.vol3/「沖縄の人/内地の人」
817:うちの父なんかは、沖縄出身って言えなかったけど、俺は安室奈美恵とかちゅらさんのおかげで沖縄出身ということを褒められたりとか。
izumi:それは内地にいるときですか?
817:内地にいるとき。
紫怨:内地にいるとそんな感じなんですか?僕は沖縄から出たことないんで……。
817:自覚ないですか?ちゅらさん以降。
紫怨:いや〜ちょっと覚えてないですね。ちゅらさんの時は小学生だったんで。
817:あ、そっか。
紫怨:だからそういう空気を感じたことはあんまりないですね。
817:じゃあ沖縄サイコー世代以降の人ってこと?(笑)
紫怨:そうっすね。そういうことです。アクターズスクール以降ってことです。
817:やっぱり基地のイメージが強くて、親父は60歳なんだけど沖縄は負担をすごく押し付けられているところだし、人によってはすごく野蛮な人たちが住んでいるところとか、そういう偏見があったりして。立ち入り禁止のバーがあったりとかね。
紫怨:え、沖縄の人がですか。
817:うん。
紫怨:えええー。
817:東京に南灯寮っていう沖縄出身者が集まる寮があって、みんな出稼ぎに来た時に集まる場所みたいなのがあって、その近くでも沖縄出身者は立ち入り禁止みたいなとこもあって。つまり沖縄ってアメリカから返還されてすぐだし、どこか得体の知れないイメージがあった。
紫怨:言葉も何話してるかわけわかんないし。
817:そうそうそう。でもそういうのが90年代のポップカルチャーで反転したっていうことに僕はめちゃくちゃ自覚あって。両親が東京で感じたリアリティーと、僕が感じたリアリティーっていうのは全然違っていて。
紫怨:へぇ〜。
817:だから積極的に沖縄出身ですってことを言うと「いいね〜安室奈美恵、SPEED、ちゅらさん」。
izumi:でも私は逆でした。
817:あ〜。
izumi:私は内地の娘だから、まだ私が小さい時は村のアンケートとかで「県外出身者が沖縄に移住することに対して賛成ですか反対ですか」みたいなアンケートが配られたりしてました。
紫怨:え〜!
izumi:この集落は受け入れたくないとか、アパートの契約を拒否とかそういうのがあったんだけど、そういうのが少なくなってきたなって実感できたのが3.11以降。ちょっとおしゃれな内地の人が移住してきた、っていうので内地の人ってあんまりかゆくないっていうか
817:なるほど〜
紫怨:島ナイチャーコンプレックスだ。
izumi:(笑)
817:だからそこで沖縄県内でも県内出身者と県外出身者の間で…
izumi:そうですね。ありますね正直。
817:いや〜ちょっと北部の話の前に自分たちのリアリティーの話で辛くなってしまいましたね。
紫怨:僕は沖縄サイコー世代の人間なんで何も辛くないですけどね(笑)
817:なんか内地出身者はどうこうみたいな揶揄は耳にする?シオン。
紫怨:僕は別に……あーでもやっぱりノリが違うなって感じることはありますね。同じ言葉でも若干イントネーションが違ったりとか。やっぱりなんかちょっと話し方が違ったりとか。
izumi:(笑)
817:そういうことじゃなくて(笑)なんかちょっと相容れない部分みたいなのは?
紫怨:あ〜。こいつ(izumi)と話ししててなんかそういうのはあるなって感じますけどね。
817:具体的になんかある?
紫怨:具体的に?
817:どういう場面でこうなりがちみたいな。
紫怨:そういうはっきりしたのじゃないですけど、喋ってるうちになんかちょっと違うなーってのを少しずつ感じていくというか。
817:へぇーそうか。
izumi:あ、でも私の10個上くらいの世代は、ナイチャーの子供達はみんないじめられてました。ハゲになったりとか声が出なくなったりとか。
817:苛烈だね。
izumi:もうストレスでハゲになったり3年間声が出なくなっちゃう子とかもいて。
817:それはどこの話?
