見出し画像

変わりゆく環境に、変わらぬ想いで ─ 素敵な顧客体験を目指して

はじめに

当社はこの度、シリーズBラウンドの資金調達(本稿公開時点で7億円の1stクローズ)を実施しました。本調達により、生成AI等の新技術への投資などプロダクトの強化を行います。

Hubbleは、プロダクトのローンチ以来、法務や事業部門といった契約に関わる方のコラボレーションに着目し、それが「メール+Microsoft Word」という形で30年変わらなかった契約業務に一筋の光を照らすものだと信じてやってきました。やや大袈裟な言い方をしたかもしれませんが、実際には現場に潜む「手触り感のある課題」の解決を大事にすることで、ファンがいるプロダクトに成長してきました。

私は、こういったHubbleの考え方に、ユーザーとして共感し、2020年に一人目のカスタマーサクセスとしてジョインしました。当時は一人だった組織は、もうすぐ10名というところまで成長し、私自身が考えることは当時と比較すると変容しました。

本稿ではカスタマーサクセス組織のトップとして、シリーズB以降の新たなステージにおける、Hubbleのカスタマーサクセスのビジョンをお伝えしたいと思います。

変容するカスタマーサクセス

いわゆる「カスタマーサクセス」は、米国発祥の比較的新しい概念で、その役割やあるべき姿は、日々議論され、進化と変化を続けています。直近では生成AI技術の台頭とSaaSバブルの終焉を背景として、カスタマーサクセスの役割は、以前よりも営業的な重みづけが強く語られるようになりました。ややタイトルが煽り気味ですが、私はよくこちらの記事を引用しています。

私が入社した頃のカスタマーサクセスのKPIは、チャーンレート(解約率)の抑制であり、いわば「守り」が重要とされていました。ただ、SaaS企業として、前年通り契約してもらうだけでは足りず、既存のお客様に対する営業機能を強化し、しっかりとカスタマーサクセスで新たな売り上げを立てていくことの重要性は、会社の成長とともに高まってきました。こうした背景から、99%を超える継続率が安定的に維持されていたこともあり、「攻め」に転じ、2024年から従来のチャーンレートに加え、本格的にNRRNet Revenue RetentionをKPIとして据えるように変化しました。

実際の現場では、過去の実績から受注率を仮置きしつつ、CSQL(既存顧客における見込み客)からどれだけ案件(商談)を作成できたかを週次の定例で確認するといった形で、オーソドックスなKPI管理を実施しています。

キーワードは「顧客のプロフェッショナル」

上記と並行して、組織の拡大も順調に進んできました。当社のカスタマーサクセスチームは、この半年で4名から8名へと倍増し、2024年度中には10名体制になる予定です。

こうした変化の中で、改めて、当社のカスタマーサクセスが目指す姿をピン留めしておいた方が良いだろうと思い、以前から頭の中にあった「CSチームが重視したい価値観」を言語化しました。いわば、変わりゆく環境の中でも、「変わらないもの」を作っておきたかったのです。

その要素は、対お客様と対社内という切り口で、以下の2つの要素から成り立ちます。

対顧客:顧客の成功のために可能な限り思考を尽くすこと

私たちにとってカスタマーサクセスと言っている以上、「顧客の成功」は全ての施策の起点でありゴールです。ここでいう成功とは、個社の成功に留まらず、既存顧客全体の成功を指します。

この成功を達成するために、各CSM(Customer Success Manager、担当者のこと)には深い顧客理解と「誰よりもその顧客のことを考え尽くしたか」が求められます。NRRを構成するアップセルなど重要KPIは、その結果としてついてくるものであると整理しています。

対社内:「顧客理解の伝道師」として社内への共有を継続して行うこと

顧客のプロフェッショナルであることは、社内に対してもコミットメントを求められます。つまり、社内の他チームに対して「顧客理解の伝道師」としての役割も担っているのです。

顧客と最も多く話し、最も深く理解する組織として、その知見を社内の様々な部門と共有し、プロダクト改善やビジネス戦略の進化を支えることがもう一つの重要な役割です。この継続的な共有活動が、当社のPurpose&Valuesの一つである「圧倒的顧客理解」を支えます。

原点回帰、何よりも「素敵な顧客体験」へ

こういったピン留めをしたものの、なかなか個別の実務においては、顧客に本当に向き合えているのか?プロフェッショナルと言えるのか?と感じる瞬間がないわけではありません。恥ずかしいことに、お客様に迷惑をかけてしまうこともありました。

しかも、来年度には更に15-20名規模への組織の拡大を計画しています。これが単なる増員施策に止まってしまうならば、間違いなく個別のCSMが提供する価値が下がることは目に見えています。

こうした懸念に予め対処したい気持ちもあり、この機会に今までの自分のnoteや各種投稿を振り返りました。そうした中で、自分がHubble入社時に書いた記事に以下のようなことが書かれていたことを見つけました。

