東京奇譚(東京来たん)

びざんちは!会長の"でーでー"です。12月末の東京旅行の記録です。多くの人にお世話になりました。ありがとうございました!

一日目
時は2021年12月24日。急いでエスカレーターを駆け上がると、新幹線のぞみ号が目の前を通り過ぎていきました。いったいなぜ...その数時間前、呪いを祓う映画を友人と鑑賞していたのは関係ありません。新幹線に独りで乗るのが初めてで、色々と手間取ってしまったからです。何とか次のひかり号に乗り込んでほっと一息。ドサリと置いた荷物の中には3体のぬいぐるみが仕込まれていました。1体は既に所持していた海老の末尾、残りの2体は、先の映画に登場する乙骨くんと夏油さま。映画の演出に感動する余り、衝動買いをしてしまったのです。

さて、窓側の席を確保できたので、新参のぬいぐるみを添えてパシャリ。もちろんえびちゃんも。

昼ごはんを食べる時間が無かったので、コンビニで買ったおにぎりを食べながらくつろいでいると、もう京都に到着。新幹線、思っている以上に早い。最近サボりがちだったラテン語をやらなければ、と荷物の中をゴソゴソ。

田中利光の『ラテン語初歩』には前期の頃からお世話になっています。文法書にも関わらず、解説が簡潔なのは大学の講義用に書かれたからでしょう。それでも、巻末にまとまった活用表が載っているのはありがたく、何だかんだで使っています。

関係代名詞の復習をしたところでパシャパシャというシャッター音が鳴り響きました。何だろうと窓の外を見ると、そこには富士山が。慌ててぬいぐるみを置いて撮ったものの、ベストなアングルは逃してしまいました...残念。

そうこうしてる内に小田原も過ぎて後北条氏を想う暇もなく、気づけば東京駅。この時、品川駅と東京駅が同じ扱いだということを初めて知りました。

そして、エスカレーターが左側通行であることを忘れて右に乗りかけました。危ない。異文化の洗礼を受けたと言えるでしょうか(?)

早速、知り合いに会うため東京駅の中央北口を出ようとした時でした。ポケットを探るとチケットが1枚しかない。これはもしかして、もしかしなくてもやらかしたのでは。やはり、どこを探しても見つかりません。慌てて駅員さんに相談すると、見つからない場合は再購入しなければならないとの事。

嗚呼、東京に来て早々やらかした...と仕方なく精算所にチケットを購入しに行くと、

「親切な方が届けてくださったので、再購入しなくて大丈夫です。代わりにこの落とし物確認書類を...」

嗚呼、東京に来て早々人の優しさに触れてしまいました。名も知らぬ人、ありがとう😭

その後は知り合いと会って、東京駅周辺をぶらぶら散歩をして、地中海料理店マレへ。待ち合わせしていたKさんとその店で合流。
ギリシア料理は貝や魚、オリーブをメインにしており日本人の口にも合いやすい...気がします。ワインはまだ飲めないので、いつも通り低みの見物。ビザンツ帝国のローマ人もこれを食べたと思うと楽しくなってきます。

翌日は1日かけて古書の聖地、神保町を回ると決めていたので、その近くのホテルに宿泊。追加でKさんも泊まることができたので良かったです。そこに荷物を置くと、寿司屋へ繰り出し、回らない寿司を存分に味わいました。肉厚で味もしっかりしていますね。さすが回らない寿司屋。この間、考古学や歴史学の他にも色々と話をすることができました。楽しい一日でした。

二日目
12月25日。泊まったホテルは安い値段にも関わらず、サービスがしっかりしていて大満足。
朝ごはんは食パンとコーヒーでした。
チェックアウトすると、早速銀行でお金を下ろし、いざ神保町へ。

道沿いには書店がずらり。ほぼ全ての書店を回りきったその成果がこちら。

諭吉が何枚か飛んでしまいましたが、後悔はありません。一番の収穫はビザンツ史の大家ジュディス・ヘリン編の「A Medieval Miscellany」。写本のような装丁で、中世ヨーロッパを紹介するというもの。

