地域おこし協力隊のトラブルのことと地方に移住10年の私からみた必要な対応力
この記事で想定している読者イメージ
この記事は
地方への移住に興味があったり、検討している
移住者や地域おこし協力隊のトラブルの話などを耳にしており、自分もそうならないか不安を感じている
という人に向けての記事をイメージしています。その他、地方移住のリアルなところを知りたい方や20代ー30代の価値観の変化について興味がある人も少し楽しめるかもしれません。
27歳で移住-> 10年経ちました
2014年、27歳で移住し10年が経ちました。この間に地方創生のムーブメントは盛んになり、地域おこし協力隊として地方に移住される方もうなぎのぼりに増えてきています。私が移住した10年前に比べると4.5倍ほどになります。
トラブル多発?
しかし、巷でちらほら聞こえてくるのは地域おこし協力隊などで移住した方が現地で何らかのトラブルに巻き込まれ、活動の継続が困難になったり縮小せざるを得ないといった話もよく聞くようになり、検索エンジンのサジェストも「地域おこし協力隊 トラブル」「地域おこし協力隊 ひどい」「地域おこし協力隊 やめとけ」のようなキーワードが並んでいる状態です。
上記のサイトでもおよそ3割がトラブルに遭遇したと回答しており、回答した人の属性から考えると、もう少し多いだろうと考えられます。私の周辺にいる人達も感覚的には半分くらいの人は「活動に支障が出て方針を変更する必要があるかも」と思うくらいの問題に遭遇している印象です。
私自身が遭遇したトラブル
私は地域おこし協力隊ではなく生身の移住者として移住してきたのですが、そんな私も生活や事業に雇用関係や委託のトラブル、脅迫したり評判を貶めて事業を制限されるようなトラブルがありました。一時期はそうしたトラブルで預金通帳が3桁になったり、やりたい取り組みができなくなって自暴自棄になりかけた時期もありましたが、どうにか乗り越えています。
行政の事業としてやってくる地域おこし協力隊の方であればここに「行政から雇われているのだから」とか「人の税金を使っているのだから」と無理な要求が飛んでくることも想定されるので、大小ふくめると何らかのトラブルには遭遇する可能性は高いといえます。
トラブルはどこでもおきる
しかしながら、田舎であろうと都会であろうと、なにか新しい挑戦をすればトラブルはなにかしら起きるものです。地方移住は人間関係や文化の違いから、移住者と住民という構図のトラブルが発生しやすいに過ぎず、首都圏にいても起業をすれば変な事業者に捕まって契約上のトラブルが発生することはありますし、引っ越しをすれば新しいところで子どもがいじめられ・・・みたいなことは少なからず発生します。
大事なのはレジリエンス - 対応力
個人的にこの10年なんとかいろんなトラブルに見舞われながらもやってこれたのは、トラブルに対してうまく対処してこれたから(来れないながらも折れずにやってきたから)だと思っています。今回の記事はこの部分にフォーカスをあて、自分自身がどういう考え方の変化をしてきたり、行動を変化させて来たりしたかについて紹介したいと思います。
前提: 変えられるのは自分だけ
どうしてこういう話をするかというと、地域の住民の価値観が古い!!とか行政がサポートしてくれない!!とかいっても、何も状況は好転しないからです。
唯一変えることができるのは自身の行動だけなので、もしこの記事を見ているあなたが地方移住して何かをなしたいのであれば、変えられる自分の考えや行動にフォーカスにすべきだと考えています。
自分のマインドセットに柔軟性をもたせること
自身が「正しい」と思うことが受け入れられるものではないと理解しておくこと
トラブルのほとんどは「価値観とそれに付随する行動の押し付け」によって発生します。地域住民からそれを押し付けられることもありますが、地方に移住してきた側がそういったことを無意識でもやってしまうことで地域住民との間に軋轢が生まれてしまうこともあります。
