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フロリダのオレンジ産業が直面する二重の危機:気候変動と貿易政策

フロリダ州のオレンジ産業が気候変動と貿易政策の影響を受け、大きな打撃を受けている。

気候変動の影響として、フロリダの気温上昇、干ばつ、そして強力なハリケーンの増加がオレンジの生産環境を悪化させている。特に「黄龍病(HLB、シトラスグリーニング病)」の拡大が深刻な問題であり、感染した木は実が小さくなり収穫量が減少する。この病気は温暖な環境で広がりやすく、フロリダの柑橘類生産に壊滅的な影響を及ぼしている。

さらに、2022年のハリケーン・イアンをはじめとする大型ハリケーンが果樹をなぎ倒し、畑を浸水させる被害をもたらした。これらの要因により、フロリダのオレンジ生産量は2000年代初頭と比べ75%以上減少し、過去数十年で最低水準に落ち込んでいる。

一方、トランプ政権の貿易政策もフロリダのオレンジ産業に逆風となった。中国との貿易戦争の一環として、中国政府は米国産柑橘類に25%の報復関税を課し、フロリダ産オレンジの対中輸出競争力が低下。特に、成長が期待されていたフロリダ産オレンジジュースの輸出が大幅に減少した。さらに、鉄鋼・アルミニウムへの関税措置により、農業用の灌漑システムや貯蔵設備のコストが上昇し、生産者の経済的負担が増している。加えて、ブラジルやメキシコといった主要な柑橘ジュース輸出国がこれらの貿易制限を受けていないため、国際市場での競争がますます厳しくなっている。

こうした環境的・経済的な課題を背景に、フロリダの柑橘産業は縮小傾向にある。耐性の高い作物への転換を進める農家も増え、不動産開発のために土地を売却する動きも目立つ。政府による支援策として、ハリケーン被害からの復興支援や耐病性品種の研究が進められているものの、産業の長期的な存続には気候変動への適応と貿易政策の見直しが不可欠だ。

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