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トランプ大統領、連邦政府の紙ストロー廃止を指示—環境政策の大幅転換へ
2025年2月10日、ドナルド・トランプ大統領は、連邦政府機関における紙ストローの使用を禁止し、プラスチックストローの使用を推進する大統領令に署名した。これにより、バイデン前政権が進めていた使い捨てプラスチックの段階的廃止政策が覆されることになる。
トランプ大統領は、「紙ストローは機能しない。何度も使ったが、時には壊れたり、破裂したりする」と述べ、利便性の観点からプラスチックストローの使用継続を支持した。大統領令では、連邦政府機関に対し、紙ストローの購入を直ちに中止し、45日以内に全国的な紙ストロー廃止戦略を策定するよう指示している。
この政策は、バイデン政権が2022年に発表した連邦機関における使い捨てプラスチックの削減計画を覆すものだ。バイデン政権は、連邦政府の食堂やイベント、包装でのプラスチック製品の使用を2027年までに廃止し、2035年までに全ての連邦業務から排除することを目標としていた。しかし、トランプ政権はこれを「不必要な規制」として撤回し、経済的負担の軽減を優先するとしている。
環境保護団体は、この決定に強く反発している。国際環境団体オセアナ(Oceana)は、「世界的なプラスチック汚染が深刻化する中、この政策は環境に逆行するものだ」と指摘。特に海洋生態系への影響が懸念されると警鐘を鳴らしている。一方、大統領令では、紙ストローに含まれる有害化学物質「PFAS(ペル・ポリフルオロアルキル物質)」の健康リスクにも言及。プラスチックストローにはこの物質が含まれないことを理由に、環境だけでなく健康の観点からもプラスチックの使用を支持している。
プラスチック業界はこの決定を歓迎しており、業界団体「プラスチック産業協会(PLASTICS)」は、「持続可能なプラスチックの開発を進めながら、消費者の選択肢を尊重すべきだ」との声明を発表した。しかし、消費者の環境意識の高まりを受けて、多くの企業がすでに自主的にプラスチックストローを廃止しており、今回の政策変更が市場にどの程度影響を与えるかは不透明だ。
今回の大統領令は、環境規制のあり方や政府の介入の是非を巡る広範な議論を引き起こしている。プラスチック廃止を推進してきた自治体や企業の動向も注目される。