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ドイツ憲法裁判所、600億ユーロの財源転用を違憲と判断 財政運営が一段と厳格化
ドイツ連邦憲法裁判所は10日、政府が新型コロナウイルス対策のために確保していた未使用の600億ユーロ(約9.6兆円)を気候変動対策および経済転換基金(KTF)に再配分する決定について違憲との判断を下した。
この判決により、オラフ・ショルツ政権の財政運営は一段と厳格化され、環境政策や経済成長戦略の推進に影響を及ぼす可能性がある。
裁判所は、政府の措置が「予算規律の原則」に違反すると指摘した。
ドイツでは憲法上「債務ブレーキ(Schuldenbremse)」と呼ばれる規定があり、緊急時の借り入れは当初の目的に厳格に結び付けられるべきだとされている。
しかし、政府はこの規定を回避する形で、コロナ対策資金を気候変動関連の投資に転用しようとしていた。
この裁定は、野党・キリスト教民主同盟(CDU)が提起した訴訟を受けたものであり、今後の財政政策に広範な影響を及ぼすと考えられる。
特に、政府が計画していた再生可能エネルギーの推進や産業補助金の一部が見直される可能性が高い。
クリスティアン・リントナー財務相は「裁判所の決定を尊重し、代替の資金調達手段を検討する」と述べたが、経済学者の間では、エネルギー転換や産業競争力強化の取り組みに遅れが生じるとの懸念も出ている。
市場関係者の間では、今回の判決が投資家心理に与える影響が注視されている。ドイツ経済の成長見通しがすでに鈍化する中、政府は財政規律を維持しつつ、長期的な戦略目標をどのように進めるか、難しい判断を迫られることになりそうだ。