卒業生 やっさん|メンバーに聞いてみた
omusubi不動産の紹介をすると「いろいろなバックグラウンドの人が働いていて面白いですね」と言っていただくことがよくあります。きっかけはそれぞれ違うけれど、「omusubi不動産」という会社に集い、同じ方向を目指して日々精進しています。
omusubi不動産の一番の魅力は、一緒に働いているひとりひとり。どんな人が、どんなことをしているのか。どうやってomusubi不動産にたどりつき、一見、ちょっと変わった不動産屋で働いてみようと思ったのか。この連載では、omusubi不動産の日常の様子を覗きながら、なかで働くスタッフに話を聞いていきます。
いつでもどこでも行ける、仕事の相棒
――9月でomusubiを卒業されるやっさんですが、卒業生として今回はインタビューに出てくださりありがとうございます! 恒例の「自分を表すもの」をご紹介いただきたいのですが、奥の事務所に取りに行かれますか?
やっさん:いえ、自分を表すものはこれなんですけど……(足元をもぞもぞさせながら)。
――あっ、靴だったんですね!
やっさん:そうなんです。仕事で空き家を調査することが多かったので、
いつでも生い茂った雑草の中だろうと、朽ちかけたゴミ屋敷のような中だろうと入っていけるように、いつもスニーカーを履いていました。あと、不動産業をしていると車の運転が必要とされる機会がよくあるのですが、わたしはペーパードライバーで……。運転できない分、自分の足でどこにでも行けるようにしていた、という意味合いもあって、自分を象徴するのはこれだな、と思って選びました。
――たしかに物件を見に行く際に車の方が行きやすいところもありそうです。お仕事としてはどんなことをしていたんでしょうか。
やっさん:3年在籍している間に担当していることが徐々に入れ替わっていったんですが、いちばん最初は賃貸管理をしていました。宅建士の資格を持っていたのと、賃貸契約書も前の会社でひと通りやってきていたので、賃貸の契約や管理、更新の手続きなどですね。徐々にomusubi不動産も売買に力を入れるようになったので、前職の経験を生かしてリノベーションにかかわるところをフォローしたり、工務店さんとやりとりしたり、見積もりをとったり、ということもしていました。
――ふむふむ。
やっさん:空き家の活用のご相談もお受けしていました。オーナーさんから「こういう空き家持ってるんだけどどうしたらいいかしら」と相談していただいた物件を見に行って「ここを工事して、こういう使い方しませんか?」と提案したり。途中からは不動産企画みたいなところでやらせてもらってましたね。他にも、管理物件の家賃の入出金管理等、賃貸関連のお金周りのことをずっとやっていました。
「作る料理」としての、タイ料理の面白さ
――やっさんは、月に一回、隠居屋で「まがりなりにもタイ食堂」として出店されていましたよね。本格的なタイ料理が食べられるということで、ファンの方も多いと思うのですが、タイ料理をつくりはじめたきっかけは何だったのでしょうか。
やっさん:実は、食べる料理としては、和食がいちばん好きなんですよ(笑)。タイ料理は作る対象として好きなんです。
――ええっ、そうだったんですか!(笑)
やっさん:社会人になって最初は公務員として働いていたのですが、そこからの転職を決めたとき、退職から二社目入社までの間には3ヶ月間くらい仕事をせずにふらふらする期間を作ろうと決めていました。そして、転職を決めてから退職するまでの期間は、自分の興味があることをとにかく色々やってみたんです。そのひとつに、四国の山奥で農業体験をするワークショップがあったのですが、参加者の一人にタイに在住している日本の方がいて。その方に「仕事やめて3ヶ月くらいふらふらしようと思っているんですよね」と伝えたら、「じゃあタイに遊びにおいでよ!」と言ってくれて。
――そこでタイとの接点ができたんですね。
やっさん:そうなんです。で、実際にその人のお家へ遊びに行かせてもらって。バンコクっていう首都からは離れた地方都市だったんですけど、一緒に市場へ行って、料理して、おうちでごはんを食べてっていう経験が、ものすごくたのしかったんですよね。未知の体験をしているな、と。
――ああ、それはいいですね。観光地化されたレストランでごはんを食べるのとでは、感動の度合いも違っただろうなと思います。
やっさん:学生の頃に建築を学んでいたんですが、建築を選んだ理由として、ものを作るのが好きだったんです。タイ料理を現地でつくってみたことで、それが再燃しました。
――タイ料理のどんなところが面白いですか?