令和の時代のリーガルテックは「効率化」の追求はしつつも、ユーザーの心を動かす体験をどれだけ提供できるかにかかっていると思います(いわゆるUXなのですが、個人的には「使いやすいなー」という感情よりももっと根源的な感情に訴えかけられると良いのだろうなと考えています)

https://note.com/one_onlegal/n/n4dde38fe66c8

あぁ、これだと思いました。(あまりよくわからずに書いていたと思うのですが)当時の自分なりにピュアな思いを書いていたのだと思います。今の自分には改めて納得感がある言葉でした。

いま、リーガルテック市場は一段と盛り上がりを見せており、Hubbleも競合と比較されることがかつてなく増えてきました。正直なところ、いわゆる契約書関連業務を効率化するクラウドサービスは、大なり小なり締結前から締結後を一気通貫で押さえるCLM(Contract Lifecycle Management)システムへ向かっていく傾向が強く、機能の差は一見すると顧客からは判別できないようになっていくと思われます。

そういった中では、プロダクトとセットになって、いかに「素敵な顧客体験」(上記ではプロダクトを意識して、UXと表現していますが、ここでは「CX」という言葉の方が適切なのでしょう)を作れるか、これが今の当社において非常に重要な差別化要素の一つになるのだと考えています。

「素敵な顧客体験」を作るために

では、どうやってこの「素敵な顧客体験」を作るのか。そのカギは組織の変革とテクノロジー活用にあると考えています。

組織の専門分化

まず、従来の「全員が同じCSMとして業務をこなす」というモデルから、より専門性を重視した体制への移行を予定しています。オーソドックスですが、例えばカスタマーサポート、カスタマーマーケティング、カスタマーセールス、エンタープライズチームなど、機能別の専門チーム制を導入し、よりプロフェッショナルがお客様を支援できる体制をとります。

具体的な体制は、現在検討中です…

生成AIありきの業務改善

リアルタイムで、生成AIの進化を目の当たりにしていると、カスタマーサクセスも業務の大半はAIが実施でき、人間がやるべきことを(努めて前向きに)見極めていくことが本当に重要だと感じます。最終的には顧客がその場その場で求める、気持ちの良い体験を、AIが提供できるのか、人でなければ提供できないのか、を基準として振り分けていくことになるということです。

そう考えると、スピードや正確性が求められるような個別の支援業務の大半は、AIが担った方が良いということになるでしょう。あくまで人間は、AIが業務を行うための大方針を定めることに注力しつつ、顧客が「人間的な支援」を求める時に価値を発揮していくことになっていくわけです。

一例ですが、日々チャットサポートに投げ込まれるHubbleの仕様に関する問い合わせの大半は、当社のヘルプページを読み込ませたGPTが正しく回答できる見通しが立ってきており、AIとの分業が進んでいく予定です。この場合、回答の指針となるヘルプページを改善することが人間の役割の多くを占めることになっていくでしょう。

Hubbleのカスタマーサクセスの面白み

ここまで書いてきたように、Hubbleのカスタマーサクセスは変わらない想いを持ちつつも、組織のありようは変わっていくタイミングにあるというのが、面白いポイントだと思います。まだまだ業務の余白も多く、入社した後に特定の分野で経験を深めることも可能です。

ちなみに、私たちのようなリーガルテック企業において、法務や法律に関するドメイン知識がないとカスタマーサクセスとして活躍できないのでは、という質問をよく受けます。確かにこういったドメイン知識があることは、私が考えるカスタマーサクセスに必要な3つの知識のうちの1つである「顧客に関する知識」が予めインプットできている点で、大きなアドバンテージとなることは間違いありません。

しかし、「素敵な顧客体験」を作るために必要なのは、必ずしもこうしたドメイン知識だけではなく、目の前の顧客が一体何を求めているかをキャッチする洞察力やプロジェクトを進める推進力だったりするという実感が私の中にはあります。実際に、多様なバックグラウンドを持つメンバーが、お客様から信頼され、現場で大きな価値を生み出しています。

最後に

ここまで色々書いてきましたが、改めてカスタマーサクセスは「顧客の成功」をゴールとしている点で非常にシンプルな一方で、その内実は(サポートとセールスのバランス、個社のニーズと全体のニーズのバランスなど)とても絶妙なバランスで成り立つ組織だと感じます。

私は、そういった悩ましい中でもタイミングごとにスタンスを取りながら進むべき方向を考えて一緒に行動できる方と一緒に働きたいと思っています。単なる「押し売り」ではなく、また単なる「寄り添い」でもない、深い顧客理解に基づいた、お客様の成功を志向するカスタマーサクセスへ、歩みを進めて行きます!


いいなと思ったら応援しよう!