名盤紹介#2 BEYOOOOONDS「BEYOOOOOND1St」(Part1)
名盤紹介の第2回目は今アイドル界で最も”アツイ!”アイドルであるBEYOOOOONDSのファーストアルバム『BEYOOOOOND1St』です。このアルバムは非常にバラエティに富んだ名作です。グループそのものもですが、音楽好きの方にはぜひ知ってほしいアルバムです。
BEYOOOOONDSとは?
BEYOOOOONDS(ビヨーンズ)はハロー!プロジェクト所属で、2019年にCDデビューしたばかりの新進気鋭のアイドルグループです。
BEYOOOOONDSは3つのグループから成り立っています。
CHICA#TETSU(一岡伶奈(リーダー)、島倉りか、西田汐里、江口紗耶)
雨ノ森 川海(高瀬くるみ(リーダー)、前田こころ、山﨑夢羽、岡村美波、清野桃々姫)
SeasoningS(平井美葉(リーダー)、小林萌花、里吉うたの)※2021年1月24日にグループ名が決まったばかりです!
アルバムにはそれぞれのユニット曲も収録されています。CHICA#TETSUはポップでかわいい系、雨ノ森 川海はクールでかっこいい系、SeasoningSは個々のスキルを活かした職人系といった特徴があり、まさにこの多様性の集合体がBEYOOOOONDSなのです。
また、BEYOOOOONDSは演劇の要素が強く、曲中にセリフのある曲が多く存在します。
アルバム『BEYOOOOOND1St』について
アイドルのアルバムってなんとなくシングル曲の寄せ集めに新曲がちょっとだけ入っているようなイメージがありました。しかしこのアルバムは既発曲6曲以外に11曲も収録されており、全17曲の超大作となっています。
全17曲というとアルバム全体を通して聴くと途中で飽きてしまいそうですが、とにかくバラエティに富んでいて、アルバムを通してのストーリーがあるので、あっという間に17曲が終わってしまうのです。
それでは全収録曲を紹介していきたいと思います。
1. OOOOOVERTURE
アルバム冒頭にありがちなOVERTUREですが、Oが5個並ぶのが遊び心があっていいですね。
2. アツイ!
いきなり”アツイ!”とにかく”アツイ!”
私がBEYOOOOONDSで最も好きな曲であり、興味を持つきっかけとなった曲です。
この曲はなんといってもサウンドがアツイ!アイドルのアルバムで初っ端が疾走系ヘヴィメタルだったことなんてきっと無いでしょう!
この曲は明らかにX JAPANを意識して作られています。長年X JAPANのファンの私が言うのだから間違いありません。冒頭のピアノ部分は「Silent Jealousy」、曲のテンポやドラムパターンといった全体の構成は「DAHLIA」、ギターリフは「DAHILIA」「SCARS」といった具合です。というか、すでにアルバムが『Jealousy』の流れそのものです。
この曲はぜひPVも見てほしいです!有名アーティストのMVのオマージュが散りばめられています。
X JAPAN、布袋寅泰、COMPLEX、吉川晃司、クイーン、フレディ・マーキュリー、イングウェイ・マルムスティーン、ドラゴンフォース、ガンズアンドローゼズ、ハロウィン、マイケル・ジャクソン等々、ファンであればついニヤリとしてしまうようなオマージュばかりです。
個人的には、2番の冒頭でX JAPANのアルバム「DAHLIA」のジャケットのオマージュをしている前田さんが好きです。
歌詞はかかってこいというような煽りや大サビ前でお客さんを盛り上げるようなセリフがあったりと、ライブでのノリを重視しているのだと思います。メンバーの見た目と曲のギャップもなかなかで、ハイスピードで疾走するヘヴィメタルに対抗するような切れのある歌声と激しいダンスで歌い上げるBEYOOOOONDSの表現力が表れている名曲です。サビの終わりで手をXにクロスする振りもきっとX JAPANを意識しているのでしょう。また、冒頭でピアノソロを弾く小林さんの音色がYOSHIKIさんの優しいピアノの音色に似てます。
BEYOOOOONDSというアイドルがただかわいいアイドルではないことを証明する1曲です。正直、この1曲だけでもアルバムを聴く価値があります。
ヘヴィメタルやハードロックが好きな人にはとにかくおすすめです。
ライブでも”アツイ!”こと間違いなしです。
3. ニッポンノD・N・A!
