一軒家をまるごとDIY。もとのおうちの素材を生かした、手触りのある暮らし〈105.99㎡・千葉〉|DIYという選択肢。
omusubi不動産では、DIYが可能な物件を多く取り扱っています。日頃のお問い合わせでも、よく「DIYができるお部屋を探している」というご相談をいただくのですが、なかにはDIYに興味があってもやったことがない、という方もいらっしゃいます。
実際にDIY物件を契約してくださった方が、その後どのようにお部屋作りをたのしまれているのか。この連載では、お客さまのおうちにお邪魔し、DIYのこだわりやどんなものを参考にしていたかなどをうかがっていきます。
第三回は、美術教室ほか、内装や什器などのデザイン、施工を手がける「yoca」の古谷さん・若月さんのおうちをご紹介。一軒家をまるごとDIYしたおうちは、細部にまでお二人のこだわりが行き届いていることを感じます。もともと近いエリアに住みながら、どうしてこの物件へと引っ越しを決めたのか。どのようにDIYをしていったのか。お二人に当時を振り返っていただきました。
リビング
一軒家ということでお部屋の数が多いので、まずはそれぞれのお部屋を見せていただくことに。
玄関を抜けてリビングへ入ると、目を引くのは表情のあるダイニングテーブル。実はこちら、古谷さんの造作なのだそう。
古谷さん「造作したテーブルにエイジング塗装をしています。仕事柄、塗装には慣れているのですが、仕事でできないことが家では試せるのでたのしいですね」
寝室へとつながる扉は、もともとこの家にあったものを塗装。ドアノブもついていたものをそのまま使っているのだとか。
若月さん「暗めの茶色だった扉を、ブライトベージュという色に塗装しました。全部壊して新しくして、というよりはなるべくもともとあったものを使うようにしているんです。使えそうなものはそのまま残すのが、この家に住む意味にもなるのかなと思っているので」
キッチン
リビングの奥にあるキッチンのタイルは、残っていたものをそのまま生かし、目地をグリーンに変えたのだそう。ドアの周りの壁は、タイルの色と合わせた塗料を作り、後から塗っていると言います。
古谷さん「DIYを始めてから、実はずっと終わっていないと言うか(笑)。引っ越してきたばかりのときと今とでは好みも変わるので、その都度の気分に合わせてどんどんアップデートしています」
古谷さん「キッチンのコンクリートの部分も、自分たちで流して作りました。ただ、これは結構大変でしたね。石膏ボードに食いつきが良くなるよう接着剤を塗っていたんですが、塗っているうちにシワが寄ってきて、コンクリートがべロンッて剥がれちゃって(笑)。トライアンドエラーを繰り返しながら塗り直してなんとか完成させました」
寝室
寝室は、ぱっと目を引くモスグリーンとラベンダーの配色のシーツに、絵画のようなタペストリーが。もちろんベッドもDIYです。
古谷さん「彼女がワンルームで一人暮らしをしているときに作ったシングルベッドの廃材を使い、ダブルベッドにアップグレードさせました。また引っ越しをしたときに持って行きやすいように、フレームだけ固定して、すのこは取り外しができるようにしています」
アトリエ兼ギャラリー
2階に上がり、アトリエ兼ギャラリースペースへ。すっきりと白い壁に囲まれたスタイリッシュな空間ですが、天井に漆喰を塗るときがものすごく大変だったそうで……。
若月さん「ホームセンターに行けばプラスチックなんかでできた軽い素材のコテが売られているんですが、節約のつもりでキッチンの扉か何かの廃材を使ってたんです。それが、筋トレかってくらい重たくて大変でした……(笑)。なんでもDIYしようとせず、場面に応じて買った方がいいなと反省しましたね」
また、こちらのお部屋では作品の展示を想定し、手を加えた箇所が。
古谷さん「通常の壁は石膏ボードに壁紙が貼ってあるんですが、作品を吊り下げようとすると重量に耐えきれない場合があるので、1cm程度の板をはさみ、その上に漆喰を塗っています」
工作室
お隣には、深緑の壁と工具に囲まれた工作室が。
古谷さん「工作室は、右にあるグレーの棚以外はほとんどDIYかリメイクしています。工具や塗料など物が多いので、他の部屋みたいにシンプルでスッキリしたイメージというよりは、大人のこども部屋みたいなイメージでワクワクするスペースにできたらいいなと思ってつくりました。今はもう隠れてしまっていますが、壁4面にグリーンとグレーをムラ塗りして、有機的な模様をつけました。その時は友だちを呼んで3人でかっこいい模様を探りながらワイワイ塗ったのがいい思い出です」
踊り場
古谷さん「購入したタイルを貼って、周りは同じ色の塗料を作って塗装しました。タイルの色って複雑なので、そっくり真似できたらいい感じになるんじゃないかなと。タイルに近い色を作る時間も、パズルみたいで面白かったです」
玄関 / 階段
玄関の壁色は、サックスブルーで統一。部屋ごとに違った色で塗装することにより、スペースごとの雰囲気を変えることができます。おふたりに一番大変だったことを尋ねると、この壁の施工だったと話していました。
若月さん「実はここ、3回塗り直しているんです(笑)。節約のためにホームセンターで売っている使い勝手のいい漆喰ではなくて業者さん用のものを買ったら、混ぜるのにコツが必要でダマになってしまって。さらに、漆喰は二度塗りが基本なんですが、一度塗り終えたらムラがバーって広がって……」
古谷さん「それがいい感じのムラではなかったので、もう一回塗ったんですよ。結局3回目でようやくきれいに塗れて『終わった〜!』と安心していたんですが、数日後、僕が足元にあった塗料の缶を間違えて蹴飛ばしてしまい……(笑)。もう一回塗り直したんですが、そのときは相当へこみましたね」