izumi:本部とか名護とかみんないじめられてた。
紫怨:え〜なんか憂鬱になる話だね。
izumi:やっぱりどこかで交われないっていう気持ちはずっと引きずってて、今でも「なんか交われないしもういいや」みたいなのはありますね。
817:俺もいっこあって、沖縄生まれで東京育ち、大学からまた沖縄に戻ってきたんだけど、俺がラッキーだったのは名字が「當間」なんで
izumi:あ、おめでとうございます(笑)
817:これがもし「佐藤」だったら全然違ってた。で、大学の人とは普通に話をするけど、大学出て就職してからようやく心を開いてくれる友達ができて。
izumi:へぇ〜
817:仲いい人は居たんだけど、沖縄に住むんだねってなってやっと。
紫怨:こいつ本当はこんなやつなんだってわかったってことかな。
817:ていうか今まで排除されていたことに全然気がついてなかったことがショックだった。
izumi:移住者は土地買ったらやっと、って感じはありますよね。
817:土地買ったら?(笑)
izumi:土地買ったらそこで骨を埋めるんだなみたいなね。
817:あ、経済的な話ではなくて
izumi:どうせあんたたち居なくなるんでしょ、みたいな。いじめるわけではないけど「いつ内地に帰るの?」みたいな言い方は本人が差別と思っていなくても言われることはありますね。一応「あ、こちらの方で骨を埋めさせていただこうと……」って答えてはいるんですけど。
817:あ〜なるほどね。沖縄にずっといるかどうかポリティクスがあるんだ。
izumi:そうですね。だから沖縄の名字になりたくてなりたくてしょうがなかった。
紫怨:「山城」とかになりたかった?
izumi:もう「仲宗根」とか気持ちいいよね。
会場(笑)
817:「ナカムラ」でもにんべんがあれば大丈夫とか。
izumi:うん…...
じゃあ沖縄の人って誰?
817:で、前回、前々回と出た話なんですけど、「沖縄の人/内地の人」みたいな区別・差別がすごく言われるのが辺野古・高江の現場です。
izumi:あ〜そうですね。
817:県外の人しかいないじゃん!とか
izumi:ふふふ。ありますねぇ(笑)
817:沖縄の人は1人もいないとか
紫怨:プロ市民の集まりだ、とか
817:もっかい、「じゃ、沖縄の人って誰?」って話で。県外から辺野古・高江に来る人たちは、お金をもらって反対運動に行く「プロ市民」の集まりだ、なんていうような名指しがされたり。実際に難しいのは実際現場に行くと全員が沖縄出身の人ってわけではなくて、問題にコミットしてしばらく協力して滞在してますっていう現住所が沖縄ではない人もいれば、沖縄にずっと住んでるおじいちゃんおばあちゃんもいれば、たまにしかこないけど問題としては興味があって声をはりあげることはできないが、今何が起きているのか見たいって人もいます。
紫怨:畑(農作業)の間とかにですよね。
817:そうそう。あと那覇に住んでるからとかね。なので、当事者っていう線引きはどうすればいいのか。別にどこから来ようと反対は反対で協力しているんだから、全員が当事者でしょって俺は思うし。
紫怨:まぁ日本で起きてる話ですから。
817:例えば来年から富士山のてっぺんにマンション作りますと。例えばですよ?
izumi:ほぉ
817:富士山の一部を買い取ってリゾート施設を作りますと。俺、富士山好きだからさ
izumi:はははそうなんですか
817:そうなんです。だから俺は反対運動に行くんですよ。
紫怨:そら行きますよね(笑)
817:そしたら叩かれるのかな。
紫怨:「お前お金もらってるだろ!ライバル企業の回しもんか?」とか言われるんですかね(笑)
817:いや、富士山が好きなんです!
紫怨:ま、でも、実際はそういう話ですね。
817:そうそう。「辺野古の海を守れ!」つって、「いや海が好きなんです!」っていうね。
izumi:釣りが好きだから高江に行くっていう人もいましたからね。
817:そういう問題意識もあるし、法治国家である日本でめちゃくちゃなこと起きたらいけないでしょ、っていう問題意識もあります。
紫怨:僕はそっちのタイプです。
817:プロセスとしてもっぺん富士山の話言っていいですか?嫌なやつがいいな……USJとかにしようかな。住民への説明会はしてません!特にないです。ただ、山梨県の方針としてはこれからの商業施設として頑張っていきたいと。国としてもインバウンド、海外からの旅行者を受け入れられる施設を作りたいと。クールジャパンはこれです、というわけでよろしく!
