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.vol3/「政治」をヒップホップ翻訳してみる

817:せっかくヒップホップパーティーなので沖縄のヒップホップに当てはめて翻訳します。
紫怨:ヒップホップ翻訳?
817:えーっと広辞苑では他者と共に行う営みね。権力・自治・支配とかに関わる現象。ヒップホップ翻訳、ざっくりですよ?どのクルーをレップ(代表)して、どんなレーベルに所属して、誰とフィーチャリングしていくか。
紫怨:あ〜。
817:ここに「政治」がめちゃくちゃあります。
紫怨:そうですね。レップの時点で街みたいな概念が
817:どこの街の代表として喋れるか、っていうのが政治的。つまり権力をどうするか。政策がレーベルの方向性、あるいは自治。
izumi:はいはいはい。
817:……ピンとこないでしょ?(笑)もうちょっと続けさせて。
紫怨:俺もピンとこないっす。

政治力とは


817:今はざっくりとした大枠です。次は政治力。政治の力の話です。これは広辞苑的にいうと「抵抗に逆らってでも自己の意思を通すための機会」。
izumi:機会?
817:例えば自分にとって相対する事象が起きた時に「いやいや、俺はこうしたいな」みたいな。
紫怨:あ〜なるほど。「ごちゃごちゃうるせーよ」みたいな?
817:これが力。
紫怨:なるほど。
817:男女間の話でいくと「お前女のくせに」って言った時に男性としての政治が発生している。
izumi:はい。
817:それに対して「確かに私女だし」ってなっちゃったらそこで男女間の政治が発生している。じゃ、ヒップホップに翻訳すると「ヘイター(ムカつく奴)に対しどれだけ蹴散らせるか」って話ですね。通し方としては「シージャー」っていう先輩後輩関係を使ってもいいし、話の筋をどちらが通してるかっていうのと使ってもいいし。
紫怨:新しさを周りにアピールするのもひとつですよね。
817:プロップスっていう名声・栄光とか言われている、そういうのが複雑に絡み合っていて必ずしも先輩後輩関係ではなくて、「ダサい先輩の話は聞かなくていい」っていう力も発生するわけですよね。後輩だけど売れてるから先輩より強いとか。
紫怨:俺の方が稼いでるぜ?
817:そうそうそう。ビジネスとしてどれだけ成功させるかっていうのもあるけど、大衆迎合して誰にでもわかるようなラップをした時に「ヒップホップとして筋が通っていないからダサい。あいつの言うことは聞かない」っていう様々な要因が力関係につながり、常に変遷している。
紫怨:一瞬で逆転したりしますからね。

政治空間について


817:それは何が関わってるかというと、シンプルに力が強いとかじゃなくて、どこまで人気があるかとか売れてるかとか、いろんな要因が絡み合ってどっちが強いかっていう力関係を常に決定しなくちゃいけない状況がずっと起きていて、これが政治空間って言いますね。
紫怨:政治的なやりとりが発生する状況のことを政治空間って呼ぶんですね。
817:そうそう。だから会社でもそうで、あの課長の話は何となく新入社員は聞かないとか。
紫怨:あ〜。僕がバイト先の店長にお金を貸して、全く返ってこないから親のところに怒鳴り込んで(職場における)そいつの尊敬みたいなのを全部奪ったのと一緒ですね。
817:そうですね(笑)
紫怨:返さないことわかった上でそういうことしたんですけどね(笑)
817:ま、政治ってのはすごい身近なバイト先でも発生するし、ヒップホップの人間関係の中でも常に発生しているってのをまず前提というか。政治のことわかんないってみんな言うけど、超政治的なことを嗅ぎ取ってみんな生きていて。それをより大きくして分かりづらくしていくと国会とかそういうのになっていく。それをどう嗅ぎ取って自分の考えを述べれるか、投票に行けるか、自分の権利を行使するか。大きくなればなるほど状況が見づらくなるし、ひとりの力じゃしょうがないよねみたいなことになってしまいがちだけど、スケールが大きいからちょっとわかんないぐらいにしとくのがいいのかなと。なぜならどうしてもみんなの中でコミュニケーションが発生しているから。
紫怨:ちっちゃい世界だったら「だったら俺が言ってやるぜ」みたいになる場面もあるわけで
817:だから村くらいの単位になったら「村長それおかしいっすよ」みたいな話ができるかもしれないけど、それが130万県民とかあるいは日本全体・世界全体ってなった時にどうなるかってのがむずかしくなる要因なんじゃないかなって思っていて。本当はみんな政治のこと知ってるし嗅ぎ取って普段生きているんだから。
紫怨:まぁそうっすね。
817:だからあとはそれをどこまで拡張できるかとか、どこまで当事者意識を持っていけるかってのがあればもうちょっと政治について語りやすくなってくるんじゃないかなって。
izumi:そうですね〜。

