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ドラえもんの最終回?

ドラえもんの最終回といえば

「さようならドラえもん」

であろう。
この話が収録されているのは単行本6巻である。
この6巻の表紙が登場キャラクター達が一同に、手を振っているようなものになっている。そう6巻がドラえもんの最終巻なのである。

しかし、その後
「帰ってきたドラえもん」が描かれ、連載が再スタートする。

一度終わったものは二度と終わることはない。

そう、ドラえもんはもう、終わることはないのだ。

藤子F不二雄先生が亡くなっても

大山のぶ代さんが亡くなっても

ドラえもんは永遠なのだ、次の子ども達が新しいドラえもんを求めて続いていくのだ。

それでも、ここではドラえもんの最終回について書いていこうと思う。
この物語の最終到達点とは何なのか。考えていきたい。

この物語の中心人物はのび太である。
のび太を取り巻く物語。
のび太の未来が悲惨なものであることから子孫のセワシ君がドラえもん連れてくることから物語が始まる。

つまり、ドラえもんの役割とは、のび太の未来を豊かなものにすることなのだ。

その為に、未来の道具を使ってのび太を手助けしていく。しかし、ドラえもんもまた完璧な存在ではない。うまくいったり、間違ってしまったり、紆余曲折しながら物語は進んでいく。

でも、いつか

いつの日か

ドラえもんは 未来の世界に帰ってしまう。

これは、絶対なのだ。確定なのだ。

ドラえもんがいなくなった世界

その世界をのび太は歩いていく。

これがこの物語の到達点である。

夢から覚めて現実を見つめるのか。

魔法が解けて本当の姿になるのか。

受け身であった学生から、主体性を求められる社会人になり、そのギャップに苦しむのか。

理想であったはずの職業についたのに、仕事の現実に涙するのか。

この到達点 ドラえもんがそばにいるのかいないのか

私の考える ドラえもんの最終回とは

「のび太の結婚前夜」

である。

ここからはネタバレを含む内容なので、アマプラかゲオなどでのび太の結婚前夜を見てから読んでいただきたい。



普通の未来ではのび太はしずかちゃんと結婚していない。ジャイ子と結婚する未来だった。

ちなみにジャイ子のアンちゃん(兄ちゃん)だから、ジャイアンである。

セワシ君とドラえもんはこの未来を変える為に未来からやってきた。ジャイ子と結婚しなければ、セワシ君も生まれてこないのではないかとのび太は疑問に思う。
のび太も馬鹿ではないのだ。
しかし、セワシ君はこう説明する。

行き先が決まっていれば、行く行程は重要ではない。

すこし、ゾッとする内容である。遺伝子を組み替えるような想像をしてしまう。まぁ、この話はさておき。
のび太が、しずかちゃんと結婚できるような男になるためにドラえもんが来たのだ。

のび太は本当に自分がしずかちゃんと結婚できるのか不安になる。
そこでドラえもんと未来の世界に確認しに行くのだ。


この話のすごい所は、結婚式を見せるのではなく、結婚式の前日を描いたことであろう。
これはドラえもんのタイムマシンの操作ミスで前日に行ってしまうのだが、

もしも結婚式の日に行っていたら、
ほら結婚したじゃない。と確認して物語が終わってしまう。

前日であることが重要なのだ。

大人の のび太もダメダメであまり成長したようには見えない。式前日なのに間違ってしまっていたり。財布を忘れていたり なかなかドジなのは変わっていない。

しかし、迷い猫を拾い飼い主に届けることになる。のび太 しずかちゃん ジャイアン スネ夫
が協力しててんやわんやで飼い主のいる空港へ急ぐ。
スネ夫のオープンカーが爆走するのは楽しかった。

その夜、しずかちゃんは家で家族と最後のパーティをする。ここで、しずかちゃんのパパが登場する。
しずかちゃんはマリッジブルーになっている。結婚について不安なのだ。

しかし、しずかパパは娘にこう言うのだ。

「君の判断は間違っていないよ。あの青年は人の気持ちを感じ、喜び、悲しむことのできる人間だ。それが人にとって一番大切なことだからね。」

のび太は成長していたのだ。

第三者からも認められる存在になっていたのだ。


一方、のび太たちはジャイアンの家で飲んでいる。
ジャイアンが歌おうとしたら、のび太が
「やめろ。へたくそー。」と言い
ジャイアンが
「うるせぇ。」
と言い返している。
そう、ふたりは対等なのだ。言い合える友達なのだ。
そして、のび太が帰る時、ジャイアンが玄関まで送ってきて
「今日は楽しかったぜ。昔みたいでな。」
という。

そして、のび太は歩いて帰っている途中で先生に会う。
その先生ののび太へ態度も温かい。
のび太は誰からも認められる存在になっているのだ。
ドジでダメだけど駄目ではないのである。


そしてドジなのび太は河川敷で転んでしまう。
すると、空には一面の星が。
そこで大人ののび太は一言つぶやくのだ

「ドラえもん…。」



そうなのだ。未来にはドラえもんはいないのだ。

ドラえもんが未来に帰った世界。

ドラえもんがいなくなって何年も経った世界。

のび太がドラえもんに頼らず歩いてきた世界。

到達点の向こう側。

ジャイアンの「昔みたいにで楽しかったぜ。」もジャイアンもドラえもんのことを忘れていないのだ。

でも、未来の登場人物は誰1人、ドラえもんの名前を口にしない。

そう一番、のび太がドラえもんのことを忘れていないからだ。

いない世界を今も生きているからだ。

河川敷で転んだのび太も
立ち上がって帰っていく。

夢の終わり

解ける魔法

「ドラえもん 明日 僕は 結婚するよ。」

台詞にはない言葉が聞こえてくる。

ドラえもんの最終回

成長したのび太を見て

ドラえもんがきてよかったんだと


そして、私たちも皆、ドラえもんを卒業して大人になった。

仕事に追われ。生活に追われ。年月に追われ。

何かを見失ってしまいそうになるような気がしてくる。

あの のび太だって成長できたのだ。

のび太のくせに。


今の子どもたちにはドラえもんがどのように見えているのだろう。どんな見え方でもいい。


今も ドラえもんは私の中で ふっと忘れた時に出てくる。

よし。明日もドジでダメダメな自分でやっていこうか。世界中ののび太たちよ。

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