クリスマスは古書の聖地、神保町で過ごすことができました。まさにKさんの言う通り「文学徒最高の誉れ」だとしみじみ。

神保町を惜しみながら去ると、次は筑波大学へ。その途中で秋葉原を経由するので、ついでに見て回りました。何と人の多いこと。最近出版されたビザンツ漫画『アンナ・コムネナ』が無いかと探したのですが、残念ながら在庫切れでした。おのれ三省堂

つくばエクスプレスは、多くのエスカレーターによって繋がれた構造。地下深くまで降りていきます。あのエヴァンゲリヲンのジオフロントを彷彿とさせますね。電車に乗り込むと、大量の本を持ち運んだ疲れからか、ぐっすり眠ってしまいました。

起きると、そこはつくば駅。まだ筑波大学には着きません。キャンパスがあまりに広いので、筑波大学循環バスが走っているのです。長さはテオドシウスの城壁に届かないくらいだと言えばわかりやすいですね(わかるか)。それに乗り込んで十数分。ようやく目的地に到着。

Kさんの下宿先(こちらでは下宿先とは言わず、宿舎民・アパ民と言う)に荷物を置くと、焼肉を食べに出かけました。一年振りの焼肉、身に染みる。美味しい。

その後は、銭湯に行こうということで、大学構内へ。えっキャンパス内に銭湯?!さらには散髪屋、スーパーもあるという充実ぶり。
さて、銭湯の広い湯船でゆったりしていると、とある縁で以前から会ってみたいと思っていたTさんと邂逅。彼は中央ユーラシア世界、すなわち遊牧民の歴史を志す史学徒です。近年、遊牧民の及ぼす歴史的影響に注目が置かれています。これは20世紀後半以降の西欧中心史観からの脱却の流れと軸を一にしていると言えます。周縁としか見なされていなかった地域に注目することで、新たな視点が開けてくる。この感覚は、西欧からレッテルを貼られ続けてきたビザンツ帝国史にも通ずるところがあり、話は弾み意気投合することとなりました。会わせてくれたKさんには感謝の言葉もありません。そのままKさんの家に上がり込むと、お菓子をつまみながら雑談することに。ローマ概念、研究の構想、清朝、満洲文字、トルグート族、などなど話題に尽きず、つい朝の4時過ぎまで語り明かしてしまいました。翌日、起きると昼だったことは後悔していません。楽しい一日でした。

三日目
12月26日。
目覚めると、目に映ったのは知らない天井。

時計を見ると、ちょうど正午を回るところでした。頭がぼーっとしていて、思考できません。やはり夜更かしはするもんじゃないと思いました(思っただけ)。
近くのイタリア料理店でピザを食べた後、キャンパス構内へ。どうやらテスト期間らしく、二人はテスト対策やレポートに追われていました。こんな時期に押しかけてしまって申し訳ないですね...。図書館を見ていこうと、構内を進んでいると、つくば名物「博士号」を発見!


どうやら「修士号」は沈んでしまった模様。現実でも博士まで進学する前に沈没(挫折)する人は数知れないとか。なんという皮肉(笑えない)。まあ博士を修了した後も沈没する人も多ry

昔、筑波大学には、日本のビザンツ史研究者の先駆けの一人、和田廣が在籍していました。先生はケルン大学でPhDを取ったこともあって、棚にはドイツ語に翻訳されたビザンツ史料が幾つか見られ、もちろん、アンナさまの「アレクシアス」も置いてありました。何十年か前、大学で学生運動が起こり、文学部が解体され西洋史の本や史料が散逸したという話をKさんから聞いていました。ビザンツ本がそれなりに揃っているのは、和田先生が集め直したからだと思われます。

その棚を見た後、満洲文字の読み方、解釈などを少し教えてもらいました。クネクネした文字をまずはアルファベット読みに転写する。その作業が終わった後に文法的解釈に移る。この行程を繰り返すようです。文法がまた、聞いていると馴染みがない事柄が多く、難しいと感じました。

自分も、ヨーロッパ言語だけでなくアラビア語やペルシア語、アルメニア語といった西アジアの言語をやってみたいと思っていたので、何となく後押しを受けたような気分になりました。(ちなみにアルメニア語はインド=ヨーロッパ語族に分類されるらしいです)

