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米司法省、NY市長アダムス氏の汚職容疑を取り下げ トランプ政権の移民対策支援を考慮か
米司法省は2月10日、ニューヨーク市長エリック・アダムス氏に対する汚職容疑の起訴を取り下げるよう連邦検察に指示した。アダムス氏は収賄や違法な選挙資金の受領などの容疑で起訴されていたが、司法省は今回の決定について「アダムス氏がトランプ政権の不法移民対策を支援する能力に影響を及ぼす」との懸念を示した。
アダムス氏は2024年9月、収賄、詐欺、外国からの選挙資金勧誘などの容疑で起訴された。起訴状によると、トルコ国籍の人物から政治的便宜を図る見返りとして高級旅行やその他の利益を受け取ったとされている。しかし、アダムス氏は一貫して無罪を主張し、「バイデン政権の移民政策を批判したことに対する政治的な動機による起訴だ」と反論していた。
司法省のエミル・ボーヴ代理副長官は、検察官に対し起訴を取り下げるよう指示するメモを発行。このメモでは「起訴がアダムス氏のトランプ政権の移民対策支援の役割を妨げている」との懸念が示されており、アダムス氏の法執行および移民問題への専念を阻害する可能性が指摘された。なお、今回の取り下げは「不起訴処分」とされ、将来的に再起訴される可能性も残されている。
最近、アダムス氏はトランプ政権との協力関係を深めつつある。トランプ政権が任命した国境問題担当者と会談し、特定の連邦移民執行措置を支持する姿勢を見せるなど、ニューヨーク市の従来の「聖域都市」政策からの転換を示唆する動きも見られる。このような姿勢の変化が、司法省の起訴取り下げ決定に影響を与えた可能性が指摘されている。
アダムス氏は2025年の再選を目指しており、今回の決定により法的な障害が一時的に解消された形となる。しかし、この判断は司法省の独立性に対する疑問や、法的手続きにおける政治的影響力についての議論を巻き起こしている。批評家の中には、「連邦検察の独立性が損なわれ、政治的配慮が法の執行に影響を与えたのではないか」と指摘する声もある。