他者とともに行われる現象

817:なぜこういう話をしたかっていうと、負けちゃっときにモヤモヤしなくて済むかなって思って。なんで負けたかがちょっとわかってくるから、それが逆転のチャンスになったりとかね。例えば超男性主義だから負けたんだな、とか。
izumi:あ〜。
817:職場が超男性主義だからこういうことになってんだな、とかそういうことがわかってくると見比べれるというか。ひとつの定規になるというか。
で、もういっこ話をしておきたいのは、他者とともに行われる現象。
紫怨:他者とともに行われる現象……?
817:ひとりではなく誰かと対話するときに起こる現象が政治だねって話をしました。次はじゃあ他者と共有する場っていうのはなんだろうって話です。
紫怨:まぁ会話だったり
izumi:飲み会もですよね
817:ここで公共って呼ばれてるものが3つくらいあって。
紫怨:はいはい。
817:「公の場で」って言い方ありますよね。公の場っていうのはオフィシャルな場所。国会とか地方公務に関わることとか……警察とか消防がそうですよね。それとさっき出た村社会、みんなで使ってるコミュニティー、あとオープンで誰もがアクセスできる場所。この3つに対して情報を発信するものがメディアと呼ばれています。でかいメディアで言ったらテレビ・ラジオ・新聞・雑誌とか。もう小さくはなくて最近出てきたのがインターネットとかね。そこでももちろん政治っていうのが発生していて、会話よりも難しい複数の要素が含まれています。
紫怨:そうですね。やっぱり文字にするっていう行為はやっぱり練り込むんで、書く前にちょっと考えますよね。少しの間にもたらされる情報量ってのはすごく多いな、ってのはありますね。面倒臭いことがいっぱいあるというか……(笑)
817:だからオープンな場で書かれているから、そこに秘められている思いっていうのとその場自体が持っている政治性みたいな。どこで何を書くかっていう器自体がどういう文脈を持っているかところで変わってきますよね。
紫怨:例えばツイッターとフェイスブックじゃ書くことが違うみたいなことですか?
817:うん、持っている雰囲気が完全に違うじゃないですか。だから潔く揶揄される「インスタっぽい写真はこれ、ツイッターっぽい写真はこれ、フェイスブックはこれ」みたいなことですよね。メディア自体もそれぞれの文脈だったり雰囲気を持っていて、みんな少なからずそこに合わせた動き方をしていますよね。
izumi:文字数も違いますもんね。
817:そう。だからここで言いたいのはまた政治性の話なんですけど、人と直接やる政治性みたいなのもあれば、今でいうと同じインターネットでもそれぞれ持っている器ごとにちょっと政治性が違って、ここだとお子様の写真が優位になる。
izumi:そうですね。
817:ここだとバカっぽい写真が評価される。だから求めているものっていうのも自分が求めているものに応じて自分なりにチューニングして出せてる。
紫怨:ほぉー。でもみんなある程度やってますよねこれは。
817:まぁ、これは政治っていうよりはパブリックな器に対してどのようにアクセスしているかっていう話。これはみんな普段うまくチューニングしてできているはず。
紫怨:えーっと、じゃあみんな政治の人だったんだってことですよね。
817:そうそうそうそうそう。そう。みんな政治の人です。おめでとうございます。よーし。ここまで話せたらもう俺は大丈夫だぞ(笑)
izumi:(笑)


817:ずっとこのことを言いたくて、なんか理屈っぽく見えるし政治の話ってしづらいみたいなものあるし。
紫怨:喧嘩もあるし。よくもめるし。
izumi:もめるかな。
紫怨:共感できなかったらもめますね。
817:共感っていうか、もめるから話したくないっていうのはあるよね。
izumi:ありますね。
817:だからそれがお互い言葉として共有できていればいいんだけど、「これって男性主義的なものの見方ですよね」って言われた時に「あ、確かにそうかも」ってなればいいんだけど
紫怨:わけわかんない、なんかディスられた(否定された)ってなったら。
izumi:よりもめますよね。
817:怒ってる人と怒ってない人だったら怒ってる人が強いみたいなのもあるし、いかに複数の要素が絡み合って会話ができていてそれがいかに流動的かってことですね。


「沖縄の人/内地の人」

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