2階へ上がる階段の壁は、リビングや寝室とは違った凹凸のある仕上がりになっています。
古谷さん「ここは漆喰じゃなく、パテにベージュ系の塗装でわざと色ムラを出して、抵抗感を強めています。ちょっと暗いところに白っぽい塗装を重ねて、凹凸が目立つようにしました」
壁だけでなく、階段にもこだわりが。
古谷さん「階段にはもともとあった階段に板を貼り、柿渋の染料を塗っています。柿渋は自然の染料なので、日が当たると赤くなって経年変化がたのしめるんです」
それぞれのお部屋を見せていただくことで、色と素材それぞれの特性をたのしみながらDIYをされていたことが伝わってきました。
もとのおうちを生かしながら、手触りのある素材でDIYする
後半は、古谷さんと若月さんがDIYできる一軒家へと引っ越しを決めた経緯や、おふたりの「yoca」のご活動について、またDIYをたのしむためのアドバイスについてうかがいました。
――以前のお住まいから、どのような経緯でこちらへ引っ越すことに決めたのでしょうか。
古谷さん:コロナが流行し始めてから、根を生やしてできそうなことをなにかやりたいね、と彼女と話していて、「絵画教室だったらワークショップができるんじゃないか」「そしたら自分の制作場所も欲しいよね」となり、用途ごとに部屋を分けられ、かつDIYできる物件を探すようになりました。その中で、ネットで検索していたらomusubi不動産さんが出しているこの物件を見つけて。自分たちの条件にぴったりで、すぐに内見を申し込みましたね。
若月さん:物件ももちろん素敵だったんですが、One Tableや物件の周辺を市川さんに見せていただいて、「こんなに人柄がいい不動産屋さんっているんだ」って、びっくりしました(笑)。
――おふたりの「yoca」のご活動についてもぜひ教えてください。
古谷さん:「yoca」はいわゆる二人のユニット名のようなもので、yocaとしては絵画教室だけでなく、什器などのデザイン、施工の仕事も手がけています。絵画教室は今後ワークショップ形式でその都度参加してもらうスタイルで実施していこうと考えています。
――「yoca」の名前の意味についてもぜひ教えてください。
若月さん:「yoca」は、ここへ来てくれた人と一緒に「余暇」をたのしむ場所でありたいなと思ってつけたんです。絵を描くことって「見ること」でもあるんですね。目の前にグラスがあったとして、デッサンしようとすると、「透けたときにどんな屈折が起こるんだろう」とか「水が垂れてきてどんな水滴なんだろう」とか、いろんなものを見て考えることに繋がっていきます。作品作りを通じて自分の想像を膨らませたり、考えを広げることのたのしさを、この場で共有できたらうれしいなと思っていますね。
――おふたりとも美大ご出身ということで、日頃からものづくりに触れていらっしゃると思いますが、DIYはどのように分担されていましたか?
古谷さん:大きいものを作るのは僕で、最後の細かい仕上げの作業は彼女がやってくれていました。それぞれの特性を生かして分担していましたね。
――得意な分野がそれぞれあるのはいいですね! DIYする上で特にこだわったのはどの部分でしょうか。
若月さん:アート作品を制作をしていると、ゴミが出ることがあるんですが、生み出すためにロスが出ることに、お互い違和感を抱いていたんです。なので、DIYするときもなるべくもともとあったものを生かすために、家のデザインを事前に決めるのではなく、実際に家を見てから変えていきました。また、私は大学時代、工芸科で木材や陶器などさまざまな素材に触れてきたので、素材への愛着が結構あって。コンクリートのように扱いづらいものもあるんですが、せっかくやるなら作り物よりも「生のもの」を使いたいと思い、素材選びにはこだわりました。
――キッチンにあるうつわやカップもいろんな素材のものが並んでいましたね。
若月さん:うつわはほとんど作家さん1点ものの作品なんです。実家では既製品のうつわでごはんを食べるのが当たり前だったのが、工芸科に所属してから作家の友だちの作品でごはんを食べるようになりました。そしたら、食事も好きになるし、作ることもたのしくなって。作品が日常の中にあると、生活の豊かさや幸福感が広がるなと感じます。
古谷さん:僕は彫刻科出身なので、工芸品や日常に近い美術はあまり触れてこなかったんですが、彼女と一緒に住むようになって、誰が作ったか顔が浮かぶうつわの良さを知りました。色もひとつひとつ違うし、「この料理を乗せるのはどのうつわがいいかな」と考えるのもたのしいです。
――おふたりのお部屋を拝見して、お話されていた素材へのこだわりはもちろん、色の使い方も素敵だなと感じました。「ものを変える」のではなく、「色を変える」選択肢があったんだなと。
古谷さん:コロナ禍のように家にいる時間が長いときって、意識していなくても意外と空間に感情が左右されていたりすると思うんですよ。「なんかあそこの色違うな」とか、「この壁紙ちょっと自分の好みじゃないな」とか。逆に、お気に入りが生活の近くにあると、ぐんと居心地がよくなるんですよね。既製品でも形が気に入っていて色が違うなと思えば塗り替えるだけで心持ちが変わる。既製品の棚や椅子の一部を塗ってみるところから始めると、お金をかけすぎずに雰囲気を変えることができるし、きっとDIYすることがたのしくなってくると思いますよ。
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