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朔日の伊勢神宮 お参りと朝粥と餅

2018年9月1日
伊勢神宮の朔日参りに行き、いせ久の「朔日朝粥」と赤福の「朔日餅」を堪能した。そのときの覚書。だいたいの時間や待ち時間も記録したので、読者が朔日参りをされる際の参考になればと思う。

・朔日参りについて
・すし久の朔日朝粥
・赤福の朔日餅

朔日参りについて
「朔日(ついたち)参り」とは、その名の通り月の始めの1日に神社に参拝すること。伊勢神宮の内宮にも多くの人々が朔日参りに訪れ、そばにあるおかげ横丁でも参拝者をもてなすため、早朝から店を開いて朝市などが行われている。特に有名なのが赤福本店の朔日餅で、月替りの限定餅が毎月1日限定で販売され、朝の3時半から並んで買う人もいるそうだ。また、そのすぐそばにあるすし久は、普段は伊勢志摩の郷土料理「手こね寿し」をふるまう店だが、毎月1日には朝から店を開けて、朔日参りの参拝者のために月替りの粥を提供している。

この日、おかげ横丁に到着したのは5時半頃。ちょうど朝日が昇り、あたりがどんどん明るくなっていく時分だ。赤福本店には店の前から裏手の橋を渡って、さらに五十鈴川の右岸までずらりと行列ができている。ここはいったんスルーして内宮へと向かった。(理由については後述)

内宮へと渡る宇治橋から五十鈴川の方を眺めると、空にはまだ淡く朝焼けの色が残り、山には白く靄がかかっている。昨夜降った雨が緑を濡らし、清冽な空気を一層みずみずしく感じさせていた。ひやりとするほどに涼しい。伊勢神宮に訪れるのは3度目だが、やはり早朝が一番良いと思う。

冷たい五十鈴川の水で手を清め、「おとりつぎさん」と呼ばれる滝祭神に参拝してから御正宮を詣でる。

別宮である荒祭宮と風日祈宮にも立ち寄り、一通りのお参りを終えて、6時50分頃におかげ横丁に戻った。内宮は広いので一周するだけでそこそこ時間がかかる。

すし久の朔日朝粥
朔日朝粥の行列は、5時半の時点では店の前から隣にある楓神社の角を曲がり、五十鈴川のほとり近くまで伸びていたが、7時前になると楓神社の角まで短くなっていた。席数が多く、注文は1種類のみなので回転が早く、どんどん列が前に進むので見た目ほど長くかからない。日中は席についてからメニューを見て注文をとるが、朝粥は1品かつ回転をよくするために店の入り口で食券を買うシステムになっている。

6時55分頃並び始めて、店の入り口で靴を脱ぎ、食券を買ったのが7時5分頃。それからすぐに席に案内され、店員さんが食券をちぎって持っていく。それからお茶を飲みながら待つこと10分。7時15分頃にはお粥が席に運ばれてきた。朝粥の提供は7時半までだそうなので、7時前後に行くのがあまり並ばずに食べられてスムーズなのではないだろうか。

9月の朝粥は「しめじ雑炊」。粥といいつつ雑炊、というのはさておいて。しめじやにんじんが具として炊き込まれた秋の雑炊だ。薄味だが出汁がよく効いているのでマイルドながらも満足感の強い味。この世には味わい深くて美味しい粥と、水のような味で美味しくない粥があるが、これは間違いなく前者である。

粥が美味しいのはもちろんだが、他のおかずも充実している。薄すぎず濃すぎない味付けのひじき、こんがりと焼けた干物、出汁がじゅんわりとしみ出す分厚い出し巻き卵、さっぱりとした漬物と梅干し。これで1人前6百円とは完全にサービス価格だろう。

赤福の朔日餅
すし久を出て赤福本店に向かう。5時半には橋の向こう側まで伸びていた行列が7時前後には橋の途中までになり、7時50分頃には5〜6組の客が並んでいるのみであった。

前日にタクシーの運転手さんに聞いた話では、人気の餅は早くに売り切れてしまうこともあるが、種類によってはかなり遅くまで残っていることもあるそう。実際この日は、昼過ぎに外宮前の赤福でも朔日餅が売られていた。また、以前朔日参りをしたことがある友人によれば、持ち帰りはかなり並ぶが、店内で食べる場合はそれほど並ばないらしい。

これらの情報を総合して、内宮参拝と朝粥の後で朔日餅を食べに行こうと決めたのが大当たりであった。全く並ばずに入店し、注文して席につくとすぐに餅とお茶が運ばれてきた。

9月の朔日餅は「萩の餅」。いわゆるおはぎである。とはいえ和菓子屋の作るおはぎなだけあって繊細に作られている。しっとりとなめらかで上品な味わいの餡がおいしい。お茶も月ごとに違っていて、9月は「香煎茶」。シソを使った薄紫色のお茶で、ほんのりとある塩気が餡の甘みを引き立てる。皿や楊枝の包み紙も、朔日餅の特別仕様で月ごとに柄が異なる。9月は器の柄も、包み紙の印刷の色も、お茶の色まですべて、秋の七草のひとつである萩の花をイメージしたものになっている。テイクアウトの場合は、包装紙の伊勢千代紙も月ごとに違う柄が使われているそうだ。

1年でその1日のためにだけ供されるお菓子、お茶、容器、包み紙、包装紙に、季節の楽しみが添えられていて、早朝から並んででも買いたい気持ちがよくわかるものだった。

こうして赤福を出たのが8時20分頃。この日はおかげ横丁の他の店も早朝から店をあけているので、そのまま土産物を見て回った。5時半に到着してから約3時間。ほとんど並ぶことなく効率的に朔日参りを楽しめたのではないだろうか。唯一の難点は、朝粥と菓子を連続で食べると血糖値の上昇がきになることだろうか。

朔日餅は月によって人気の程度が異なり、例えば青竹に水羊羹をいれた7月の「竹流し」などは割と早くに売り切れるそうだ。そのため、このスケジュールでいけば効率的かつ確実に参拝も粥も餅もすべて楽しめるというわけではない。参考にする場合は、月によってはこれくらいのペースでも楽しめるという程度にとらえていただければと思う。

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