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将来の自分達の顧客はどんな人?ー「現在」と「未来」二つの視点でリサーチをする
こんにちは。NEWhでサービスデザイナーをしているキタムラです。
先日、「これからの自分達のブランドのあり方を顧客リサーチを通して考えたい」というご相談を受けました。
そこから我々が実施したのが「現在」「未来」の2種類の顧客の声を聞く、という手法です。
今回はこちらの手法と効果についてお話をしたいと思います。
1.リサーチの全体像
今回のリサーチでは手法として「定性インタビュー」を行いました。
今回リサーチを経て導き出したいことは「これからの自分達のブランドのあり方」です。
つまり「これからの未来においてブランドで大切にしなければならないことは何か」を明らかにするためのリサーチ設計を行いました。
リサーチ全体の考え方のポイント大きく2点です。
現在の顧客はこのブランドのどんな部分を好きだと思ってくれているのか
将来的にどんな人がこのブランドの顧客になって欲しいのか、その人たちが求めているのか
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この2つをインタビューで明らかにすることで、それらが重なっている部分がこれまで積み上げてきたブランドの中で、未来においても大切にすべきことなのではないか、という仮説を持って調査に臨みました。
2.現在の顧客とは? 誰に何を聞くか
現在の顧客とは誰か
ではまず、現在の顧客とは誰でしょうか。
例えば自社商品を自社の店舗で販売しているブランドだと仮定しましょう。
ではここでクイズです。
今回のケースであれば、どの顧客が最も調査対象として適切でしょうか。
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どれも顧客と言えますが、今回で言えば「3」が正解になります。
現在の顧客を対象に明らかにしたいことは、冒頭に述べましたが現在の顧客はこのブランドのどんな部分を好きだと思ってくれているのかです。
つまり、現在ブランドのファンであることが必要です。
ブランドのファンかどうかという判断は難しいのですが、調査対象者を絞るためには最低限の明確な基準を設けることが必要です。
今回は3の基準、より詳しく言うと下記のように顧客を設定し、ブランドのファンであることが事前にわかる状態でインタビューに臨みました。
スクリーニング条件例
1年以内に複数回商品を購入している
ブランドの中で複数種類の商品を購入したことがある
現在の顧客に何を聞くか?
では、現在の顧客が明らかになりましたが、この人たちには一体何を聞くべきでしょうか。
現在の顧客はこのブランドのどんな部分を好きだと思ってくれているのか
を明らかにするためには、どのような質問をするのが良いでしょうか。
商品を好きだと思っているのか?
そもそも商品が好きな人は商品のどこを好きなのか?
購入の手軽さを良いと思っているのか?
接客がいいのか?
これらを深く聞くために、今回は製品に関わる一連の流れに沿って質問設計を行いました。
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例えばですが、繰り返し買う生活用品の場合上記のような4つのプロセスに分解をすることができます。
それぞれのフェーズでは、下記のような質問を行って深掘りをすることができます。
想起・調査のフェーズ…「いつ製品を買おうと想起するか」「普段からどんなところから情報を得ているか」「どんな情報を信頼するか」
製品検討…「どんな製品と比較するか」「比較して決め手になったポイントは何か」
利用…「利用して最も良いと思ったポイントは何か」「期待通りでなかったことは何か」
再購入・拡散…「いつ、なぜ再購入を考えるか」「どんな時に人に勧めようと思うか」
漠然と「このブランドのどこが好きか」と聞くのではなく、製品に触れる流れを追いながら、何を考えているかを紐解くことで、より自然にユーザーが心酔している部分を見つけることができます。
3.未来の顧客とは? 誰に何を聞くか
未来の顧客とは誰か
もう一つのリサーチの観点「未来の顧客」ですが、未来の顧客とはどうやって見つけたら良いのでしょうか。
「未来は不確定なもので、将来どんな顧客がいるかなんて現在からわかるはずがない」と思われる方もいるのではないでしょうか。
その通りです。
未来に必ずいる顧客を見つけるのではなく、
「将来こんな人たちがブランドを好きでいて欲しい」という人物像を作り、その人たちが今どんなことを大切にしているかを知ることで、ブランドのこれから向かうべき方向性の指針にするのです。
つまり、現在ブランドの製品を使っている人である必要はありません。
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将来的にどんな人にブランドを使っていて欲しいのか。
その人が現在どんな価値観でものを選んでいるかを知ることが指針を作るのには重要です。
プロジェクトだけでなく、今まで深くブランドづくりに関わってきたメンバーを交えながら、未来の顧客像のペルソナイメージを作成し、それに沿ったスクリーニング条件をつくりましょう。
未来の顧客に何を聞くか
未来の顧客には何を聞くべきなのでしょうか。
未来の顧客から引き出したい部分は先ほども述べたように、どんな価値観でものを選んでいるかです。
聞きたいことが違うので、3で述べた現在の顧客とは質問の設計が異なります。
どんな価値観でものを選んでいるかと言うのは、その人個人の背景や人生哲学など、行動だけでは追いきれない深い心理も知ることが必要です。
そのため、例えばですが広く下記のように質問を設計します。
・どんな仕事をしており、なぜその職業を選んだのか
・生活の中で最も大切にしている時間は何か
・最近買ってよかったと思うものは何か、それはなぜか
・(ブランドの製品カテゴリについて)商品を買うとき、何を基準に良いと判断するか
etc…
一見商品選びそのものに関係ない質問でも、その人が一体何を大切に思っているか、何かを判断するときに更にどのような思考があるのかを見つけることで、本当に未来の顧客が共感してくれるものが何なのかを探ることができます。
4.この調査が活躍しそうなポイント
現在の顧客がどうしてブランドが好きなのか、そして未来の顧客が何を求めているかがインタビューをすることで明らかになってきました。
実際にインタビューをしたのちは、それぞれにどんなインサイトがあるかを分析し、両方の観点を突合させることで新たな指針を見つけていきます。
※長くなりそうですので、分析方法についてはまた今度書いていきたいと思います。
この2視点からの調査ですが、相性のいいケースで言えば
・現在のブランドや自社製を活かしたいが、このままの路線でいいのかわからない
・現在のブランドは悪くはないが、何か新しいことをしたい、変わりたいけどどう変わればいいかわからない
など、既存のブランドからガラッと自分達のイメージを変えるというよりも、今を活かしながら、それでも変容をしたいという先を模索するときに相性が良いのかなと思いました。
個人的な感想なのですが、現在の顧客に聞く話は「やっぱりそうだよね」と思って片付けてしまいそうになるのですが、改めて言語化し、共通認識するところに価値があると感じました。
未来の顧客に関しては、何より調査対象者選びが重要だと感じました。
選び方として、一般の方にスクリーニングをかけてたくさんの中から見つけ出して…と言うやり方も試して見たのですが、思うように想定していたいわゆる「未来をゆく尖った人」を見つけることが出来ずに手間取ったという経緯もあります。
ペルソナイメージに近い有名人や、もしもいるのであれば自分の近場にいる「ちょっとすごい人」など、明らかに少し先を進んでいる人を名指しでピックアップしてしまうやり方が今回の調査に関してはマッチしていたようで、
より確実に今まで見えていなかった視点を聞けたのかなと思っています。
皆さんもぜひ、調査の方針に迷った時に使ってみてください。