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マダミスのエモってさ……

はじめに

マーダーミステリーの「エモ」って言葉は一概にひとつを指すわけではないと思っています。しかし、定期的にマダミスのエモと呼ばれるものに苦言を呈す方がいるのも事実で、そのあたりを少し考えてみようかと。
とはいえ、私もこの世の全てのマダミスを知っているわけではないという前提で、浅薄な知識から紐解いていくので、ちょっと適当です。多めに見てください。
まずはマダミスのタイプをいくつか列挙していこうと思う。異論は認めます。

■全体構造タイプ分け

マダミスにはゲームの全体構造にいくつかパターンがある印象です。名称は今私が付けたものなので、一般的な呼び名ではありません。

・全体構造:王道型
「犯人がプレイヤー内に存在する」タイプ。基本中の基本。

・全体構造:協力型
「犯人がプレイヤー内に存在しない」タイプ。第三者、事故、自殺。たまにある。

・全体構造:転換型
「犯人はプレイヤー内に存在する」と思ってゲームは始まり、その真相をつきとめる。その後、全員で協力しないと解決できない問題が浮上してそれに協力して挑む。昨今の主流なタイプ。食傷気味。

・全員型
「犯人はプレイヤー内に存在する」が、全員が殺意を持って行動し、誰が止めを刺したかを探る。王道の派生、

■ゲーム要素仕組み

それ以外のゲームを構成する形式的なものを見ていきましょう。

●情報獲得方法

・情報:オープン型
ゲーム進行の過程でカードを取得。情報の出方がランダムになる事で展開が多岐に渡る。後述するがカード取得にはいくつかのパターンがある。

・情報:クローズ型
追加情報が無い、もしくは固定で与えられる。そこにランダム要素は無く情報は制作側の意図通りにプレイヤーに共有される。
※オープン、クローズは諸説ありますが、今回はこの認識で記事を書いています。

●各キャラクターの目標設定

・目標:得点型
行動の成否などにより加点され、高得点を目標としてプレイ方針を示唆。ゲームらしさを明確にする要素で、得点配分などによりそのキャラクターの優先順位なども可視化される。分かりやすいが、良いゲームのバランス調整が難しい印象。

・目標:ニュアンス型
何をしたいのか、何を秘密にしたいかなどは得点型のように記載はあるものの、得点要素が無いもの。目標の優先順位を自身で咀嚼し、理解しての行動が必要となる。

・目標:無形型
目標などの設定がないもの。たまにあるが、ハンドアウトなどからキャラクターの行動理念を読み解き、違和感のないように考えなければならない。プレイ難易度は高く感じる。

●カード取得情報

・カード取得方法:トークン型
フェイズごとに与えられるトークンを消費して任意のカードを取得。たいてい議論と並行してシームレスに行われる。
細分化として、自身に関係するものの取得の可否、同じ山札から取得の可否などゲームごとに異なる。

・カード取得方法:フェイズ型
決められたタイミングでカードを順に取得していく。順番は元から決められていたり、ダイスによる行動順に基づいたり。
不公平感緩和のためにカタン方式が取られることもしばしば。

他にも、オフライン、オンライン、公演型、パッケージ型、GMありなし、投票、全体議論・密談、カードの扱い、嘘、立体物による仕掛け、オンライン盤面による仕掛け、テキストチャット、エンディング分岐、個別エンド、自由演技など……ゲームとしての細分化はできますし、ゲームごとに趣向が凝らされています。これらを取捨選択し組み合わせられて、マーダーミステリーはできていると思います。

ちなみに、ここで「マーダーミステリーなのか論」を語るつもりはありません。私としては、自分の中で決めたいくつかの要素を抑えている作品が、マーダーミステリーとして好きではあります。かといって、必ずしもその要件を満たしていないといけないとも思ってはいません。
あとはマダミスじゃない、別ジャンルを、という意見について思うことは、純然たる定義(これとこれを満たしたらマダミス、そうでなければ違う)というのがあってから話す議題だと思うんですよね。私はそこが人によって統一されていないからこそ、面白ければ何でもありになっているんだと思います。偉い人が決めてくれたら、それに従うけどなぁ。