起きたのが遅かったのもあって、あっという間に日が沈んでしまいました。ラーメン屋へ向かう途中、謎の銅像「大気」くんとツーショット。

食べた後はKさんの家へ帰り、Tさんとはそこで別れました。こたつに潜り、コーラとお菓子をつまむという罪を犯しながら、雑談をして夜を過ごしました。楽しい一日でした。

四日目
12月27日。
朝のうちに出発する必要があったので、早めに起床出発。つくばよさらば!
Kさんには本当にお世話になり、感謝の言葉もありません。また行きます。

さて、今日は一橋大学の地歴同好会アインズの皆さんに会いに行きます。ちょうど東京に帰省していたSくんも交えて、大学のある国立で集合することに。とりあえず御茶ノ水へ向かう電車に乗り込んで、うとうとしていると、ハッとあることに気がついたのです。

「東京に来たというのに、ニコライ堂を見ていない!?」

なんてこと。すっかり忘れていました。ということで、最寄りの御茶ノ水で降りると、急いでニコライ堂(東京復活大聖堂)へ。2、3分もすると美しいドーム建築が見えてきました。

スーツケースの重さなど微塵も感じず、自然と走り出していました。この目でビザンツ建築を見るのは初めてだったこともあり、感動してしまったのです。今はコロナ禍ということもあり、正教徒以外は中に入れないのが残念。それでも、外見を見て回れただけでも満足です。

χριστός(キリスト)の頭文字χとρを合わせた記号☧ (キーロー)は、正教会のシンボルです。しかし何より、コンスタンティヌス以来のローマ=ビザンツ帝国を象徴するものでもあります。ビルに映るビザンティン・ドームは、まさに現代に溶け込むビザンツ世界。

余韻に浸っていては遅れてしまうので、再び御茶ノ水駅へ戻り、国立へ向かいました。

駅へ着くと、アインズの方々もSくんも到着していました。なぜか、すでに感慨深いものがありました。一橋地歴同好会アインズは、OMU世界史同好会と同じく、2021年にできたばかりの団体です。一回生が主体となっている点やライトな活動をしている点など、共通するものが多く、以前から親近感が湧いていたのです。早速、近くのおしゃれな店で昼ごはんを食べることとなりました。副代表の方ともう一人は神戸の出身で、地元の話が通じて盛り上がりました。さらに、彼らが今年作り上げた会誌「桔梗」の創刊号を頂きました。せかどう宛にも一つ頂いたので、読みたい人はぜひぜひ。

ページを開けてみると会員各々の調べたことが書いてあり、とても刺激を受けました。中でも「台湾原住民族の歴史と現在」は38ページ7万字超という分量的にはもはや博士論文並。本人は「研究とは呼べない、既存のものを調べただけ」的なことを言っていたけれど、学部生でこの分量を書けるのは十分すごいと思います。良い経験になっただろうし。(みなさん自信持って...!)

その後は一橋大学を少し見て回ることに。キャンパスは狭いとはいえ、歴史の感じられる建物は統一感があり、かっこいい。

そしてコメダ珈琲店に入り、パンケーキを食べつつ雑談。同じく創設一年目の団体ということで、課題や悩みなども共通点が多く、色々と参考になりました。

大雪で新幹線が遅れていたため、もっと話をしていたかったのですが、切り上げることにして、国立から東京駅へ。アインズさんとは来年の2月に交流会を行う予定です。わざわざ一橋から市大まで来てくれるとのことで、楽しい交流会になるよう準備を進めていきたいと思います。

東京駅へ着くと、急ぎお土産を買って新幹線乗り場へ。遅延していることもあり、多くの人々がホームに立ち並ぶ中、なんとか17時9分のぞみ号に乗り込み、一息つくことができました。これはその中で書いたものです。
この旅の中で、多くの人にお世話になりました。異なる背景を持ち、異なる場所に住む人々と交流することは、新たな視点を開けるだけではなく、今自身がいる環境を相対化してくれる。そんなことを改めて感じながら、帰途に着くでーでーなのでした。






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