トレンド分析を浅くしてみた
マダミーティングというイベントに参加させて頂き、討論会の「マーダーミステリー商標他、起こり得る問題」「マーダーミステリーの定義と今後のトレンド」という2つテーマで登壇させて頂きました。詳しくはアーカイブ配信がございますので、ご覧ください(3月1日まで視聴可能)。
https://select-type.com/ev/?ev=YfvntRrKOew
自分はそこそこニコニコしてお茶を濁していただけですが、同席した有識者の皆さまの発言や突然のトラブル、……また、様々な公演と討論会で見どころしかない状況です。価格はそこそこするかもしれませんが、その価値はあるはずです。
さて、今回は昨年の作品傾向から流行りそうなトレンド分析というのをしてみようと、前日に色々考えてみました。
■私が好きなマーダーミステリーベスト10から考察
下記の資料を参考にしました。
上位作品から傾向と対策を検討する、ということも考えましたが。あくまでオールタイムベストということで、昔から根強いに気がある作品などあるため、そこから昨今のトレンド、および今後のトレンドを予想するのが難しいと判断し、この資料からさらに別の見方をしてみようと考えていました。オールタイムベストのこのアンケート結果から、上位100位までを抜き出し、さらにリリース日が2023年に限定してみます。すると下記のようになりました。(漏れあったらごめんなさい;;)
ここで注目して頂きたいのは、「傾向」の列です。こちらは事前情報から判断できる分類をしてみたものです。「読み上げ/読み合わせ多め」という作品は、実際のところ、他のカテゴライズされている作品にも言え、総じてプレイ時間が長いことから全体的に読み込みや読み合わせが多い作品の方が好まれる傾向はあります。ただ、これは全体的な傾向となります。
今回、私が注目したのは「8人ペアマダミス」が多くランクインしている、という点です。つまり「8人用のペアマーダーミステリー」が2023年の作品の傾向として一定の認知を受けている、ということです。
その理由を紐解いていこうと思います。
■【8人ペアマダミス】について
●メンバーの継続性
「遊び様の統一によるトレンドの可能性」という分析です。
2人×4ペア8人というのは集めるのは大変ですが、ペアが4つ集まればそれで遊べると考えたら簡単だと思いませんか? この点に関しては、それ以前に2人用作品がある程度定着したことから、その流れを拡張することで組み込みやすい流れな気がします。
さて、そうして集まった8人でペアマーダーミステリーを遊んだとします。集めるのに苦心しそうだな、という8人用。他にもいくつか気になる作品があるとします。すると……同じペアたちで一緒に遊べば、メンバーを集める苦労がかなり軽減するわけです。もちろん、日程の都合などもあると思いますので、3ペアのみはそのまま、1ペアは違うペアを募集、というようなこともあるかもしれません。それでもある程度集めてしまえば、その後の他の作品を遊んでいくことはそこまで大変ではなくなります。
また、ある程度制作側でも戦略的に考えているのであれば、プレイヤーが遊ぶ環境を考察すれば「ペアマダミス=8人」というある程度の定番で作品を提供していくという方式が生み出されていくわけです。結果、いくつかの8人用作品は2023年にリリースされたばかりなのにも関わらず、オールタイムベストというこのアンケートの中でも、多くの票を集めることに成功したのではないか、と踏んでおります。
●今後の方向性
もちろん今年から始まった形式ではありません。以前から8人ペアマーダーミステリーという形式はいくつか展開がされていました。
2021年にリリースされたパッケージ『カルネアデスの陰影』(https://booth.pm/ja/items/2886772)やNAGAKUTSU梅田店を拠点とする『LH2 命の歯』(https://ibarayugi.wixsite.com/iraba/lh2)や『オーギュリー ~煙と歯車~』(https://sogabe7.wixsite.com/augurey)なども。こちらは、部屋自体をスチームパンク世界に改造して「没入型」との複合型ですね。こういった先例の流れを受けて、オンラインを中心に定着しだしたのかと思います。
さて、このまま同じように「8人用のペアマーダーミステリー』が作られていくかどうかというと、わかりません。
私は、形を変えた組み合わせの作品がもう少し頭角を現してくのではいか、と期待しています。
たとえば、さくべえさんとの共作『あなたの原罪』(https://tanteicamp.experiful.com/anatanogenzai)は2人×3組で最初に物語を始め、途中で合流して6人用のマーダーミステリーとなる構造となっています。2ペアを3組集めることでメンバーを揃えられると考えると、集める人数が8人用よりも少ないわけだから容易のはず。この方式で2、3作品ほど注目を浴びるようなクオリティの高い作品が増えれば「同じメンバーで遊ぼう」が発動するため、新しい流れが生まれるかもしれません。ちなみに現在同じ方式の新作をさくべえさんと準備中です。制作者の方がいらっしゃいましたら、ぜひ同じような形式で作ってみて下さい。良い流れを作りましょぅ(地味に『愛する故に』(https://booth.pm/ja/items/4719433)は近い気がしています)。
