東芝ESSと中部電力、岩石蓄熱技術の商用化を目指す
東芝エネルギーシステムズ(東芝ESS)と中部電力は、岩石を利用した蓄熱技術の商用化に向けた技術開発を進めている。丸紅株式会社と共同で、東芝ESSの横浜事業所内に試験設備を設置し、本格的な実証試験を開始した。
岩石蓄熱技術は、電力を電気ヒーターで熱エネルギーに変換し、蓄熱材である岩石に蓄えるシステムである。蓄えた熱は、必要に応じて取り出し、工場での熱供給や電力への再変換が可能となる。この技術により、発電量が不安定な再生可能エネルギーの出力変動を吸収し、電力需給の調整が期待されている。
東芝ESSと中部電力、丸紅は、岩石蓄熱技術を活用した蓄エネルギーサービス事業の実現に向けた技術開発を推進している。その一環として、東芝ESSの横浜事業所に熱容量約500kWhの試験設備を設置し、実証試験を開始した。試験では、蓄熱・放熱性能やエネルギー変換効率の検証を行い、商用化に向けた課題の特定と改善を進める。
太陽光や風力発電は、天候に左右されるため出力が変動しやすい。この課題に対し、岩石蓄熱技術を活用することで、余剰電力を熱エネルギーとして蓄え、電力需要のピーク時に供給することが可能となる。これにより、再生可能エネルギーの利用拡大と電力系統の安定化に寄与することが期待されている。
岩石蓄熱技術は海外でも開発が進んでおり、ドイツのSiemens-Gamesa社は、火成岩を蓄熱材として利用する蓄熱発電システムを開発している。同社のデモプラントでは、約1,000トンの火成岩砕石を480℃まで加熱し、最大24時間の蓄熱が可能となっている。
東芝ESSと中部電力の取り組みが進めば、日本国内における蓄エネルギー技術の選択肢が増え、再生可能エネルギーの更なる普及に貢献する可能性がある。今後の実証試験の結果が、商用化への鍵を握ることになりそうだ。