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天ぷら日記④_忘れないからな
久しぶりにシフトが重なった後輩とバイトだった。
最近は新人さんの指導につきっきりで、その新人さん以外のバイト生と働くのは久しぶりだった。
いつもは通常業務+指導で働いているが、今回は通常業務に専念できるので幾ばくか気が楽だった。
後輩とは1か月とちょっとぶりなので、最近どう?とか趣味の話とか雑談に花が咲いた。
この日は警備員がやたら巡回しているので不思議に思っていたが、なんでも別のフロアに泥棒(?)が入ったらしく、物騒だねと話していた。
呑気だ。
フロアは違えど、職場で犯罪が起こったのにも関わらず、悠長に談笑しているなんて実に呑気な話だなと思った。
いつ我が身に降りかかってくるか分からない。
安定しているときほど、気は緩みやすいし、思考停止状態に陥りやすいのかもしれない。
そんな話もあったが、順調に事は運び、やはりしばらくは安定していた。
営業終了時刻まで残り15分ほどになった頃、裏で洗い物をしていたら、後輩が「来てください!」と神妙な面持ちで駆け寄ってきた。
わ、我が身か!?と思いながら向かうと、なんと店内の通路がびちゃ濡れなのだ。
何事だ、本当に。
この場からどうして水が漏れてくるのか、意味が分からなかった。
元を辿っていくと、隣店に続いている。
いや、むしろ隣店からうちの店へと続いているようだった。
とりあえず店長に電話をかけ、報告をすると、割と起こる話だったようで隣店に水漏れてますよと伝えるように言われた。
そこからはただひたすら床を拭く作業。
雑巾を絞り、バケツには油と泥の混じった汚水が溜まっていく。
地味に骨の折れる作業だった。手当でもついてくれないかななどと甘いことを考えながらやり過ごした。
閉店作業をしていると、隣店の店長(?)が詫びにきた。
にへらぁとした笑みを浮かべながら、「へへ、さーせん」と言われた。
社会人として、いや大人として、いやいやモラルある人間として、ちょっとどうなのと思った(危うくグーパンしそうになった)。
その笑みと詫び、忘れないからな。