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泡と共に生きてゆく

私は酒が好きだ。
ハイボールを好んで嗜んでいる。

酒好きの女性は今のご時世珍しくもなんともない。
私はと言えば、今宵の疲れを労い明日への活力を得る戦士達と共に肩を並べるべく赤提灯へ赴きお酒様との逢瀬を楽しむ、といった感じだ。

成人してからというもの、仲間と楽しい飲み会の時も、新しい恋が芽生えた時も、4年付き合った男に三股をかけられてメンタルが死んだ時も、飲食店勤務時に怒涛の15連勤して灰になった時だって、いつだって酒の細やかで弾ける泡はぷくぷくと表面に立ち昇っては空気になり私を愛するように包み込んでくれた。

きっと肝臓が元気な限り、これからの人生も酒は私と共に歩み人生のイベントに一花添えてくれる事だろう。

幼い頃私の父は酒豪だった。
あんな酒豪を36年間、未だかつて見たことがない。
家族を放ったらかしにし、彼は大五郎をかっ喰らい友人と麻雀卓を囲み、「口元には煙草、左手には酒、右手には麻雀牌」の人だった。

当時250円という今では到底考えられないような値段のキャビンの紫煙を燻らせ牌を可愛がるように触れ仲間と共に談笑していた。
幼いながらもその父の姿をだらしなく感じていた私はこんな大人にはなりたくないと思っていた。

が、なってしまった。

血は争えない。

到底父ほどは呑めずとも、デートや飲み会を楽しむ男女がごった返す繁華街へたった1人、愛する男との逢瀬のごとく浮き足立ってお酒様へ逢いにゆくアラフォー独身になってしまった。

父とは仲違いし疎遠だ。
正直大嫌いだ。

しかし今なら、父も私と同じように酒との1人の時間を愛し、大好きな友人を囲む大切なツールとして酒を楽しんで大人の時間を過ごしていたのだなと、悔しいけれど気持ちを汲むことが出来る。

しかしあんな大人にはなるまいと正体が分からないものと戦い、今日も私は泡と共に生きている。

1人で酒を嗜むと父の楽しそうだった姿がぼんやり浮かぶ。

これからの人生きっとそうやって酒と過ごしていくだろう。
終わった恋もこれからの恋も、悔しかった日も最高の日も泡は私を包み込んでくれる。

私は泡と共に生きてゆく。

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