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住職二人が1億5千万円を私的流用した件

●住職二人がお布施1億5千万円を私的流用した件



最近、非常に興味深い税金ニュースが飛び込んできました。
住職二人が、お布施を1億5千万円も私的に流用したため、
国税から所得隠しと認定され、約7000万円の追徴課税を
くらったというのです。

この事件のあらましはこうです。

2021年に、和歌山県田辺市とすさみ町にある二つの宗教
法人(寺院)が、大阪国税局の税務調査を受けました。
この二つの宗教法人の代表住職2人が、檀家(だんか)から
のお布施計約1億5000万円を私的に流用していることが
発覚したのです。

この二つの宗教法人の代表2人は、それぞれ7~8か所の寺
の住職を兼務していました。
この2人は21年までの7年間で、法事などでもらったお布
施を宗教法人に入れずに、自分の口座に入れ、個人的に使っ
たりしていました。

大阪国税局はこの私的流用を「報酬」として認定し、追徴課
税したのです。
しかも、これは「所得隠し」とみなされ、罰金的な税金である
重加算税も課せられています。

田辺市の住職は
「お布施は少額だったので帳簿も付けず個人口座で管理して
いた」
すさみ町の住職は
「徴収漏れはミスでしてしまった」
と話しているそうです。

●実は僧侶は脱税常習犯



寺の住職というと、仏に使える身であり、脱税なんて絶対や
らないというようなイメージを持っている方も多いかもしれ
ません。
でも事実はまったく逆です。
寺の住職というのは、他の業種に比べて非常に脱税が多いの
です。
寺を税務調査した場合、70%以上の割合で、課税漏れが見
つかるのです。
業種全体の平均値が60%代なので、お寺は平均よりも10
ポイントも脱税率が高いと言えます。

寺の場合、脱税する総額がそれほど大きくないので、起訴ま
ではされず、ニュースなどにはあまり取り上げられないので
すが、実際は非常に脱税の多い業種なのです。

今回の和歌山の事件は、所得隠し額が1億5千万円と高額だ
ったためにニュースになったのです。

寺の住職というのは、非常に脱税をやりやすい状況にありま
す。
寺の最大の収入源であるお布施というのは、領収書を発行す
ることはほとんどありません。
領収書を発行しないということは、取引記録が残らないとい
うことです。
またそのやりとりは密室で行われるので、外部にはまったく
見えません。

脱税というのは、こういう状況の時にもっともやりやすいの
です。
住職が檀家でお布施をもらい、そのままポケットに入れてし
まえば、脱税は簡単に成立してしまうからです。
つまりは、住職という職業は脱税の“誘惑”が多いところな
のです。

「脱税の誘惑」が多いといっても、住職は仏に使える身、そ
んな誘惑に負けてほしくないものです。
しかし、住職も所詮、生身の人間であり、この誘惑には勝て
ないのです。

●そもそも寺の税金は優遇されている



そもそも寺の税金とはどうなっているのでしょうか?
寺の税金というのは、ちょっと複雑な形態になっています。
寺というのは、ほとんどが宗教法人という組織になってい
ます。

そして原則として寺(宗教法人)の宗教活動には、税金はか
かりません。
法事に行ってお布施をもらっても、そのお布施自体には税金
はかからないのです。

しかし、寺の住職というのは、その寺(宗教法人)から雇用
され、給料をもらっているという形になっています。
そのため、その給料については、税金がかかるのです。
つまりは、寺の住職は、税務上はサラリーマンに過ぎないの
です。

住職は寺の収入の中から、毎月、決まった額を給料としても
らうことになっています。
その給料には、当然、税金がかかり、寺は、会社と同じよう
に住職の給料から税金を天引きして、税務署に納めなければ
ならないのです。

しかし寺の多くは、住職が「経営者」となっており、会計な
どは住職の意のままです。

寺の会計報告や申告書などは、税務署に提出しなくていいの
でしょうか?

本来、宗教法人は、その事業年度の収支計算書を原則として、
事業年度終了の日から4ヶ月以内に所轄の税務署長に提出し
なければなりません。
が、年間収入8千万円以下の小規模な法人などについては、
収支計算書の提出を要しないこととしています。

そして、この8千万円の基準値は、事業年度毎に計算した基
本財産などの運用益、会費、寄付金、事業収入などの収入の
合計額によるものとされ、土地建物などの資産の売却による
臨時的に発生する収入は、8千万円の判定に含めないことされ
ています。

つまりは、普通の年間収入が、8000万円を超えなければ、
申告書を出す必要はないのです。
寺などの小さな宗教法人は、この8000万円ルールに守ら
れ、申告も収支計算書の提出も不要とされているのです。

寺の会計などは、一応、檀家などがチェックすることになっ
ていたりはしますが、それも形式的なものです。
だから、住職が寺のお布施の一部を抜いても、誰にも気づか
れないし、とがめられることはありません。
それは当然、脱税となるのです。
(この記事は、私の有料メルマガ「本音で役立つ税金情報」の記事から転載しました)

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