やっさん:未知との遭遇ですかね(笑)。たとえば肉じゃがを食べると「あ、しょうゆが入ってるな」「ちょっと甘じょっぱいな」って中身が何で構成されているか想像できるじゃないですか。でも初めてグリーンカレーを食べたとき、何入ってるかまったく想像できなかったんですよね。これ一体何でできてるんだろう、って。それで、ネットで調べながら使われている材料や調味料を集めて、謎解きのような感覚で、実際に家でつくってみたんです。そしたら「あ、これが答えだったのか」と実際食べた通りの味になって、まったく知らないものを調べて解明するプロセスってたのしいな、と思うようになりました。
――たしかにタイ料理って日本食には馴染みのない味が多いですよね。
やっさん:普段はGoogle翻訳を駆使して、タイ語のレシピを翻訳しながらでつくってみるんですが、本物を食べたことないから正解がわからないんです(笑)。だから、それを現地に行って答え合わせをしに行くようにしています。
――「誰かに料理を振る舞いたい」「タイ料理を広めたい」とかではなく、調べて真実を解明していく、という過程がたのしくて料理されてるのが面白いです。
やっさん:そうなんですよ。だから「お店を開きたい」ってわけじゃないんですよね。ただただ、つくりたくて。でも、食べてくださる方が多ければ多いほど、自分のつくれる種類の幅も広がるのでありがたいです。
omusubiに入社してから、自己肯定感が上がった
――omusubiに入社してみてどうでしたか?
やっさん:前の会社は個人で仕事をするスタイルで、omusubi不動産はチームで動くので、転職してみて、わたしはチームで働く方が向いてるなと思いました。omusubiでは私の得意なことを見つけて任せてくれる環境があったので、入ってから自己肯定感が爆上がりしました(笑)。
――omusubiは周りがすごく他の人の得意・不得意をよくわかっているなという気がするのですが、それって文化なのでしょうか。
やっさん:文化かもしれないですね。入社した時期によって感じ方が違うのかもしれないんですが「わたしはこれができません」と言っても排除されない環境があると感じていて。苦手なことを無理にやるよりも、それぞれが得意なことをやる方が会社全体のパフォーマンスも上がる可能性があるんじゃないかなと思っています。
――なるほど。3年在籍されたなかで印象に残ってる出来事はありますか?
やっさん:入社してすぐコロナになり、あのときのことは強く印象に残っています。どうなっちゃうんだろう、という不安がすごくありました。流行し始めの頃は、電車で通勤せずに来られる人だけでスタッフを回すことになり、わたしは事務所の近くに住んでいたので、週3、4回ひとりぼっちで出勤していて。でもとにかくやるしかない状況でした。
――特にコロナが流行し始めた2020年は、日常が非日常に変わった一年でしたもんね。タイ食堂のご活動では何かありましたか?
やっさん:まったく知らない人が常連さんになってくれたことですね。間借りしていた隠居屋はomusubiが運営しているので、もちろんomusubiとつながりのある方も来てくださるのですが、常連さんはみなさん知らない方だったんです。毎回予約してくれるので、お名前と顔は認識しているんですが、どうやって知ってくださったのか、どこに住まれているかとか、まったく知らなくて。それがすごくうれしかったです。ほんとうにタイ食堂に来たくて来てくれてるんだ、ってわかるので。
ライフワークとして、空き家の問題に向き合っていきたい
――10月からは新しいお仕事をされますが、転職を考えられたのはどういうタイミングでしたか?
やっさん:個人的にも、空き家活用にすごく興味があるんです。ただ、大きな社会課題なので一朝一夕では変えられないことですよね。わたしはomusubiの社員ではなくなりますが、今後もライフワークとして空き家活用にまつわる活動にかかわれたらうれしいです。次の仕事で得た知識を、空き家の課題解決に生かせることがあれば、ぜひomusubiと一緒に何かできるといいですね。
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取材・文=ひらいめぐみ
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