特に若い方は「こういうチャレンジをして成功してやる!!」という思いが強かったり「田舎の古い価値観やまちを新しい価値観にアップデートして活性化するんだ!」という気持ちをもって移住してくる人も多いでしょう。でも地域の人達は「新しい風を吹かせてほしい」とはいうけれども、本音のところは「地域活性化はしてほしいけどコンフォートゾーンからは出たくない」なので、そういった期待感のまま「これをこうすべきだ!」「こうしないのは価値観が古いからだ!」と言い出すといろいろなトラブルになります。
価値観というのに古い、新しいというのはあるし、時代にそぐう、そぐわないというのもありますが、「正しい」「正しくない」という尺度でやり取りをすると、相容れない価値観同士の戦いになって結果的にはヨソモノの異分子が晒し上げられる結果になります。価値観というのは相容れる相容れないにせよ尊重しあうものであって、バトルして戦わせ合うものではないと思っています。
相手の「正しい」と思うことを理解すること
裏を返すようで地域の人達が「正しい」と思うことを理解することも重要です。地方の行事に参加したり、草刈りに参加したりすることを要求してくるオジサンがいたとして、その人にもその人なりの「正しいと思う考え」があることが多いです。たとえば、そういうところに参加して地域の人と仲良くなれれば今後の活動の段取りが簡単だったり、逆に人手が必要な企画に積極的に参加してもらいやすくなる、といった考えが裏にあって「行事に参加しろ」と善意で言ってきてくれていることもあります。田舎に行けばいくほどムラ社会で「損得」以上に「仲間かどうか」を行動の判断基準にされる傾向もあります。「俺はそういうのをやりに来たんじゃない」と思うのは結構で、最終的にやらない、と言う判断もありですが、そういう地域の人達の価値感覚を理解しないということは、自分を理解してもらう機会も放棄することにつながります。
自分と相手の「正しい」をすり合わせ、共有できる価値観に育てていくこと
ここまでいうと、「じゃあお前は田舎に来ておっさんたちの言う事聞けっていうのか」と言われると、そうではありません。大事なことは共有できる価値観に育てていくことだと考えています。
僕らがキッチンカーを始めたとき、土日の週末しかやってないので「お前らはビジネスを舐めてる」「地域のためにとか言ってるけど遊んでいるだけだ」みたいなことをいってくる人もいました。
しかし、地域の活動に参加していくうちに、そうしたことを言う方は「ビジネスをつくっていかないとだめ」「中途半端なことをやっても意味がない」といった考えでそういう発言をされていることが理解できてきました。そしてそういう中で、「私達もビジネスを作っていく必要があるのは同じ考え」で「そのために今は小さい検証をしながらどんなビジネスならここで続けていけるのか模索しないとだめだと思っているんです」ということを伝えながら、「別々の考えで行動しているヨソモノ」ではなく「地域を復興させたいと考えている同士」であることを理解してもらうための発信をつづけてきました。そういったプロセスが、空き家を格安で貸してもらえたり、今の活動をしていても反感なく気持ちよく活動させてもらえる結果につながっていると考えています。
うまくいかないのが普通 - 諦めない
起業でも地域活動でも、新しくはじめる、はじめようとする活動は「うまくいかないのが普通」です。学校の試験はもちろん、東京のある一定程度の会社にいると「うまくやれるのが普通」という感覚でいる人ほどこのギャップに苦しめられることになると思います。
地域の人たちや行政とのトラブルも、いってしまえばその一因の一つでしかないとも言えます。逆にいえばどんな活動も長い目でみれば必ずトラブルはあるので、「トラブルのない最短距離の事業成功」なんてものはありません。「スタートアップはJカーブで急成長するもの」とか好き勝手なことをいいますが、みんなどこかしらで遠回りをしているので、数ヶ月数年足踏みしたことが人生の成否には大きく影響しないのだ、くらいにドンと構えておくことも大事です。