紫怨:何言ってんだって話ですよね。
817:で、当然のように住民の中から反対する人が出てきます。まずは説明会をしてくださいと。
紫怨:どういうことなんだ、ってところから話をしましょうよと。
817:どういう計画なのか、めちゃくちゃじゃないですか、って話をしたいのに工事は着々と進んで行く。で、富士山大好きな人たちがガンガン入って「これはおかしい」ってやり始める。
紫怨:はい。
817:で、そうするとネット上では「プロ市民が集まっている!」ってなるんですよ。
izumi:え
817:「USJみたいな商業施設があった方が絶対メリットがある!あんな過疎地でお金が回るならそれでいいじゃないか!」みたいな話を始めるんですよね。
紫怨:人が住んでなければ何してもいいのか、って話なんですけどね。
817:とかって考えた時に、今わざと沖縄から外した話を進めているんですけども、皆さん山梨県に行って「いや、それおかしいですよね」って話をする可能性はありますよね?
紫怨:そりゃね。プロセスがまずおかしいですもんね。
817:で、富士山好きな人ほど「そんなの許さねえ」ってなる。ってなった時にも山梨県民以外の人が反対運動に加わることに違和感を覚えるのかどうか?っていうのがあって。
紫怨:行って反対するかは置いといて、おかしいってのはみんな感じるはずなんですよね。
沖縄は見えづらい
817:で、ここで言いたいのは、富士山って東京から見えるじゃないですか。
izumi:そうですね。可視化されてますよね。
817:可視化されてるからもっと関心が高くなると思うんですよね。
紫怨:ってなった場合沖縄は……。
817:そうそうそう沖縄は見えづらい。
izumi:島ですからね。
817:だからその時にここで言っている沖縄と本土とのポリティクスの違い、政治性の違いみたいなのがすごく関わってくると思っていて、沖縄の人も内地の人を排除するくらい別物って思っていたら、向こうからしてもやっぱり同じように遠いものって風に見えちゃう。
紫怨:そうですね〜、一応ナイチャーをちょっと排除しちゃう、みたいなのはやっぱりあったりするんですよね。
817:だから沖縄は沖縄でナイチャーを排除しているからこそ、「座り込みに沖縄の人はひとりもいない」なんて言われ方をすると、断絶が起きるところがあるんじゃないかなと。高江・辺野古を考えた時に「沖縄のことは置いてけぼり」みたいな感情は県民の中であるんだろうけども、一方で「沖縄は沖縄で内地とは違う」みたいな……
izumi:なんて言えばいいんだろう。
817:ちょっと言葉にしづらいところがありますよね。
紫怨:そんなすごいナイチャーが嫌いってものがあるわけじゃないんですけど、なんなんでしょうねこれは。
817:だから人同士の差異とかそういう話じゃなくて、出身地で線を引いちゃうみたいな。そういうところがお互いに発生しちゃうとそりゃ断絶は生まれるよね
紫怨:そうですよね
izumi:次第にデマとかがしっくりきちゃうんでしょう。やっぱりそうだったかっていう。
817:っていうのがあって、簡単じゃないのはもちろんだけどそこで発生している「簡単じゃなさ」っていうのが沖縄と内地では違うってのを自分もちょっと思う。でもなんでこうなってるのかってのをちょっとずつ解きほぐしていくとトピックが見つかってきて、どういう力関係が発生しているのかっていう手掛かりができると思ってます。辺野古・高江の話をするのは難しいけど、そこで発生している「プロ市民」と名指されてしまう内地の人たちが、実際にどういうことを考えて、私たちとどういう差異があるのかってのを解きほぐしていくと、いろいろわかってくるよね。
地元ってどこまでだったらいいんだろう
817:そういうのが見えてくると必ずしも現場に行って「どうなってるかわからないし怖い」みたいなこと以外でも、那覇でも東京でも海外にいても基地問題について手掛かりになる場所を見つけて、沖縄にいたら「内地/沖縄」の力関係がやっぱりあの場でも起きている。地元かどうかっていうね。
紫怨:地元ってどこまでだったらいいんだろう。沖縄出身で内地で6年くらい過ごせば地元じゃなくなるのか、とかね。
817:ヘリが落ちて牧草地が焼けた。そうなった時に青森県民は怒ったらいけないのか。
izumi:(笑)
紫怨:そうですよね。日本国民としてね。
817:とかって考えると、自分がどれだけ問題に胸を痛めているかっていう部分をちゃんと表明できる方が健康的というか
izumi:ま、素直にね。
817:じゃあ胸痛めてるけどそれがなくならないのはどうして、っていうのが会話のヒントになるんじゃないのかなって思います。