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「PLAN75」感想 老人は果たして「不幸」であるか?
公開当時、SNSでの宣伝でも話題になっていて非常に気になっていた「PLAN75」をやっと拝見しました。
今後自分の考えがどのように変わるかも興味深いので初見の感想を書き留めておきます。
※以下ネタバレを含みます。先入観なしでの感想を大事にされた方がいいと思うので未視聴の場合は視聴をお勧めします。
→視聴はコチラ
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感想を一言で
「是か非か」と宣伝していたが作品の内容としては「非」寄り。
個人的には自分で自分の最期を決めることに賛成派なので釈然としなかった。
物語の構成
高齢男性と高齢女性との2例を交互に見せて話が進んで行く。
<高齢男性>
若い頃から国に尽くし、働いていたが身よりも無く孤独な一人暮らしでPLAN75に申し込む。
→兄弟の子供がPLAN75の職員で交流を深めるが最後は安楽死の選択をする。
<高齢女性>
働く能力もあり意欲もあるが職と金に困窮。身よりも無く孤独な一人暮らしでPLAN75に申し込む。
→コールセンターの若い職員とこっそり遊びに行き交流を深めるが最後の最後で安楽死を回避した…ように見えたが、その後どこへ向かったかは不明。
老人は果たして「不幸」であるか?
作中では老人が「不幸」として描かれている。
自分の生き方に満足している老人でPLAN75をポジティブに選択する老人はいないのか?
確かに社会的弱者の老人はいるが、生活保護制度(※作中で拒否反応を見せる場面があるが…これは良くない描写な気が…)もあるし、年金・保険もある。
老人が孤独で不幸にならないために「PLAN75」は存在するので、そもそも孤独でなく、不幸でない老人を救う側面も見せてくれないとアンバランスに見える。
外国人労働者の掘り下げの浅さ
最初、ここも触れるのか!?と期待したのだが、期待外れ…。
外国人労働者が働く動機は母国にいる子供の病気を治すためにお金がいるというもの。
外国人労働者を取り巻いている環境の悪さと、都合のいい労働力として使い潰している日本の歪みについても匂わせて欲しかった。
この問題も日本の衰退に大きく関わっていると思う。
自称愛国者ほど、移民を拒否し、外国人に厳しく排除しようとする。
MIU404 の第5話 「夢の島」。
私の心にはまだマイちゃんの言葉が刺さっています。
「欲しいのは文句ない、言わない、お金かからない…働くロボット。」
問題提起作品の難しさ
問題提起作品はできるだけフラットな方が議論の余地が生まれると思うのだが、作品としての意義も考えるとなかなかむずかしい。
確かに「PLAN75反対!」なんて名言はされていないのだが、作品にはそうなってしまう物悲しさが満ちていた。
若者が老人を死に追いやる後ろめたさを刺激してくるのはどうなんだ…?
所謂「分断を煽るな!」思想と似ている気がする。
しかし、老人に搾取されている現実は既に存在する。
個人として選択できる前向きな集団自決は賛成なので、漠然とした物悲しさだけでなく、その先の問題点に踏み込んで欲しかった残念さが残った。
尊厳死の線引きや、政府の考え方、日本の歪み……。
とにかく今後の課題は山積みである。
是非ともかく、考えるきっかけとなったとして評価したい。
____2023年2月26日0時36分。自宅のPCに向かいながら。
…自分が75歳まで生きられたとして日本はどうなっていて
私は何を思って何を選択するのだろう?