前曲からの流れを受けてさらにBEYOOOOONDSの疾走は続きます。
BEYOOOOONDSの1stシングル表題曲です。今度は90年代の小室サウンドを意識した1曲で、王道のアイドルの曲のようなサウンドですが、冒頭の平井さんの低音ヴォイスのラップ、そして中盤の岡村さんと前田さんのセリフパートがオリジナリティを持たせています。
歌詞は現代の日本人を自虐的に描きながらも、「このままでいいの!?」と奮起を促す、BEYOOOOONDS流の応援歌です。サビのあまり意味のない(ように思える)歌詞も疾走感を感じさせ、アクセントになっています。
4. 高輪ゲートウェイ駅ができる頃には
ここからユニット曲が続きます。まずはCHICA#TETSUです。
松任谷由実の「中央フリーウェイ」に触発されて作られたというこの曲。軽快だけどどこか切なさもあるシティポップに乗せてCHICA#TETSUの4人が恋する相手への思いをかわいく歌い上げています。
間奏で「ここで突如の一岡豆知識」として高輪ゲートウェイ駅の説明が入るのは、鉄道好きの一岡さんならではのもの。「どんな名前だって、耳に馴染んでくるものよ。」というセリフは、発表当初に賛否両論があったBEYOOOOONDSというグループ名にこそ当てはまるのではないでしょうか。
5. We Need a Name!
つい最近SeasoningSというグループ名が付きましたが、まだ名前がついていなかった3人のユニット曲。低音で男子の声のような平井さん、高音でかわいらしい声の里吉さん、その間で非常に透明感のある小林さんの3人の声の違いが特徴的です。
この曲では3人の持ち味がふんだんに生かされています。平井さんと里吉さんは間奏でそれぞれのダンススキルを披露し、2人がダンスをしていると同時に聴こえてくる小林さんのピアノソロは圧巻です。
また、アップダウンの激しいテンポや編曲、楽器隊の演奏クレジットを見る限り、どのユニット曲よりも気合を入れて作られているような気がします。
グループ名が無く”その他”と呼ばれてしまう3人が、自分たちの夢であるグループ名を妄想したり日々追い求めたりしているという歌詞ですが、2番の歌詞ではオーディションやデビューについて触れるなど、実体験を交えた歌詞がファンの涙を誘います。実際SeasoningSという(ハロプロにしては特に)おしゃれなグループ名が付いて感動したファンも多いのではないでしょうか。私は感動しました。
6.そこらのやつとは同じにされたくない
雨ノ森 川海の5人が「そこらのやつとは同じにされたくない」と一種の決意表明のように歌う1曲です。要は全ての歌詞がパンチラインということです。特に最後のサビで歌われる歌詞が好きです。
「こんなとこで諦めちゃいられない 自分で決めた道だから
そんなのんきなことは言ってられない 勝負をつけるんだ」
最高にかっこいい歌詞ですね。アップテンポでライブ映えすること間違いなしの一曲です。
7. きのこたけのこ大戦記
明示されていませんが、きのこの山とたけのこの里の争いを歌っています。きのこの山派がCHICA#TETSU、たけのこの里派が雨ノ森川海、中立派がSeasoningSとして曲が展開していくので、ある意味ユニット曲に分類されると思います。
この曲はアルバムの中でもかなりの曲者です。こんなに曲展開が目まぐるしく変わる曲はありません。クイーンのボヘミアンラプソディのようなコーラスあり、和楽器が鳴り響く邦楽あり、ギターソロのハードロックの部分あり、平井さんの低音ヴォイスが炸裂するアカペラあり、と6分を超える超大作となっています。曲を聴き終えたら一種の感動すら覚えます。
歌詞はふざけているようでとても深いです。自分の支持するものが一番だと対立してしまう人間同士の争いを通して、相手を思いやることの大切さ、多様性を認めることの大切さ、そして人間の愛について触れています。
「両者が完全に分かり合うことはないだろう
だが諸君 それが人間なのだ それが生きるということなのだ
互いの違いを認め 互いの道を歩いていく」
まさにこの歌詞のとおりだと思います。
きのこの山とたけのこの里の争いでここまで壮大な世界を描けるのは、前山田健一さん(作詞作曲編曲)が現代音楽シーンの中で天才と呼ばれる所以だと思います。
まとめ
冒頭の7曲だけでも非常にバラエティに富んでいて、しかもどの曲も名曲です。「アツイ!」からの怒涛の流れがこのアルバムがただのアルバムでないことを証明しています。
まだまだ曲はありますが、1曲1曲への思いが強く、紹介があまりに長くなってしまったので続きは次の記事に書きます。