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広蔵市場のカルグクス屋のお兄さん
2023年10月、韓国を旅行した。
旅行の思い出として、とある人について書き残したい。
屋台が立ち並ぶ広蔵市場のうち、有名店のひとつ「故郷カルグクス」。
調理担当のオモニと、注文取りや案内を担当するお兄さんで切り盛りしていた。
列で注文を聞かれて、席が空いたらすばやく案内。手際のよさに気後れしつつ、言われるがままに着席。周囲のお客さんの食事をちら見しながら10分ほど待つ。
ついに、注文のマンドゥカルグクスが出てきた。
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うす塩スープに透明でもちっとした熱々の麺が入っていて、上にはたっぷりの海苔が乗ってる。
熱々のスープをはふはふしながら一心に食べる。
そうして私が食事を楽しんでいる間にも、お客さんはひっきりなしに出入りして、お兄さんは案内と会計と注文に忙しない。
そんな忙しい状況にもかかわらず、案内役のお兄さんは、お会計時にお客さんと必ず一言交わしている。西洋からと思しき観光客には、英語で感想を聞いて、台湾か中国からと思しき観光客には、中国語を交えながら韓国語のあいさつを教える。
誰に対しても好意的な態度で、声は落ち着いているけれどハリがあって元気が感じられる。働きなれた市場の一画を無駄のない動きで動いて、的確な手さばきでお金を扱う。
私たちもお会計のために「ケサンジュセヨ(会計お願いします)」とお願いすると、お兄さんはさっと近寄ってきて金額を告げる。支払い、おつりを持ってきたお兄さんは「おいしかったですか」と日本語で尋ねてきた。私も拙い韓国語で「ウェクロッケイルボンマルチャレヨ?(どうしてそんなに日本語が上手なのですか)」と尋ねると、日本語で「高校で勉強しました」とまばゆい笑顔。
観光した場所、食べたものは文字や写真にしてあるから、きっと思い出せるけれど、出会った人のことは記録しないまま、心の底に沈んで記憶にはのぼらなくなってしまう。
記憶したいと思う人との出会いだった。