逆に「俺はここでトラブルが起きて前にすすまなかったしもう事業者としてだめだ失敗だ」というマインドセットは、危なかっしいし不幸にしかならないので、なぞのスタートアップ的な急成長信仰で生き急いで自らの身を滅ぼさないようにしていただきたいなと思っています。
私自身も、学校教育に関わりたいと思っていた矢先に圧力を書けられるトラブルがあったときは、資金的にもかなり厳しく「もうどうしようもない」と絶望していた時期がありました。しかしそうしたときに「若い子に教えられないなら私達にパソコン教えてよ」と地元のお母さんたちが声を書けてくれてパソコン教室をはじめたり、学校の先生から「森山さんに頼めないならその(圧力をかけてきた団体)にも頼むつもりはない」とバックアップしてくれたり、「南相馬で頑張っている森山君だから仕事頼みたい」と割のよい案件を紹介してくれたりする人たちが出てきて、少しずつ状況を立て直すことができたのでした。
マインドフルネス的思考 - 状況を評価しない
つまるところ、地方で重要なマインドとしてはいわゆるマインドフルネス的な思考だと理解しています。マインドフルネス的な思考と私が読んでいるのは「状況や環境をすぐに評価して一喜一憂することのないありのままを受け止められる状態」くらいの定義です。
しかしながら「状況や環境をすぐに評価して判断する」というのは、動物が生き延びるために身につけてきた知恵でもあるため、評価するなといっても一朝一夕では難しいのです。だからこそそれをしないためのトレーニングが必要= 瞑想や呼吸法などにはじめるマインドフルネスのトレーニングというのが流行っている、と理解しています。詳しくはこちらの書籍がわかりやすかったので是非読んでみてください。
具体的な行動で対処すること
これまでは、主にマインドセットの話をしてきました。
ここからは、やや具体的な行動で対処できることを紹介します。
このひとはヤバい、と思った人とは距離をおくこと
前の章で地域の人達の価値観を理解しよう、ということを話しましたが、一方でどうあがいても共感できない価値観の人もいます。
「あの人とは仲良くしとかないと面倒になるからお伺い立てておくといい」みたいなことを言われている人が地方にいくとチラホラいますが、そういう人の中にも合う合わないは絶対にあります。どう考えても人を便利なコマとしか見てなさそうな人も残念ながらいるでしょう。そうした「ヤバイ人」とは距離を置きましょう。遅かれ早かれトラブルになりますし、本当にその人のお伺いがないと何もできないような地域なら、いくら環境や物件が良いといった条件があっても、それはあなたの活動に最適なフィールドではないのです。
生活や仲間の依存先を増やしておくこと
上記の引用の発言は本当に金言だとおもっているのですが、変な人に絡まれ抜け出せなくならないようにするためにも、生活面や人間関係面で依存先を増やしておくことが大事です。
小さい地方なら隣町とか1時間くらい離れた地域の、人間関係的なかかわりが少ないところに相談できる相手を見つけておくのもよい手段だと思います。私も初期の1-2年は宮城県の石巻に辛いことがあると言って相談に乗ってもらったりしていました。
仕事面では、私は最初の方は地域内の仕事で食べていけたら、と考えていたのですが案件も少なく単価も低いこの地域で食い扶持を確保するのは厳しく、結果的にいろんなご迷惑をおかけしてしまったこともありました。生計面でもある程度首都圏の単価の良い仕事、そうでなくても「まぁ困ったらいつでもうちで働きなよ」といってくれるような信頼できる事業者の方などを見つけておくことは、精神的な安心に繋がります。
まとめ
以上、今回のトピックについてさまざまな視点をお伝えしました。
移住は社会的な意味も見出すこともでき、楽しさもありますが、こうしたトラブルを乗り越えていくことも覚悟しておいてもらえるとより「こんなはずじゃなかった」とならずに済んでもらえるんじゃないかと思っています。
この記事を読んでいただいた皆さんにとって、新たな発見や気づき、そして具体的な行動に繋がることを願っています。
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