見出し画像

R.NADALが超スーパースターだと思うお話。

先日の全豪オープン決勝戦はすごかった。見終わった時、久しぶりに疲労感を感じた。

私はナダルの試合を見ると思い出すことがいくつかある。

といっても彼に救われたことが2回ある。

救われた、とも勝手に思っているのだが。

1回目は彼がまだデビューしたての頃。まだノーシードだが注目の選手としてトップに上がるだろうと言われ始めた2004年US OPEN、初めて彼のラケットを張った。

試合の前日、4本のラケットを預かった。翌日の初戦だったが、一番ピークのタイミングで私たちチーム全員ひっきりなしに張り続けていた。時間も限られるので間違いや張り直しは大きなタイムロス。できるだけ避けたいのだ。

ナダルのラケットは時間がなくて翌朝午前中に張ることになった。当日の午前中はあまり時間がないのでかなり急ピッチになってしまう。それゆえに失敗は絶対に許されない。しかしトラブルはそういう時に限って突然生まれる。

最初の1本を張って終わりに近づく頃、ちょっと嫌な予感がしてきた。


どうやらこれはショートかも???


ショートというのはストリングスが足らなくなることでどうやら測り間違えてしまったようだ。縦を張り、横糸を徐々に張っていく。

そして途中予感は的中する。

足らない、しかも最後の横糸1本、、、


当然もう一回最初から張り直すのが普通だが、その当時は経験が浅く隣の仲間に相談したら1本継ぎ足せば?、というのだ。

迫る時間、、、

私はこれはしようがないから残りの3本を正確に張るために言われた通り継ぎ足して張り終えた。

なぜ、足りなくなったかはここでは言わないが残りの3本は無事に終えた。最初の1本をあらためて張り直そうと思ったが、時間がなくて結局そのまま。4本中1本が2本張り、残り3本は1本張りになってしまった。

ちなみに1本張りとは1本のストリングス(糸)を縦横連続してはること。2本張りは半分に切って縦と横をそれぞれ張る方法で、ナダルは1本張り希望していた。

画像1

これは絶対クレームが来るとビビりながら作業していた。今では全く考えられないことだが、当時は結構ひどいことが案外まかり通っていた。

しばらくして本人がラケットをピックアップしに来た。作業しながらないしんドキドキしながら横目でチラリ。

本人がラケットをチェックしている。

あーー、こりゃまずい!、と思ったら何も言わずに行ってしまった。

完全に自分の不始末だったし、本人もわかっていたはずだがクレームを言わなかった。完全に救われた。

画像2

それから半年後の2007年のマイアミオープン、そこでも私はやらかした。

ナダルはその前々年フレンチオープンで優勝し、あっという間にトップ選手になっていた。

その頃、私は彼のラケットを任されることがあった。トップ選手をやる時は今でも緊張するし気を使う。

練習用に1本張って使い切りまた戻ってきた。

するとフロントで何か話していて自分が呼ばれた。どうやらラケットの調子が合わないらしい。

本人が私に質問してきた。

「プレストレッチかけた?」

「いや、かけてないです。」

プレストレッチとはストリングスを張る前に糸を伸ばす作業。主にナチュラルガットにやることがほとんどで少し反発力を抑える効果がある。

彼が使っているストリングスはナチュラルガットではなく堅い素材のポリ系ストリングス。特殊な場合にプレストレッチをかけるが本来の性能を損なうのでまずやることはない。

私は「合わなかったか?まずいことをしたかなー」と感じてしまった。

しかし彼は意外なこと言った。

「多分気のせいだな」

私はまたしても彼に救われた。

普通なら張り直し、もしくはストリンガーを変えて欲しい言われるだろう。

でも彼は決してそれを要求しない。

文句の一つも言ってこない。

ほとんどの人が感心するほど、人間力の高い人だ!

それから2年くらい私は彼のラケットを担当させてもらったが、一度も言ってこなかった。

いつも言うのは張り上げたラケットを手にして、笑顔で「ありがとう!」と言って去る。それだけ。不思議とこちらもハッピーになる。


ちなみに彼のストリングスのテンションはどこに行っても同じテンション。クレーコートでもハードコートでも同じ。

そんな選手は彼ぐらいしかいない。


画像3






いいなと思ったら応援しよう!