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「欧州の病人」と揶揄されるドイツ経済の現状と課題

近年、ドイツ経済の低迷が続き、「欧州の病人(The Sick Man of Europe)」と呼ばれることが増えている。2023年のドイツGDP成長率はマイナス0.3%と、主要先進国の中で最低水準にとどまり、IMFは2024年もほぼゼロ成長を見込んでいる。経済低迷の背景には、エネルギー危機、産業競争力の低下、財政政策の硬直性、政治的リーダーシップの欠如など、複数の要因が重なっている。

ドイツの製造業はロシア産エネルギーの供給停止によるコスト上昇に直面し、エネルギー集約型産業(化学・自動車・金属加工など)の国際競争力が低下した。BASFやフォルクスワーゲンなどの大手企業は中国や米国への投資を拡大し、国内での生産縮小を進めている。さらに、中国市場の変化や技術革新の遅れにより、ドイツの自動車産業や機械工業の競争力も低下している。

財政面では、ドイツは「黒字均衡(Schwarze Null)」を原則としており、大規模な財政出動が難しい。高齢化による社会保障費の増大も財政の硬直性を強め、インフラやデジタル分野への投資が不足している。さらに、オラフ・ショルツ政権の支持率は30%未満に低迷し、連立政権(SPD・緑の党・FDP)の政策調整が難航している。エネルギー政策では、原発廃止後の電力不足が深刻化し、産業政策ではEVシフトをめぐる方針の不一致が見られる。また、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の台頭が政局の不安定要因となっている。

国際的には、ドイツとフランスのエネルギー政策の違いや、米中対立によるドイツ企業への影響が課題となっている。ウクライナ支援の負担も大きく、EU全体の成長を押し下げる要因となっている。

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