他にも、ジョルディーノさんの『アンショット~リビドールの鎮魂歌~』(https://joldeeno.com/murdermystery/unshot.html)のように3人3組計9人のパターンや、オンライン作品の『英国探偵とウォルターの遺産』(https://booth.pm/ja/items/4077542)の6人用(1名は探偵白確あり)など、シナリオやギミックというよりも、プレイヤーが遊ぶ際のグルーピングされることがトレンドとしての一つのポイントになる可能性、というのが考えられます。
■【推理重視】【物語体験重視】について
「ヒット作後の同ジャンル派生の可能性」という分析です。
2023年のトピックとしては、週末倶楽部さんがリリースした協力型マーダーミステリー『Lost/Remembrance』(https://x.com/weekend_club_/status/1704072750598648015?s=20)と、とんとんさんがリリースした複数人数ストーリープレイング『天使は花明かりの下で』(https://twitter.com/mtmr000/status/1675082263590244352?s=20)の2作が挙げられます。どちらも違う方面で評価を受け、2024年の今現在でも人気の作品となっています。
『Lost/Remembrance』は推理重視の代表格として、『天使は花明かりの下で』は物語代表格として考えられます。
推理重視としては、MATH-GAMEさんが制作した『5DIVE』も少し前の作品で厳密にはマーダーミステリーとは言いませんが、注目を集めていますので、推理重視という部分では注目を集めているのは事実です。今後も、MATH-GAMEさんが制作した『やがて終葬の夜』やリンさんが制作した『霧に眠るは幾つの罪』という作品が控えていて、私はどちらもテストプレイさせて頂きましたが、確実に推理好きを虜にできるクオリティでした。
複数人ストーリープレイングに関しては『天使は花明かりの下で』のヒットにより、これまで2人用が主軸だったストーリープレイングの作品群に大きな衝撃を与えたと思います(これまでも複数人ストプレは存在していましたが、主流ではありませんでした)。この作品が出たことをきっかけに同系統の作品が出てくるのではないと気にしています。
どちらの可能性もあくまで憶測ですが、ヒット作が出るとそのテイストの作品が増えていく(かつてドラゴンクエストのヒットにより、似た形式のRPGが数多生み出されたように)のは想像できます。今年はこの2ジャンルの可能性が予想され、その中で珠玉の作品が生み出されることを期待しています。
■往年のヒット作の掘り起こし
「新規顧客の流入による影響」という分析です。
これは過去の分析とは関係なく、希望的観測ですが、今年の大きなトピックとしては新規マーダーミステリー制作会社として「これからミステリー」が動き出しました。ヒカル・飯田というインフルエンサーが設立された新規会社で、自身のファンなどに向けた動画戦略でこれまでにマーダーミステリーに触れていない新規顧客が増える可能性を秘めています。そうした場合に、新作ではなく定番的な作品から遊ばれると思います。
公演型
ランドルフ・ローレンスの追憶
遠き明日への子守唄
シュレーディンガーの密室
オンライン
エイダ
鬼哭館の殺人事件(パッケージ/オンライン)
パッケージ
九竜頭館の殺人
何度だって青い月に火を灯した
ざっと挙げましたのは、イベントで話そうと思ってたタイトルです。単純にマダミスベスト10や毎月マダアンの上位作品が遊ばれるかもしれません。新規顧客にはぜひ良い名作を遊んで頂き、この世界の楽しさを知って頂きたいと願っています。すでに既存ユーザーであるこの記事を読んでいる皆さま、ぜひ新規ユーザーと出会った時には、こういったある程度安定した定番と思える作品をおススメしてみてください!
■まとめ
「遊び様の統一によるトレンドの可能性」
「ヒット作後の同ジャンル派生の可能性」
「新規顧客の流入による影響」
そこそこありきたりな話ではありますが、一応こういうったことを話そうと考えておりました。その回の「マーダーミステリーの定義」に時間がかかったので、あまり掘り下げることができませんでしたので、ここにちょっとメモ的に記させて頂きました。イベント自体は、講義、討論会(自分としてはちょっとうまく討論できず……スイマセン)と、盛りだくさんで身の詰まった内容となっていますので、ご興味がありましたら、ご覧ください。
ながながと書いてきましたが……とはいえ2023年の新作の中ではオンライン作品の『エンドロールは流れない』(https://booth.pm/ja/items/4478359)と『ふわふわクリームさらにジューシー』(https://booth.pm/ja/items/4358468)が抜けて人気を集めています。この2作に関しては、ジャンルを超えたパワーとクオリティがあります。つまり、傾向と対策ということは気にせず、面白いものを作って頂ければ、それに応じた反応があるんじゃないかな、というのが本音ですね。この2作品に言えることは「少人数」「長時間」「読み合わせ多め」という共通項がありますが、だからといってヒットするとは限りませんよね。どちらも面白い作品だと思いますので、未プレイの方はぜひ遊んでみた下さい。
以上