)を任命し、CSMと施策を共有
Salesforceなどの情報をSuccesshubにつなぎこみ、アップセル・エクスパンションの可能性を可視化
Salesforceのダッシュボードとレポートで、週次で案件の進捗確認を習慣化
これからの挑戦「素敵な顧客体験」
まず、前提として、カスタマーサクセスは顧客の成功を支援し、その結果として、当社が成長するといったストーリーを考えています。Hubbleをより深く使っていただき、組織全体で契約業務の効率化を実感し、その先に継続的なHubbleの利用や売上の増加がある(NRRを最大化する)、そして顧客が成功する、そんな状態を作ることが目下の私たちの目標です。
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こうした点を踏まえて、以下のような取り組みにチャレンジしていきたいと考えています。
もう一歩進んだ顧客体験の創出
冒頭でご紹介したnoteにもある通り「素敵な顧客体験」、私たちが目指すのは、まさにそんな体験の実現です。これは単なる「寄り添い」とは少し違うものだと整理しています。具体的には、アウトプットのスピードと質、そしてこれらを支える洞察力で、プロダクトとともに顧客体験を作ることになります。こうした体験のインターフェースは、人間とAIが役割分担していくことになるでしょう。
そしてこの実現のため、以下の要素にここから注力していきます。
①組織の専門分化によるプロフェッショナル性の向上
カスタマージャーニーの各場面において、適切な顧客体験の磨き上げ方は異なります。妥協なくこの体験を追求していくためには、組織を徐々に専門分化していくことが必要になります。
例えば、カスタマーサポート、カスタマーマーケティング、カスタマーセールス、エンタープライズチームなど、いわゆる様々な役割が想定されますが、もちろん組織ありきではなく、必要性に応じて最適な形を模索しながら分化させていくことになります。
②CS Ops機能立ち上げによる効率性の追求
顧客体験の向上を実現するには、結局各CSMが割ける時間を少しでも多く確保することがポイントになります。そういった意味ではデータの整理や業務の標準化など、CS Ops機能の確立は急務です。
前述の通り、Salesforceの活用やSuccesshubでの可視化など、基盤は整いつつありますが、日々進化するプロダクトにCSのデータ活用も追随していく場合には、場当たり的ではない、一本の筋が通った機能としてのCS Opsが必要になります。
③生成AIの積極活用
もはや言うまでもないですし、AIの活用を考えていない組織も殆どないのではないかと思います。大前提として、今CSの各メンバーは当社で契約したChatGPTおよびNotion AIを活用することができる環境にあり、(ルールの範囲内で)AIを自由に活用できる状況になっています。
例えば、当社のお客様向けの活動報告である、マンスリーレポートをはじめとした記事のドラフトやメールの文案作成、各種企画の壁打ち相手としてAIを活用しています(ちなみにこの記事のドラフトはClaudeを使って作りました)。
こうした中で、まず顧客体験の改善の文脈で検討が進んでいるのが、ヘルプページと生成AIの組み合わせです。早く知りたいことを解決したいというお客様の自己解決をサポートするために、いわゆる仕様・機能に関する問い合わせをAIがヘルプページ記載の情報に基づいて前捌きするイメージです。現時点でも精度は高く、お客様に使ってもらえる可能性が高まっていることにワクワクしています。
終わりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。私たちのカスタマーサクセスチームは、まだまだ発展途上です。特に本記事を読んで頂き、自分も貢献できそうだと感じた方や興味を持って頂けた方がいたら本当に嬉しいと思っています。
私は色々なイベントにも顔を出すようにしておりますので、是非お会いした皆様とまたお話しできたら嬉しく思っています!