所在等不明共有者持分取得制度について


はじめに

弊所代表大村は、所在等不明共有者持分取得制度の第1号事案につき、関与いたしました。
その際の手続きの流れ、所在等不明共有者持分取得制度を利用する際のポイントについて、簡単に説明いたします。
本手続については、以下に記載するようにいくつか注意すべき部分があり、当事者が直接利用するには少々ハードルが高いように思えます。所在等不明共有者持分取得制度は、2023年(令和5年)の法改正により、施行された新しい制度のため、経験した弁護士は少ないと思われます。
是非一度、大村総合法律事務所にご相談いただければご協力できることも多いかと存じます。

所在等不明共有者持分取得制度の概要・趣旨

所在等不明共有者の持分の取得制度とは、民法262条の2第1項より、土地や建物等の共有物の所有者(共有者)が複数人いる場合、共有者の持分の一部または全部を他の共有者が取得するための制度です。
「所在地不明」とは、共有者が所在不明、もしくは連絡が取れない状態にある場合に、その他要件を満たすことによって、他の共有者がその持分を取得できるようにする制度です。
本制度は、不動産の共有者の中に所在等不明共有者がいる場合、管理・処分が困難になるため、その根本原因である所在等不明共有者との共有関係の解消方法を容易にしたものといえます。もっとも、共有物に変更を加える場合であれば民法251条2項により、共有物の管理であれば民法252条2項1号により、それぞれ非訟事件手続法85条1項により、手続が可能であるため、本制度は、所在等不明共有者の持分を他の共有者が取得して抜本的な解決を行うことに大きな意義があり、要件も厳しくなっているといえます。

手続の流れ

本制度を利用する手続については、民法262条の2には、「裁判所は」「共有者の請求により」「持分を取得させる旨の裁判をすることができる」(同条第1項)と規定するのみであり、具体的な手続については、非訟事件手続法87条1項以下に規定されています。
「当該裁判に係る不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する」としているため、例えば、東京地裁に申立てを行う場合には、民事第22部書記官室借地非訟係に申立書を提出することになります。

参考:裁判所ホームページ 借地非訟事件手続の流れ

また、申立書式についても裁判所ホームページに掲載されています。

申立後、裁判所による公告手続(所在等不明共有者が持分取得される可能性があることを公告し、異議を申し出る機会を与える)を経て、裁判所による裁判という流れで進むことになります。

要件

  1.  不動産が数人の共有に属する場合であること(民法262条の2第1項)

  2.  「他の共有者を知ることができず、またはその所在を知ることができない」こと(所在等不明共有者がいること)(民法262条の2第1項)

  3.  「裁判所が定める額の金銭を裁判所の指定する供託所に供託」すること(供託金を積むこと)

要件として、まとめると、大きく上記の3つになりますが、特に要件の2が問題となります。
「所在等不明」であることの資料を提出していくことになりますが、本制度が事例によって、個別審査が行われることになります。そのため、事前にどこまでの調査が必要か述べることは難しいのですが、実際に手続に関与した感触ですと、不動産登記簿上の所在等不明共有者の住所の住民票の調査・戸籍の調査、現地調査や、他の共有者への聞き込みとその内容に沿う調査、当初より共有に至った事情や関係性の希釈化により所在等不明に至った事情等を申立書にまとめていきました。
その後、担当裁判官・書記官の補充調査等を指示されていくため、その調査を行っていくことになるかと思います。

最後に

所在等不明共有者の持分取得申立に当たり、申立書として、上記事情を含めて記載していくためには、十分な調査が必要になることが予想されます。
戸籍の追跡や住民票の調査を当事者が行うことには困難が予想されます。
また、調査結果を証拠書類として、申立書に添付し、本制度を利用する必要を記載していくことも必要と考えます。
さらには、申立後に担当裁判官が個別事案に応じて、不足している事由を指摘され、調査等対応していくことが予想されます。
そのため、本制度を利用する際には、専門知識のある弁護士に依頼することおすすめいたします。


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