■エモについて考える

さて本題。エモという要素を考えてみます。
色々とゲーム形式を挙げてはみたのですが、そこに「エモ」というものが無いと思っているんです。具体的に「エモ」というものを言語化することが難しくないですか? ということです。一般的に皆さんどう思っているか、それを知りたいですね。
ちなみに自分の中でのエモってのは、エモーショナルなわけで「感情が揺さぶられる要素がある」こと、と考えています。これまでにも様々な感情の起伏を自分は体験してきました(もちろんそうではない作品もたくさんあります)。プレイ中、またエンディング中に涙腺が崩壊する事なんてザラではあります(笑)。物語体験として、嬉しいことも悲しいことも涙を誘う場面に直面してきました。でもエモはその限りではないと思っています。マーダーミステリーは複数の要素が絡み合った総合芸術的なゲームです。良いお話だから心が揺さぶられる以外にもたくさんの場面を直面してきました。
皆さんも思い出してください。

物語をひとりの登場人物として体験している高揚感
真相を究明していく中で矛盾を見つけた際に高まる体温
秘匿している情報を交換する罪悪感
自分の投票が正しかったかどうかを待つドキドキ感
プレイ後の物語の余韻が後日、現実世界でも尾を引くこと

などなど。どうですかね、皆さんも胸が高鳴りワクワクする体験ってしてないんですかね……?
このように感情を揺さぶるたくさんの場面は枝葉のように分かれており、それを自分がキャッチした時に心は動きます。もちろん私はそうなわけで、他の人が一緒とは思っていませんし、それぞれが異なるアンテナで、色々な感情の起伏を体験しているのだと思っています。つまり、「エモ=面白い体験」といっても過言ではないくらいの誉め言葉なんですよね、私としては。

■「エモ=ストーリーが良い」なの?

さて一般的には、どちらかというとエモを↑のように捉えている人も多くいると思います。
「エモ寄り」という言葉を紐解くと「推理要素が弱くストーリー体験要素が強い」という趣旨の意見なのかな、と。つまり「推理ゲームを期待していたが、選択肢の少ない読み物を体験させられた」となるわけで、たいへん理解ができます。それが必然的に多くなっている現状というのは、確かに実感できる部分もありますし、それをよくない潮流だという意見が出てくるのも文句はありません。
理想としては、推理ゲームとして面白味があり、物語としても読みごたえ(体験し感動を味わえる)があるのが良いです。要はその、推理要素と物語要素のバランスなわけですよ。どちらかに特化することもできるし、どちらも高水準で制作するということもできます。もちろん成立させるには難しいでしょうし、特化型を作る場合に推理重視よりも物語重視の方が作りやすい人たちが多いということが、現在の状況を作り出してはいそうですね。統計取ってないので実際は分かりません。

この現状に警笛を鳴らすのは良いことだと思います。自分たちが楽しむためのエンタメを守っていく、より良いものにしていくというのは大切なことです。かといってネタバレ厳禁のブラックボックスな業態のため、やや足取りは重いです。ただ、個人的な提案として批判を恐れずにいうのであれば、下記を実践していくことが良いのではないかな、と。

・気に入った作者でゲームを選定する
マダミスは作者による特色が色濃く出るゲーム形式です。
自分が面白いと思っても他の反応が悪いなんてこともよくある話です。ただ、面白いと思えるものに出会えたのであれば、その作者さんの過去作や新作を遊ぶことで、ある一定の満足度を得られるのではないでしょうか。

・面白かった作品を喧伝する
ブラックボックスな業態ではあるため口コミの力はかなりあると思っています。面白いもの、マダミスとしてみんなに遊んでほしいと思う者は積極的に紹介していきましょう。
・同じ趣味の友人を見つける
何度も一緒に遊んで行く仲であれば、趣味嗜好は自ずと分かってきたりします。そういった似た感性を持つ友人を作りましょう。そういった友人が先行してプレイした作品の中から、相性の良さそうな作品をお勧めしてもらうのです。よりハズレを引く確率を抑えられるでしょう。

自然と、良い作品は噂や話題になってしっかりと遊ばれている印象です(差ゲーム要素以外のプロモーションといった要素も絡んできますね)。ただ、良いものは良いということで地味でも良い作品を広めていくことで、より健全な作品が多くなっていくことを願っています。自分は棚に上げてますが、長々とお読みいただきありがとうございました(笑)

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